第28話
『こう言っては何だけどーー……!
彼にそっくりさんの、”悪しき双子の兄弟”とかが居て
ぅん森で会ったのが、もう片方の<怖い方>!
で、今目の前のこの人が<優しい方>……とか?
絶対そうだよね〜〜〜!!』
クリストファーは混乱の極みで、頭の中ゴニョゴニョ考えた
「あのぅ……失礼ですが
『ご兄弟』の方ーーーーー……が、こちらにお勤めですか?」
「……??いえ?
私には『ブラザー』は〜兄弟は居ませんが?
父の血縁ーーー
私をとても可愛がってくれる”おば姉妹”……
1人は結婚して子どもが居ますが全員レディですし、もう1人はパートナーとの間に子どもはおりません、母方も似た感じです」
「ーーー……ふぅんーーー……
そう……です……か……」
『じゃやっぱり……
あの怖い人と
〜目の前の人間は同一人物なのか…』
何だか腑に落ちないし理解出来ない
言っては何だが、人間そこまで激変する物なのか?
クリストファーは綺麗な眉をキュッとひそめながら考え込んだ
「あのぅ〜『ノブシゲ』ってどんな表記文字を、ジャパンの文字で表現するんですか?」
すると彼の問いかけに、『あぁーー……』と急に視線がフワリ動く
「差し支えなければーー〜是非教えて下さい」
「んーーーまぁーー……いいか…?
既に個人情報も開示してしまったし、この程度〜は〜」
ほんの僅かな微かな迷いを見せた後、引き締まった唇が優しく動いた
「そうですねぇ、『ノブシゲ』の名前は、2つの漢字で構成されています
『ノブ』が誠
<真実、誠実さ>を意味するーー……1文字
成り立ちは、『横向きの人』ともう一つ、
『口に〜”唇”に取っ手のついた刃物を突き刺している』
”善く解釈”し
突きつけている様な怖い形の象形文字からです
つまりですねぇ
”お前この私に嘘を言ったら解ってるだろうなぁ〜!
グッサリ口の中に今すぐ剣を突き刺すぞっ!”
究極の真偽を問いかける『二心無い事を誓わせる』
そういう意味合いを含んでいます
ですから〜ちょっと怖いし重いですね?」
ノブシゲはクリストファーに丁寧に簡潔に説明しながらクスクス〜悪戯っぽく笑う
「で〜残りの『シゲ』……は
…『綺麗な女性』の、象形文字の成り立ちの意味から言ってセレブの女性がですね?
まぁ『多分』ですが?
自分が思うに、優雅にお付きの人とヘアセットする様子から来てるんです」
「へーーーー〜〜〜!! どんなどんな?」
「えぇ、表記左側のゴチャッとした部分が、髪飾りをつけ
<髪を結う女性>を指しています
漢字を紡ぐ時代の”古代人”で、女性が美しい髪飾りをつける程となると……?
もうこれは族長か豪族の相当な特権階級の妻か娘でしょう
古代、普通人は狩りや農耕に従事し日常はそれどころじゃない
祭事はともかく頭部は特に揺すられ、ゆっても直ぐに乱れてしまう
だから自分はーー……個人的にそう思うんですよ?
文字の持つ『ストーリー』では、結い上げた〜
その上に更にまた、『より糸』のお洒落をですね?
今で言う、特別のお気に入りのリボン飾りをサヤサヤ誰かにして貰ってる…
…賑やかに美しく着飾ろうとしている
頭の後ろなんて自分じゃ見えませんからね?
『誰か』と和気藹々お洒落する、瑞々しい情景、和みと気品ある晴れやかさーーー
なんとも言えない 幸福な艶めく爽やかさを、後の”時代”〜
この文字を使いーーー
春の若木の健やかに茂る生命力に例えました
つまり『ラック』
運気〜運命のアップです
事実〜草木が茂るように大いに豊に栄える事
『ハンエイ』の言葉の文字にも使用されています
つまり究極の真実『誠』と、人生富み栄える様に〜!と言う様な
〜まぁ、どこの国でもよくある、平和的意味合いの名前ですね」
「へーーーーーっつ!!
つまり素敵なーー…!
詩的で綺麗でお洒落な雰囲気のネーム、お名前なんですねっ!」
クリストファーは自分のトレードマークの一つ、菫色の瞳をキラキラさせて、思わず真剣に聞き入ってしまっていた
そして〜
誰しも見とれるという、銀糸の様な美しいプラチナブロンドの髪をサラサラ揺らし、嬉しげに返すと
『ノブシゲ』の方もフッと甘やかに、彼に微笑み返した
『……え?』
その屈託ない、キラッキラの微笑みに、つい思わず胸がギュッとつかえドキドキしてしまった
『うわ〜〜〜ーーこの人、絶対女性に大人気だろうなぁ……!』
そんな人に親切に大切にされて、一緒にいられるのはウキウキ楽しい
彼は元々こうした、知的好奇心をくすぐる『ロマンティックな話』が大好き
ほんの一時
<辛い>……現実の記憶から解放されたのだった
『でも〜この名前
何処かで絶対、確かに聞いた覚えがあるぞ?
えーーーっと、何だったっけ〜?
何だっけ??』
何かがチクンと引っかかった
心の中で思いだけがグルグル空回り〜空転する
城〜とある特殊監獄の物語 夏生めのう @natukimenou
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