第6話 新しい右腕

ここは国が認知していない密かに作られた施設。

そこには白衣、防護服などの作業服を着た物が作業をしていた。

施設の部屋の一角にはある男が診察台の上で横になっていた。

男の周りには、5人の白衣を着た人間が男の治療をしていた。

「彼が例の囚人かな?」


部屋のモニターに突然右目に眼帯、黒い肌のスキンヘッドの男が姿を現した。


「はい、そうですボス。」


そのものは皆にボスと呼ばれていた。


「彼は助かるんだろうな?」


「はい、必ず治します。」


「続けてくれ。君名前は?」


「3476です。」


ボスは男の治療を静かに眺めていた。

男の傷は見る見るうちに消えていった。

治療が終わると男の体はまるで何事も無かったかのような状態に戻っていた。

治療が終わっても男は目を覚まさずにいた。


「起こせ。」


「ですが、今起こすのは体に負荷がかかりすぎで危険かと。」


「じゃあ、お前は用済みだ。」


ボスは、3476に向かってモニター越しに人差し指で首の右から左にスマホの画面をスライドするように指を動かした。

すると3476は息ができなくなりその場で倒れた。


「起こせ。」


他の4人に向かってもう一度告げた。

4人は慌ててAEDを探し男に使い蘇生した。

男は電気ショックで無理やり起こされた。

男は自分がどこにいるのかわからず、周りに見知らぬ人がいて動揺し、

右手を刃物に変化させた。

男は診察台から降り、近くにいた白衣を着た一人を人質に取った。

「ここはどこだ!俺をここから出せ!!」


「ようやくお目覚めか、ずいぶん長いこと寝ていたな。」


男はどこからか聞こえてくる声の主を探して部屋を見渡した。


「こっちだこっち、上だ。」


男はボスが映るモニターを発見した。


「ようやく会えたね、不骸九鉄。」


「何故俺の名前を知っている?」


不骸は知らない男に自分の名前が知れていることに驚いていた。


「どうやら、新しい右腕は気に入ってもらえたようだね。」


不骸は右手を見て驚いていた。

不骸の右腕は仁志の突然の能力の覚醒で切られたはずだったのだ。

それなのに目が覚めると新しい右腕が付いているではないか。

新しい右腕は、機械で出来ている銀色の右腕だった。

不骸は人質を放し、右腕の調子を動かして確かめていた。

人質にされていた人は不骸から逃げると後ろから両足を斬られた。

体が地面に付く前に不骸は男の胸を右手の刃で串刺しにした。


「ああ、気に入ったよ。」


不骸は血が滴る右腕を見ながら見惚れていた。

まるで美しいものを見るかのように。

不骸は新しい右腕にすぐに馴染んだ。


「それは、仲間になったお祝いだと思ってくれ。しかし、次無断で職員を殺したらお前は用済みだ。わかったな?」


「ああ、ありがとうよ。」


「じゃあ、後のことは炎尾に聞いてくれ。これで失礼するよ。」


ボスは、椅子を回転させ席を立とうとすると


「最後に1つ言わせてくれ。」


不骸はボスを呼び止めた。


「なんだ。言ってみろ。」


そう言うボスは不骸の方を向き人差し指を向けていた。

不骸は剣先を天井に向け刃を外側に向けていた。


「一つ、只野仁志。あいつは、俺が息の根を止める。俺はそれが終わるまで、絶対に死なんぞ。」


不骸の声は憎しみに満ちていた。

そんな不骸を見て、嬉しそうにボスは大きく笑った。


「好きにしろ。」


そう一言言うとモニターは電源が消えた。

電源が消えると同時に長髪で糸目の青年が姿を現した。


「こんな、青臭いガキが仲間とはな。」


「はぁ~。これが新しい仲間か。俺は炎尾。立場上お前の先輩にあたる者だ。」


炎尾は不骸を見て頭を抱えた。


「残念だが、お前は今から俺の後輩だ。」


次の瞬間不骸は炎尾の腕めがけて剣に変えた右手を振るった。

剣は炎尾の腕に見事に命中した。


「これが先輩とは情けない。」


しかし、切られた炎尾の腕からは血が一滴も流れなかった。

血が流れるどころか剣は腕を切断しているはずなのに腕は切られなかった。


「これは、いったいどうゆうことだ。」


不骸は目の前で起きていることが信じられなかった。


「お前は自分の力を過信しすぎだ。」


どこからともなく炎尾の声が聞こえてきた。

目の前の炎尾に目を向けるが口は動いていなかった。

そして、一瞬の間に不骸の頭は床に叩きつけられていた。

不骸の頭から血が流れ、白い床がじわじわと赤く染まっていった。

叩きつけたのは背後にいた炎尾だった。


「お前、何をした?」


不骸は炎尾に何をしたのか聞いた。


「簡単なことだよ、お前が切ったのは俺が作った人形。それも、炎のな。これで分かっただろ。お前は、俺より弱い。二度と俺に逆らうような前をするな。ボスから教育の為なら多少荒っぽいことしてもかまわないと言われているんだ。これくらいで済んで感謝してほしいね。」


炎尾は不骸の頭から手を離し、壁に寄りかかった。

不骸は立ち上がり口の中の血を床に吐いた。


「お前が先輩だ。」


不骸は不服そうに一言告げた。






 





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