13−12


「お勉強がとてもよくわかる様になりました


ーーー彼は教え方も本当に上手で完璧で、ふつつかな私は感服致しました

流石の学園一秀才のご子息様です


今後とも不甲斐ない僕とのお付き合いを是非に…

もしもーーー

お家の方がお嫌でなければお願いしたく存じます」



歯の浮く様なキラキラメッセージ


〜しおらしく華麗な最新ホログラム映像と共に、毎晩必ず彼の父上と母上宛に別々に転送した


彼らの愛息子の、王宮の皆が認めた<模範的な素晴らしい好印象>ぶりを

ウィンストンには内緒で〜


こそこそせっせと 地道に毎日アピールしまくった

 

”未来の国王”…

自分という美味しい後援者を得たという高ポイント


そして息子である彼にはーーー…

「既にもう力のある王宮の大人も、全員味方についているのだ」という無言の圧力


さぁどうする……?


そしてーーーー…〜

最後の大きな秘められた『取引』

 

これは大政治家の<彼>ならば確実に理解出来る筈だと踏んだ

”彼程の男”ならば

わざわざ口に出して言わずとも……だ

 

『ウィンストンが知ったら悲しむだろうなーーー……

きっと

でもーーー……しょうがない

これが僕の選んだ選択なんだ


未来の為に

仕方が無いんだよ?…?

うん』


親友がここから出た後、本当に帰る場所を失ってはマズイという心配からだった



クリストファーの王太子としての”最大級の切り札”


『その為にはプライドなんて構うものか!』


〜〜大切な人を守る為に何だって出来ると念じた



 ”留学話”は御前では上品に流されて保留だったが

ーーーその後は案外トントン拍子に認められた



……



しかし実際はーーーー


幼い頃からの王太子をよく知り

どうしてか?

まるで息子の如くに非常に可愛がってくれていた長老格大臣〜


年長の大臣達が仕切る議会は、国王より直に話を聞くなり囂々と紛糾した


そう、かなり……実は(相当)渋い様子で揉めに揉めたのだ


ーーーー結局父王が


「ジャパンの諺で『可愛い子供には旅をさせろ』

……”賢く強い子に育てる為に〜敢えて苦労をさせろ”


甘やかせず、かの国ではそう厳しく教育するといいます」


「ーーー…そうは申しますが……!」


「あの子が自分で〜

厳しい苦労覚悟でこの度のことを希望した時、私は本心より誇らしく思いました

未来における国王の意識が芽生えたのだ……と

〜そうでしょう?」


「です……が…………国王陛下ッッ!」


「この先、ひ弱な精神では……

必ずやこの国は、デメテルに埋蔵される手つかずの眠れる資源……!

莫大な利権を虎視眈々と狙う超大国に、いいように近い未来丸ごと飲み込まれてしまうだろう

そうなれば自治も何もない

つまりーーー

彼だけが我々の、神から賜った奇跡の〜最後の希望の灯火なのですよ?」

 

「……」


様々な『援護射撃』を行った事で

渋面をつくりながらも…ブツブツ言いながら了承した事を、後々大人になった暁に知ることとなる



『ゴメンね……こんなにも心配掛けて

優しいおじさま方

僕は心より貴方方の事を愛しております……』




そしてーー……とうとうその日


故郷からの旅立ちの日がやってきた


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