第6話 赤竜討伐
「この五日間、私たちはなにも休んでいたわけじゃない」
夜闇に紛れながら移動する道中、ゼインはランディにここまでの経緯を話した。
「私は皇都に知り合いがいてね。さる高貴な御方としておこう。この方曰く、ベルズの赤竜討伐隊は、まだ国から金銭面での援助は続いていたはずなんだ」
「嘘つけ」
「まあ、騎士は引き上げたけどね。でもそれも、男爵が不要だと進言したからだよ」
「嘘つけ」
不貞腐れたようにランディが応える。すると。
「ゼイン様、そろそろこの男殴っていいですか?」
ルディが拳を上げた。
「いいよ。ルディの好きなようにするといい」
「おいっ、こういうときは普通『だめ』の一択じゃねぇの!? って、本当に殴ってくんなよっ」
とても賑やかだ。フィリスもるんるんと心が躍っているような感覚を覚える。竜の討伐なんて久しぶりだけれど、特に恐怖はない。
「話を戻そう。そういうわけで、君とさる高貴な御方との話には相違点があってね。そこでルディに調べさせたところ――」
「男爵が支援金等の横領をしていました」
「という調査結果が出たんだ」
「は? 横領? てかなに? そんなことたった五日間で調べられるもんなの?」
「ルディはそういった調査が得意なんだ。かつ、男爵は油断していた。こんな辺境だ、油断するのも無理はないけど」
なんなら実際にルディが調査に要した期間は、たったの三日である。それくらい明らかな横領だった。金額もだいぶ大きく、だからこそ簡単に調べがついたとも言える。
「そして並行して、フィリスには赤竜の様子を見てもらっていた」
「一人で!?」
「まあ、私も一緒に行ってはいるけど、役には立ってないから実質一人のようなものだね」
「はっ? マジで? よく生きて戻ってこれたな?」
驚くランディに、フィリスは得意げな気持ちで答える。
「簡単だった」
これは事実だ。竜を倒すのではなく、ただ様子を見るだけだったから。
竜は魔力の気配に敏感ではあるけれど、気配なんて隠してしまえばいい。ということを、短く伝えた。
「え? でも魔力の気配って、完全には隠せないって聞いたけど?」
「そうでもない。意外といける」
「なにそのゲテモノ食べたときみたいな感想」
ランディにじと目で睨まれる。その予想外の反応に、フィリスは「あれ」と狼狽えた。魔力の気配を隠すのは、どうやら普通はできないものらしい。でもフィリスの知り合いはやっていたし、フィリスもできる。師匠はそういう機会がなかったので知らないけれど。
そこで改めて考えてみたら、魔力の気配を隠すのは、そういえば魔術ではやったことがないかもしれないことに気づく。
フィリスは焦った。
「えっと、普通にいける」
「本当かよ?」
ランディの冷めた視線が心にぐさっと刺さる。何か言わなきゃ、と思えば思うほど焦りが生じてきたが、そこでゼインが間に入ってくれた。
「まあまあ。とにかく、フィリスに様子を見てもらったのは、罠を張るためでね」
「罠?」
話題が変わったことにほっと息を吐き出しつつ、お礼の意味も込めて、フィリスはゼインの服の裾をきゅっと掴んだ。その手に彼の手が重なって、温かさに心がほんわかとする。
(この感情は、なんだろう)
とても落ち着くのに、どこかくすぐったい。
「そうだな、わかりやすく順を追って話そう。男爵は赤竜討伐のため、まず国に支援を申し出た。それは合ってるね?」
「ああ」
一行はあっという間に村を抜け、洞窟のある森を目指して坂道を上っていく。
