四章 8.反芻

須賀は、古沢が現れるのを待っていた。

藤子さんが、古沢は屹度、西崖の待避所に来ると云うのだ。


古沢に繋がるまでは、複雑な経緯がある。

発端は、保守党の大物衆議院議員の秘書が自殺した。

岡島さんは、大蛇川ダム建設の不正入札に関する取材に駆り出されていた。

岡島さんは、自殺した国会議員の秘書と関連して、この町に縁のある地元衆議院議員の元秘書、矢竹を追っていると思っていた。

偶然なのか、矢竹は、十一年前、須賀の父親、直道の養殖事業を技術支援するために、この町に来ていた。

岡島さんは、須賀に、父親の転落死の話を確認している。

そして、岡島さんは、この町へやって来た。

以前、矢竹が、仮住まいにしていた真鍋邸を訪れている。

岡島さんは、本当に、元秘書の矢竹を取材しようとしていたのか。


十一年前、臨海土地開発事業で、坂口建設は大きく事業を拡大した。

その時、土地売買を積極的に展開したのが、古沢不動産だった。

古沢は、その後、町議会議員になって、今度は県議会議員に、立候補しようとしている。

岡島さんは、過去の臨海土地開発事業に、不正があったと考えていたのだろうか。

その不正に矢竹が絡んでいたと考えていたのか。


大内藤子さんが、須賀の父親が転落死する直前に北展望台の脇道を駆け降りる人影を見たと云っていたそうだ。

もう一つ、喫茶店の森岡サチさんから青木の爺さん経由で、藤子さんの兄、淳也に見合写真を送っていた。

岡島さんは、大内さんを訪ねた。


その後、遺体で発見された。

何か、不正があった事の証拠を掴んだためか。

それとも、須賀の父親の転落死の真相に迫ったためか。

現在、この町では、大規模な臨海土地開発事業が決定している。

また、何か、十一年前と同じような、不正が行われると考えていたのか。

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