四章 14.破綻

「須賀さん」

嶽下展望台を過ぎると声がした。

振り向くと藤子さんだ。展望台の東屋から出て来た。

無事だった。良かった。


「大丈夫やったんか」須賀は、藤子さんに、怪我が無いのか心配だった。

藤子さんは、展望台の東屋へ入って行った。

須賀も後に付いて入り、ベンチに掛けた。

やっと落ち着いた。

「古沢。疑ぅとったんか?」須賀は、藤子さんに確かめた。

「そう。古沢は、犯人を見張っている筈なの」

藤子さんは、真っ直ぐ、須賀を見て云った。

「ちゅう事は、犯人は別に居るんか」須賀は驚かなかった。

そんな事も予想していた。


随分、藤子さんと話をしていたが、まったく分からなかった。

「古沢は犯人を利用しようと思っていたのよ」

藤子さんは、悲しそうだ。

「利用?」須賀には、分からない。

「仕事。町会議員の方じゃなくて、不動産業の方ね」

やはり、臨海埋立開発事業が、関係しているのだろうか。

「古沢は、犯人が、何を企んでいるか、分かっていたのよ。古沢は、犯人の行動を監視していたの」

藤子さんは、古沢の行為を悲しんでいる。

「だから古沢を見張っていれば、犯人が、次の犯行を実行した時、捕まえられると思ったの」

「次の犯行?」須賀には、想像できなかった。

「犯人が、私を狙うように仕向けの。だけど、どこかで計画が狂った」

須賀は、藤子さんが、賭けをしているのだと分かった。

その時、北山から霧嶽山に続いている山道から車が走って来る。

「隠れて」

隠れると云っても北山公園と違って木や繁みが無い。

展望台の東屋しか無い。

入口の反対側に回ると、腰板に隠れるしかない。

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