「そしてそれは確かに国に届いた。この辺りは隣国との国境が近く、腕の良い鍛冶師が多い有名な村もある。国も下手に見捨てるわけにはいかなかったからこそ、迅速に対応した。けど一度目の騎士の派遣後、失敗に終わったと報告があったのに、男爵はそれ以降騎士の派遣を要請してこなくなった。資金の援助は引き続き求めてきたのに、だ。理由を訊ねたら、一度目の隊が壊滅させられて、また二度目を皇都から派遣となると時間がかかる、だから腕に覚えのある冒険者を雇うほうが早くてお金もかからないというのが向こうの言い分だった。実に合理的だね。国も納得した。まあ、あの国防大臣のことだから、本音は中央から騎士を減らしたくなかったんだろうけど」
「なあ、まるでその場にいたみたいに中央事情に詳しくね?」
「知り合いがね、いたから」
ゼインはにっこりと微笑みで躱す。ルディも素知らぬ顔をしている。フィリスも見習って、ルディと同じように〝しらっとした〟顔をつくってみた。
「でもだ。ランディの話だと、二回目の討伐隊が組まれている。そしてそれを最後に討伐隊は解散。以後、隊が組まれることはなかった」
「ああ、そうだ」
一方で、とゼインは続けて。
「国への報告では、その後も冒険者による討伐隊が組まれていることになっている。残念ながら、そのどれも失敗に終わってはいるけれど」
「はあ? なんだそれ。討伐隊は二回だけだ。間違いねぇよ」
「だろうね。君は嘘をついていない。だからこそ、この話の相違点から見えてくるものがあるよね? それが何かわかるかい、ランディ」
「知るかよ。俺は頭を使うのが嫌いなんだ」
出会った当初から口の減らないランディの横腹に、ついにルディの拳がめり込んだ。
「ちょっ、その前に従者の教育がなってないんじゃねーの、お坊ちゃん!」
「そう? ルディは賢い子だよ。私は気に入ってる」
ルディがぱあっと顔を輝かせた。初めて見るルディの表情に驚いて、フィリスは彼をまじまじと見つめる。
「君はおかしいと思わない? 国からの支援金は続いているのに、打ち切られた討伐隊。だったら、国からの支援金はどこに消えた?」
「……あっ。それで横領?」
「そういうこと」
そこに気づいてからは先に話したとおりだ。男爵が国からの支援金を横領していた証拠はすでに掴んでいる。もっと詳細な調査をすれば、そんな状況下において施行された増税についても、不正という名の埃が出てくるに違いない。
そもそも、調査の過程で、むしろ横領するために赤竜を利用した可能性が高いことがわかっている。
「おいおい、冗談だろ? 赤竜を利用だって?」
「ルディの調査の結果、計画性が見られたからね。一度目の討伐が失敗に終わったから思いついたにしては、この計画は用意周到なところがあった。一度目をカモフラージュにして周囲を――国をも欺こうとした意思を感じられたんだ。となると、疑問が出てくる。チェスター男爵は強欲だ。一度目は派遣騎士という名の国の監視があったけれど、二度目はそうじゃない。私が男爵なら、二度目の支援金だって自分のものにしたくなる。そのためには二度目の討伐隊も名目のみとして、実際に討伐に行かせないほうが取り分も多くなるよね。じゃあ、二度目の討伐隊に参加した人々は、いったいどこへ消えたのだろう?」
「! 親父……」
「そう、君の御父上は二度目の討伐隊の一員で、竜によって殺されたと君は聞かされている。そうだったね?」
「ああ。赤竜は人を食うから。そのときの隊員は全員食われて遺体もないって聞かされた」
「君の御父上はドミニク似かい?」
「顔はな。他は全然似てなかったけど」
「なら決まりだ。君の御父上は生きてるよ」
「……はあ?」
だんだんと道には砂利が増え、森の中を進んでいく。夜闇に紛れた出発だったので、村から離れると辺りはだいぶ暗い。空に君臨する月の明かりだけが頼りだった。
ちなみに、ベルズの洞窟はチェスター男爵の邸宅とは反対側に位置している。
