第18話
僕は、二人の前で土下座して謝った。
隠し通せることではなかったし、二人を苦しめた罪悪感に苛まれていたから。
「ごめん。………さっき言ったようにさ、カードからゾンビが現れたんだ。僕が召喚さえしなければ、二人をあんな風に苦しめることもなかった。本当に……ごめんなさい」
「顔を上げて、立ってください。謝らなくて、大丈夫です。ゾンビになったのは、私達の不注意でもありますし、前田さんは、何も知らなかったわけですから仕方ありません。………だよね? ネムちゃん」
「……………うん。結局、私達を助けてくれたし………。私達がダーリンを責めれるわけないじゃん。それより………手……大丈夫?」
ネムが巻いてくれた左手の包帯。優しさが、溢れていた。
「うん。痛みもなくなったし、大丈夫だよ」
何気なく、時計を確認する。すでに昼の一時を過ぎていた。慌てて、昼飯の準備をしようと立ち上がった。
「あの……前田さんの傷が癒えるまで、しばらくの間、私達が交代で料理や洗濯等をやります。………ですから前田さんは、アザラシのようにリビングで、ぐでぇ~~と休んでいてください」
鮎貝に背中を押されて移動。巨大なソファーにちょこんと腰かけた。
「本当に大丈夫?」
「私達に任せてれば、大丈夫だって。ダーリンは、ママに甘えていればいいの!」
変な母性を出し始めたネム。余計に心配になった。
しばらくして、可愛いエプロン姿の鮎貝が、料理を運んできた。そのフランス料理レベルの出来ばえ、彼女のスキルに感動していた。
視線の先。柱の影で、僕を心配そうに見つめるネム。おにぎりが乗った大皿を抱えていた。
「旨そうじゃん、それ。早く来て、みんなで食べようぜ」
「うんッ!!」
パァアァと表情が明るくなったネム。三人でテーブルを囲み、昼飯を食べた。
ネムが作ってくれたおにぎりから食べる。
「うん。旨いよ。ありがとう、ネム」
「……うんとね、前にダーリンが梅を刻んだおにぎりが懐かしいって言ってたのを思い出して……。だから、作ってみた」
「そんな昔の話、覚えてたのか。ありがとう。………次は、鮎貝の料理を食べようかな」
皿に綺麗に盛られた芸術的な作品。料理本に掲載されてもおかしくないレベルだった。味も完璧で、気づいたら完食していた。
「鮎貝がこんなに料理が上手いなんて、驚いたよ。良いお嫁さんになれるね」
照れた鮎貝が、モジモジしながら僕を見ていた。それを横目で見ていたネムが、姑のように鮎貝をいびり始めた。
「でも鮎貝さん? こんな料理ばかり作っていたら、月の食費がえらいことになるんじゃなくって? ちゃんとそういうことまで計算しないと主婦なんか出来ないわよ」
「はぃ………お義母様。気を付けます」
「それにね、正ちゃんはママが作るおにぎりが大好きなの。この味を覚えなさいね。後で教えてあげるから。…………ちゃんと聞いてるの? 返事なさい」
「は…ぃ………お義母様。このおにぎりの作り方、しっかり覚えますのでご指導宜しくお願いします」
ノリノリだな、二人とも。
楽しい時間が過ぎるのは、本当にあっという間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます