第16話
金髪女さんには、丁重に帰って頂いた。
帰り際に両頬にキスをされた。
そんなキスマークをつけた僕を見て、鮎貝は悲しそうに目を伏せた。
「男の子……だもん…ね……」
「いやっ! 向こうがいきなりキスしてきたから、だから!! その避けられなくて」
「必死か。……でも、最高だったろ?」
ネムは、裁判官のように僕に詰め寄る。
「う…ん……。間近で見たら、凄かったぁ。凄くエロエロで。あんなの本でしか見たことなかったから」
無表情のネムと鮎貝に命じられた強制労働。外にあったプレゼントをすべてタワー内に入れる作業を終えた僕は、肩で息をしながら床に突っ伏した。
結局、三時間もかかった。夕焼け空がいつも以上に眩しかった。
「…………………」
僕の手の中には、一通の封筒。プレゼントの中に埋もれており、この送り主は、僕が片付ける未来がまるで分かっていたみたいだ。
封筒を開けると、中には数十種類のカードが入っていた。それぞれに死神やら魔女などの気分が鬱になるモノが描かれていた。
その中の一枚【ゾンビ】が描かれたカードを手に取り、ジィーーーと見つめる。
シュユゥゥーー!!
突然、僕の運がそのカードに物凄い勢いで吸われ始めた。手を離したいが、カードが手にくっついて全く離れない。次第にカードに変化が生じ、カード内からゾンビの手が伸び、飛び出してきた。
「なんだよ、これっ!!! キモッ」
やっとカードが手から離れたと思って安心したのと同時、運を使い果たし、気を失ってしまった。
……………………。
………………。
…………。
真夜中。
次に目を覚ました時、僕の前にネムと鮎貝が立っていた。二人とも複雑な表情をしている。
「どうした? あ~、頭痛ぇ。しばらく、気絶してたわ。………今、何時かな」
二人は、おもむろに服を脱ぐと下着姿になった。
「ど、ど、どうした!? なんで………あ……え!? なんだよ……それ……」
二人の体には、見たことのない緑色した大きな斑点があり、こうしている間にも斑点の範囲が大きく、色濃くなっていった。
二人は、ポロポロと大粒の涙を流して僕に告白した。
「前田さん……。私、ゾンビになっちゃいました……」
「ダーリン………。ゾンビになっても一緒に寝てくれる?」
本物のゾンビのようにフラフラと近寄る二人。思わず、後ずさってしまった。
「ひ…ひどい………」
「所詮、私達は体目当ての遊びかっ! お前もゾンビにしてやるっ!! この野郎」
走ろうとしたネムが、派手に転び、地面に顔面を強打した。慌てて駆け寄り、静かに抱き起こす。
「だ、大丈夫か? 一体、何が起きたんだよ」
「うぅっ…ダーリン………」
ネムが語った話は、まさに悪夢の再現だった。
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