第17話

ネムの話によると突然、ゾンビが襲ってきて。そのゾンビに触られ、自分達もゾンビ化してしまったらしい。


あのカードから出てきたんだな……。ヤバイ。そのことがバレたら、半殺しにされそう………。


「どうしたの?」


「な、何でもない。そのゾンビを探してくるよ。助かるヒントも分かるかもしれない。ちょっと、待ってて!!」


僕は、逃げるように走るとゾンビを探した。その目当てのゾンビは、呆気なく見つかった。僕の部屋で突っ立っていた。


『アァ~~、アァ~』


「…………凄い臭いだな。吐きそう……」


僕の声を聞いたゾンビは振り返り、僕の方にゆっくりと歩き出した。映画では、頭を潰すのがゾンビ退治に一番有効だったはず。背に隠した斧を握り直した。


一歩。また一歩……。


僕の前まで来たゾンビは、突然ガクッと膝をつくと僕を静かに見上げた。襲ってくる気配はない。


「…………まさか」


斧を捨てると、言葉が通じることを信じてゾンビに話しかけた。


「あの、さ。さっき、キミが襲った二人を助けたいんだ。方法知ってる? ってか、言葉通じてる?」


『ァ~、アァ~』


腐った人差し指で僕を指差し、次にゾンビはその指を折って、引き千切り、その指をおしゃぶりのようにチュー、チュー吸い出した。


「えっ!? 嘘だろ。僕も同じことしないといけないの? いやいやいやいや、さすがに」


『アァ~?』


ゾンビは、しゃぶっていた指を床に置くと、その指から流れ出る緑色の液体を舐め始めた。


「………………………分かった。試してみるよ」


『アアァ~~~!!』


ゾンビの雄叫びを背に、急いでネム達の元に走った。彼女達は、すでに倒れて動けなくなっていた。僕は、ナイフで手の平を切ると流れ出た鮮血をネムと鮎貝の口に無理矢理流し込んだ。二人は驚いた顔をした後、ゆっくりと目を閉じた。ツッーーと透明な涙が、頬を濡らす。


その後、二人をベッドまで運び、横にする。

すぐに気持ちの悪い緑色の斑点は、嘘のように消えていった。顔も肌色を取り戻した。


安心したせいか、一気に疲労が襲ってくる。


「ありがとう。二人とも助かりそうだよ」


『ア……ァ………』


ゾンビの体が光り出し、光が消えると元のカードの中に戻った。前と違っていたのは、そのカードに僕の名前『前田 正義』が刻まれていたこと。


「なんか……分かった気がするよ……」


カードゲーム自体は前世でもやったことがなく、ほんの噂程度の知識しかないが………。僕の予想が正しければ、カードに描かれたモノ達は、僕がそれ相応の『運』を犠牲にすることで召喚出来るはず。そして召喚されたモノは、僕の下僕になる。ゾンビが僕だけを襲わなかった理由は、僕が彼らの主人だからだろう。


今、気づいた。カード下部に升目が10個あり、謎のマークがその一つに刻まれていた。


もしかして、これってレア度……ってヤツか?

だとしたら、今の限界はマーク一つ。明らかに激レアだと思われるカードが、何枚かあった。あれを最初に取っていたら、確実に死んでいた。


「はぁ………どうなるんだ、これから」


やっと血が止まった左手の傷が、ジクジク痛み出した。

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