「なのに不思議だ。ほら、見てごらん。洞窟の入り口周辺に鎧を着た兵士がいる。もし彼らが討伐のためにここにいるんだったら、おかしいよね? だって彼らは洞窟の中には入ろうとしないんだから」
目的地に着いた四人は、植物の陰からこっそりと洞窟を覗いた。入り口はここからもう少し下りたところにあり、フィリスたちはその場所を見下ろしている形になる。
ゼインの言うとおり、十数人いる兵士たちは入り口に近づこうともしない。まるで竜よりも別のものを警戒するように辺りをきょろきょろとしている。
「さっき私は、フィリスに竜の様子を見てもらっていたと言ったね。あれは正確には、竜の様子を確認するふりをしてもらっていたんだ」
「ふり? なんでそんなこと……」
「こういうときは
「あ……!」
「だから男爵にとっては赤竜が討伐されては困るんだ。なのにここには
「まさか、罠って……」
「やっとわかってきたね。そう、フィリスには、討伐のための下見をしている風を装ってもらった。これで男爵は必ず動くと踏んでね。そうしたら案の定動いた。昨日は二人くらいしかいなかった兵士が、今夜は十人以上いる。男爵が面白いくらいわかりやすい性格で嬉しいよ」
闇の中でうっそりと笑うゼインに、ランディが息を呑んだ。その瞳の中に『恐怖』の色があることにフィリスは気づく。つまり、ランディは今この瞬間、竜よりも、男爵の兵士よりも、ゼインを恐れたということだ。
「さて、ここでもう一つ問題だ、ランディ」
「まだあんのっ?」
「普段は竜を気にして最小限の人間しか置かなかったのに、急にその数を増やすとどうなると思う?」
「え? そりゃ、竜は気配に鈍感じゃねぇから、気づいて……あ!?」
そのとき、夜空を貫くほどの咆哮が突如轟いた。バサバサッと森の中にいた鳥が一斉に飛び立っていく。ランディの腕には鳥肌が立っていた。
「よくできました。正解だよ、ランディ」
「褒められても嬉しくねぇよ! おまっ、まさかわざとやったのか!? わざと赤竜を怒らせたのか!? 鬼なの!?」
「はは、よく言われる。ただ、私の目的は一つだけ――討伐だ」
洞窟の中央から両翼を広げた赤竜が出てくる。どうやらその辺りの洞窟内は地上まで吹き抜けになっていたようだ。赤竜が翼をはためかせると、その風がフィリスたちのところまで襲ってきた。
「おいおいおい、こんな展開は聞いてねぇぞ!?」
「討伐するって言ったはずだけど」
「赤竜があんな感じだって聞いてない!」
赤いうろこで身体を覆う竜は、その色以外は誰もが想像するような竜の姿だった。四本の足と二枚の翼を持ち、猫のように細長い瞳孔がぎょろりと光っている。
ルディがすぐさまみんなを守るための結界を展開した。
「眼鏡ぇー! おまえも魔術師だったの!?」
「俺は聖魔術師です! 結界なら聖魔術師も張れますので」
「マジかよ弱っちいとか言ってほんとごめん!」
「現金な人ですね!?」
兵士たちは風に押しやられたのか、木の幹にぶつかったり遠くまで飛ばされたりしている。その拍子に兜が取れてしまった者もいて、その顔が恐怖一色に染まっているのがありありと窺えた。
すると、そんな兵士の一人を見て、ランディが声を上げる。
「親父!?」
「御父上がいたのかい?」
「あ、ああ。たぶん。え? マジでっ? 本当に死んでないって……待って頭が追いつかねぇ」
「ここに来る可能性は五割だったけど、男爵は捨て駒を選んだようだね。とりあえず感動の再会は後だ。今はそれよりも――」
赤竜の目がフィリスたちを捉えた。いや、この場でそれに気づいたのはフィリスだけだろうが、赤竜はフィリスを捉えた。今のフィリスは魔力を隠していないから、赤竜にとって一番警戒すべき相手と見なされたのだろう。その獰猛な瞳を真っ直ぐと見つめ返す。
刹那、赤竜の動きが止まった。
