第20話 親からの贈り物
穂香との奇妙な関係が成立してから二日後、俺は銀行のATMへ通帳記入と引き出しをしに行った。毎月、月末になるとフランスにいる両親から生活費などのお金が送られてくる。母からは「余ったら貯金として好きに使っていいわよ~」なんて言われているため、それほど使う機会がないこともあり今のところ何不自由なく暮らせている。
帰り道、家の前までくると大きな段ボールを持った人と鉢合わせた。
「あっ、こちらの家の方でしょうか?」
「あーはい、そうです。」
「そうですか。わたくし、佐○急便の者です!」
「あーお疲れ様です。」
どうやら配達員の人のようだ。
俺はハンコを取りに玄関まで戻り伝票にハンコを捺して大きな段ボールを受け取る。
「こちらワレモノですのでご注意下さい。」
受け取る際に配達員の人はそれだけ言ってトラックに乗って次の配達先と思われる場所へ進んでいった。
「あっ裕司おかえりー!」
トラックを見届けていると穂香が玄関まで迎えに来た。
「ただいま」
そう言うと穂香は笑顔になった。そして視線が俺から段ボール箱へ向いた。
「それ、何?」
「ああ、さっき家の前で鉢合わせた配達員からの荷物。」
「どこからの荷物?」
「多分、ア○ゾンの段ボールじゃないとなると…。」
送り主として考えられる選択肢は一つだけだな。
リビングに戻って開けてみると、そこにはバルサミコ酢やパルメザンチーズなどの大量の調味料や食料が大量のビンやタッパーに入っていた。
「今回もすごい量ね。」
「ああ、向こうもこれで料理をしろって言ってるようなものだな。」
何を作るか穂香と考えていると、
~~♪
“ 荷物の送り主 ”から俺のスマホに電話がかかってきた。
「もしもし?」
『もしも~し、ユージ久しぶり~!段ボール見た~?』
「見透かしたようなタイミングでかけてくるんだな、母さん。」
荷物の送り主、そして電話からの声の主は俺の母、瑠依子(るいこ)だった。
『ちなみに零斗(れいと)さんもいるよ~』
『ユージ、久しぶり。』
電話越しに父、零斗の声が聞こえた。ここで俺は最初からあった疑問をぶつける。
「よくこんな時間に電話してきたな。そっちの時間は大丈夫なのかよ。時差とかあるだろ?」
『大丈夫よ~。こっちは今、朝の6時だから~。』
「寝起きで電話してきてんのかよ。」
『その通り~』
コイツらマジか。どういう気分で寝起きで息子に電話しているのだろうか。
『せっかくだしビデオ通話にしないかい?』
いきなり零斗が提案した。否定する理由もないから素直に従う。
親の顔を見たのはいつぶりだろうか。そして寝起きと言ってたわりには服装も髪型も妙にしっかりしているのは気の所為だろうか。
「二人ともこれから仕事?」
『そうよ~、だから今こうやって電話してるんじゃん。』
「朝とは思えないテンションって思うのは俺だけか?」
チラッとキッチンにいる穂香を見ると苦笑いをしながら頷いた。共感してくれている。
『瑠依子はいつもどおりだろ?』
「まあそうだけどさ」
言葉どおりすぎるんだよな。母さんのテンションが低い時を探すほうが苦労するだろう。
『穂香ちゃんも隠れてないで映ってもいいのよ~』
「………は?」
『ん~?どうしたのかな~ユージ?』
「なんで今俺の家に穂香がいるって知ってんだよ。」
『だって~、ユージの一人暮らしには穂香ちゃんがついてくるものでしょ~?』
言ってる意味が全ッ然理解できない。
親ってよく分かんねえ。
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