13−13

直前にひととき、生家の巨大なお屋敷に戻っていたウィンストンは全身〜


わざわざ全て新しく仕立てられた学園の礼服を着用し、クリストファーの前に現れた



『格好いい……!

本当にいけていない、”いつものスタイル”〜〜の自分とは大違いだ』

 


暫くピッタリと側に居たクリストファーですら〜

親友の水際だった美貌は見事で、思わず磁石に引き付けられるように見とれてしまった


ーーー美しい彼の親友を泣きながら見送る女生徒達の〜

シクシク手を振る人垣の群れ


「お慕いしていました」

「必ず戻って来て下さいまし」

「お元気で!」


ぎっしり……

多分学園中、いいや出発を聞きつけた都市中の女の子が来ていたと、本気でクリストファーは感じた


それくらいーーー

彼の見送り客は猛烈に凄かった

 

一方キャサリンはキャサリンでーー……


ウィンストンを熱烈に慕う女性徒達の『男子学生版』!!

彼女も眩いばかりに美しくって可憐な姿を披露し


「やっぱりーーー

遠くアースに連れ去る僕は恨まれちゃうよねぇ……!」


〜…テヘッ

そりゃそうだよなぁ〜〜……


クリストファーはそんな風に思った



ウィンストンの姉君から不思議ななんとも言えない表情で……


「弟の事をどうか宜しくお願い致します

そしてーーー…

心より有り難うございました」


ドールみたいにキュートな格好した美少女の〜

2人の妹と共にクリストファーに対して丁重な挨拶が行われた


『ああーーー彼女は知っているなぁ……』

あの日何が弟の身にあったということを


だがそれをツツキ出すことは野暮な話だった

事態は既にずっと先に進行しているのだ


もうあんな事は二度と起きない

〜いいや起こしてはならない…!



「僕は彼を守ります

 ……お達者で

ウィンストンが愛おしく思う貴女方御姉妹様も、どうかーーー

……どうぞご自愛を」


クリストファーは極小さな声で、一切の具体的な事は何も言わず


……彼女ら以外に誰にも聞こえない様に囁きを送る



『この人そっくりだ』と……彼は思った

じぃ…ッと見つめる賢そうな…物言いたげな切なげな瞳


翡翠(カワセミ)という〜

地球のチャイナやジャパンの清流に住むという〜とびきりの美しい碧い小鳥


その<雄と雌の事>を例えた、尊いグリーンの宝石に似た澄んだ光を思いだした


チャイナの皇帝ーーーー

権力の頂点に立つ、エンペラーのみ所持出来たという美しき宝石

万がいち平民が入手したら即死罪と言われた、硬玉の奥ゆかしい〜


高貴な艶やかな燦めきを彷彿とさせた



底力を感じる…強い光を放射の魅力的な瞳

ーーー…

おそらくこの人が居れば


『きっと大丈夫!』


…〜直感だけで根拠なんか全然無い……


けれど何故か……?


見るからに<お姫様>〜〜な

自らの父と話す親友のお母上を見てそう感じた


『姉様は母親である彼女とは全く違う

そうだーーー…まるで違った』


雰囲気がーーーどことなく彼に似てたからかもしれない


『ーーーきっとこの人が彼無き後の 

いたいけなで、か弱き無力な家族を守り抜くだろう』




遙かなる惑星地球に向けて 

コロニーDー01を旅立つ、いよいよ迫ったーーー時


宇宙空港ーーー

王家専用スペースシャトル搭乗ーーーーー直前


『電脳ジャーナル』等の大手マスメディアや

大勢の見送りの学友や

料理長ーーー…、クリストファーと仲のいい衛兵ーーー…

 

王宮のお勤めの友人達に隠れてすれ違いざま

 

コソッと耳打ちされた”秘密のはなむけの言葉”〜は


「お前も色々成長したんだなあ」


そう……何もかもお見通し


『弱い体に始終点滴を打ちながら、伊達に激務の国王やってるんじゃあないな』


クリストファーは心より感服した


『大人ってホントに怖い……!』



「じゃぁ行こう、ウィンストン、キャシー……」

「うん」

「行きましょう」


サァ冒険だ

大人の扉を開く第1歩だ


……では父上、母上、王宮の皆様行ってきます


今は力なき学生ですが、留学から戻ったーーー

『大人になったら』


今度は必ずーーー僕が皆を守ります


お約束致します



そんなこんなをクリストファーは


宇宙の底に……銀色に光り輝きながら遠く去りゆく故郷


愛する母国……D-01を

シャトル船窓から眺めながら そっと口の中で呟いた


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