竜の寿命は長い。その長い年月の中で、竜は色々なものと出会う。赤竜が反応したのは、はたしてフィリスの魔力量にか、それともフィリスの魔力の性質にか。
「フィリス、あれを落とせるかい?」
「うん、大丈夫」
ゼインに応えてすぐ、フィリスは飛行魔術で一人赤竜に近づいた。互いに目を逸らさない。赤竜はわかっているのだ。逸らせば殺されると。自分よりこの小さな生き物のほうが遥かに強いと。
「ゼインの剣を試したいから、わたしじゃないよ」
赤竜が口から火を噴く。防護結界を張ろうとしたら、先にルディの結界が守ってくれた。フィリスは魔術の同時展開は二つが限度なので、おかげで攻撃に転じられる。
夜空に大きな魔法陣が光り輝く。
「大人しくしてね」
そこから現れたのは、大きな人の腕だ。正しくは巨人の右腕。それが竜を玩具のように掴むと、大地に叩きつけるようにぶん投げた。その先にはゼインがいる。
「――さすが、私のかわいい魔術師には恐れ入るよ」
地面に落ちた赤竜の間合いに、ゼインが瞬きの間に詰め寄る。目に見えぬ速さで剣を一振りすると、風が刃となって竜を襲った。
本当はゼインは、弱点である逆鱗を狙った。しかし勢いが良すぎたらしく、風の刃はそのまま竜の頭と胴体を斬り離す。
これにはさすがのゼインも口元を引きつらせた。
「……ドミニクめ、やり過ぎだろう」
なんて
ゼインは、そんなどうしようもない男の熱意が好きだった。
本当は直接ドミニクから渡されたかったけれど。
「……確かにもらい受けたよ。ありがとう、ドミニク」
夜空に溶かし込むように呟く。うまい酒を奢る約束は果たせなかったなと思いながら。
「ゼイン様ー! お怪我は、お怪我はありませんか!?」
ルディが駆け寄ってくる。
「ないよ。ルディは平気?」
「もちろんです! それにしてもすごかったですね、その剣」
「ああ。ドミニクらしいよ」
まるで何かを懐かしむような顔でゼインが苦笑する。彼の許に戻るとき、フィリスにもその表情が見えた。
笑っているのに悲しそうな、寂しそうな、複雑な顔。
「ルディ、とりあえずここにランディたちを連れてきてくれ」
「かしこまりました」
いつもなら疑問に思えば訊ねていたのに、なぜかこのときは口よりも先に手が伸びた。地面に着地しないまま、フィリスはゼインのさらさらな髪を撫でる。
「やあフィリス、お疲れ様。怪我はない?」
「ない。ゼイン、すごかった」
「ありがとう。でもフィリスのほうがすごいよ」
フィリスはまだ撫でる手を止めない。ゼインはされるがままになっていたけれど、やめる気配のないフィリスを不思議そうに見つめてきた。
「どうしたの、フィリス。これ、もしかして褒めてくれてるの?」
「褒めてる……そう、なのかな? わかんない」
「わかんないの? ふふ、フィリスはかわいいね」
おいで、とゼインが両腕を広げる。フィリスは小首を傾げた。着地くらい難なくできるけれど、それはきっとゼインも知っているはずだ。
その上で「おいで」と言うことは、つまりそこに着地しろということだろうか。
そう答えを導き出したフィリスは、ゼインの胸元に飛び込むように魔術を解除した。
「はい、フィリスにもご褒美だ」
重力に逆らわずに落ちたフィリスを、ゼインは軽々と受け止めた。そしてフィリスがやったのと同じように、抱っこした状態でフィリスの頭を優しく撫でてくれる。
「ゼイン、力持ち」
「フィリスが軽いんだよ。旅の最中に食べさせないといけないね」
そんな会話をしていたら、ルディがぞろぞろと人を連れて戻ってきた。そして開口一番。
「フィ、フィっ、フィリス!! なにゼイン様の上に乗ってるんですか!? 下りなさい!」
「はは、ルディ、おまえの目は節穴かな? 乗ってるんじゃなくて抱かれてるんだよ。かわいいだろう?」
