第5話事情聴取

「所長勝手な外出は困ると言っていますよね。」

麗妃の顔の眉間にしわが寄っていた。

その顔は誰が見ても怒っているとわかる顔をしていた。

「ごめんごめん。」

そうオウムが言うと椅子から飛び立ち麗妃の肩に飛び移った。

「急に用事ができてしまってね。申し訳ないと思っているよ。」

仁志は一人何が起きているのかわからなかった。

所長の秘書に案内されて所長室に来てみればそこにいたのは喋るオウムだった。

頭が混乱している仁志を見て麗妃の肩から仁志の肩へと所長は飛び移った。

「なんでオウムが話してるのかっていう顔をしているね?これはただのオウムじゃないんだよ。」

所長がそう言うとオウムの目が赤く光りだし胸が左右に開き中から青い球体を銀色の何かで覆っている箱状の物が出てきた。

仁志はそれに触れようとするとあと数センチのところでオウムの中へと戻って行った。

「見ての通りこのオウムはロボットでね、私の発明の一つなんだよ。そして本当の私はここにはいない。今は急な呼び出しで別のところにいるんだ。直接会えなくて申し訳ない。」

そう言うと所長は仁志の肩から元のいた椅子に戻って行った。

仁志はよく飛び回る所長を見て落ち着きがないんだなと一人心で思った。

「只野さん改めてご紹介します。こちらが私達超人諜報局の所長である機龍善邪きりゅう せんやです。」

麗妃の紹介と同時に機龍はオウムの翼を広げて見せた。

しかし、サイズは普通のオウムと差し支えなかったので迫力は感じられなかった。

「所長、何をしているんですか?」

その様子を見た麗妃も少し困惑していた。

「いや、なんか迫力出るかなって。」

「ありません。」

麗妃の目は冷たい目を機龍に向けていた。

「ま、まあ、そんなことより只野君のことについて話そうじゃないか。」

実際には汗は流れていなかったが汗が流れているように感じられた。

「はぁ。話したいことはほかにもありますが所長が戻ってからにしましょう。」

「はは、あまりそっちに戻りたくないな。」

麗妃はすぐさま話の準備に取り掛かった。

壁にあるボタンを押すと窓にシャッターがされ天井から映写機が現れ壁に向かって1枚の写真が映写された。

そこに映ったのは、不骸の写真だった。

「彼の名前は不骸九鉄。能力者で能力は体を刃物などに変え数々の能力犯罪を犯してきた大罪人です。強盗、殺人、誘拐、拉致監禁、他にもいろいろです。一度は捕まえることに成功しましたが。何者かの協力によって脱獄しました。刑務所の監視カメラに協力者だと思われる人物が移っていました。」

写真は切り替わり不骸に協力した何者かの写真が映し出された。

「この人物は今でも正体は不明で、刑務所の出入り記録を見ても偽名が使われていることが分かりました。このものは、不骸と刑務所を脱獄しましたが、脱獄に気が付いた警備員が後を追ったところ二手に別れ逃走しました。」

次に映し出されたのは仁志を襲った覆面男が銀行強盗をしている写真だった。

「行方をくらました不骸は信金調達の為か銀行強盗をしているところを一般市民が通報警察が到着すると不骸は別の出口から逃走しました。そして只野さん、あなたと遭遇したわけです。」

次に倉庫の写真が

「このあと、不骸が今は使われていな倉庫にあなたを連れてに逃げ込んだのは確認しましたが、倉庫の中まではわからず我々の仲間が現場に向かい倉庫に入るもそこには誰もおらず、血痕だけが残されていました。」

最後に逃げ込んだ空き地の写真が映し出された。

「そして、しばらくして能力者同士が揉めていると通報が入り現場に向かうとあなただけが倒れていたそうです。」

麗妃が話し終わると窓のシャッターが開き、天井にあった映写機は天井の中にしまわれた。

「あなたをここに呼んだのは、あなたが不骸の脱獄に協力した人物ではないかと言われているからです。」

麗妃の言葉を聞いた仁志は濡れ衣を着せられたことで怒鳴る様に言った。

「何を根拠にそんなことを!!」

「ええ、もちろんあなたではないことはわかっています。あなたの身元も調べましたし、その可能性もゼロになりました。私たちが聞きたいのは2つです、あなたを調べたときに無能力者であるとわかりました。それなのに、通報には能力者同士が揉めているとありました。そして現場には、不骸の血痕とあなたが倒れていました。この

通報された能力者同士の一人はあなたで間違いありませんか?」

麗妃は仁志に向かって問い詰めた。

仁志の目をじっと見つめて。

「確かに、通報されたうちの一人は俺で間違いないと思うけど。能力に関して俺もよくわからないんだ。」

「どうゆうことですか?」

麗妃は仁志が言ってることが分からなかった。

そこから仁志はいつどこで能力が現れ、なぜあそこにいたのか説明した。

「能力が現れたのは倉庫の時だった。俺は不骸に殺されそうになって、目をつぶってもう駄目だと思ってあきらめるといつの間にか俺の右肩から不骸に似た刃が生えていたんだ。それで、俺は不骸の右手を斬った。不可抗力だった。それで俺は不骸から逃げてその空き地にたどり着いた。空き地で休んでいると、突然不骸が目の前に現れたんだ。まるで瞬間移動したかのように。それで、不骸と戦った。最後の最後に油断したあいつに一矢報いる形であいつの体を俺の手で貫いた。それで、あいつは俺を蹴り飛ばし俺は気絶した。これが俺が知ってる全部です。」

「はい、分かりました。」

仁志の話を聞いても麗妃は一切表情を変えずに続けた。

機龍は仁志の話を聞いて翼で拍手をしていた。

「では次に、不骸は仲間の名前、または仲間のことについて何か言ってませんでしたか。」

仁志は不骸といるときの記憶を遡って思い出そうとした。

「たしか、倉庫の時に仲間が迎えに来るとか言っていたような。」

「他には?他には何か言ってませんでしたか?」

麗妃は初めて食い気味に仁志に質問した。

「いや、これ以上は。自分のことで精いっぱいだったから。」

「そうですか。」

麗妃の顔はなんだか落ち込んだような顔をしていた。

麗妃はすぐに我に返った。

「申し訳ありません。少々取り乱してしまいました。只野さん、今回は本当にありがとうございました。下の入り口に警察を手配してあります。家まで警察が安全に送ります。また何かあればこちらから向かいます。誰か、彼を入り口までお願いします。」

麗妃がそう言うと所長室のドアを開け一人の男性が所長室に入ってきた。

「じゃあね、只野仁志君。」

部屋を出ていくときに機龍がそう言った。

その声はどこか違和感を感じさせた。



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