「ゼイン様! 女性になんてことを……! 下ろしなさい!」
「え? おまえはどっちの味方なの?」
ルディが連れてきたのは、鎧を着ていた兵士たちだ。みんな兜を取り、絶命している竜の近くにいたフィリスとゼインの許へ恐る恐る寄ってくる。
「本当に死んでるぞ」
「信じられん……」
「信じられんのはこっちのセリフだ! 親父が生きてるのが信じられねぇよ……っ。しかもなんだよ。コナーの親父に、ユンケルの兄貴まで……!」
ランディが目を赤くしながら叫ぶ。その姿は怒っているように見えるのに、泣きそうだとも思う。
どうやら兵士たちは、みんなランディの知り合いらしい。
「……すまない、ランディ。色々とあったんだ。だがまさか男爵が俺たちを死んだものとして伝えているとは思わなかった」
「ウォーダンの言うとおりだ! クソッ、男爵のやつ! あいつは逃げたら家族に被害がいくって脅して、俺たちを奴隷のように使ってたんだ!」
「ああ。赤竜の見張りだってそうだ。いつ気づかれて殺されるかって……。でも家族を見捨てることもできなくて……っ」
「みんな……」
わーわーと騒がしくなってきたところで、ゼインが大きく三回手を叩いた。
全員がゼインに注目する。
「事情はなんとなく把握した。つまり、あなた方は家族を人質に取られた、二回目の討伐隊に参加した村人たちで間違いないね?」
「そうだが……あんた何者だ? 少し離れたところから見てた。赤竜を倒したのはあんただろ。冒険者か?」
「いや、ただの通りすがり――は無理があるか。そうだな、とある悪名高い魔術師の
「はあ?」
「ちなみにこの子がその魔術師。かわいいだろう?」
ゼインに下ろされて地に足をつけたフィリスは、悪名を広めるチャンスをゼインが作ってくれたのだと察して胸を張った。見よう見まねだが、昔、知り合いが敵に名乗るときにやっていた仕草である。
顎を引き、胸を張り、高みから見下ろすような視線をつくって。
「わたし、イリスの森の魔術師。悪い魔術師」
むふん、と正体を明かす。
これで人々は恐れ慄くかと思いきや――。
「ははっ、かわいい嬢ちゃんだな」
「こんな細っこいのに魔術師かぁ。すごいんだねぇ」
「さっきの空から手が出てきた魔術はお師匠様がやったのかい? お礼を言いたいんだが、お師匠様は?」
なぜかわらわらと寄ってきた村人たちにもみくちゃにされる。訳がわからなくてゼインの背中に避難した。
「あーあ、逃げられちゃった」
「お師匠様も逃げちゃったのかな」
助けを求めるようにゼインの背中の服を引っ張ったら、くすくすと笑っていたゼインに頭をひと撫でされた。
「あれは正真正銘、この子の魔術だよ。この悪名高い魔術師がやったんだ。すごいだろう? 私のかわいい魔術師は」
「え? ……えっ、その子がやったの!?」
「嘘だろ!?」
「嘘じゃねぇんだよ、これが」
ランディが知った顔で頷いている。
「ちょっと待て。イリスの森の魔術師って、聞いたことあるぞ。確か千年を生きると言われ、出会ってすぐに殺されるとも言われ、目が合えば石になるとも言われてる、あの……?」
「そうそう、それだ」
ゼインはなぜか楽しそうだ。悪名が広まったのか失敗したのか、フィリスにはいまいちわからない。
「まあそういうわけで、私たちはなにも善意で赤竜を倒したわけじゃあない。だってそうだろう? 私たちは冒険者でも、勇者でも、ましてや英雄でもない。だからこの報酬をしっかりもらおうと思うんだけど、もちろん文句はないよね?」
ゼインの発した圧に、この場で逆らえる者など一人もいなかった。
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