第21話 そこに愛があるのは分かっているが…
瑠依子に穂香がこの家にいることがバレたため、俺と穂香、画面越しに零斗と瑠依子が対面で座る構図が出来上がった。
「穂香を参加させる意味あるか?」
『ウチのユージをもらってくれてありがとうとか言わなきゃいけないじゃない?』
意味合いが違っている気がする。
「い、いえ、こちらこそ裕司にはお世話になってばかりでして…」
『あら~、やっぱり零斗さんの言った通りね~』
やっぱり?どういうことだ?
『零斗さんね、ユージが穂香ちゃんを養うのも時間の問題って言っててね~』
瑠依子の横で零斗が笑顔で頷いている。
俺の横で穂香が顔を赤くしながら俯いている。恥ずかしい、恥ずかしいと呟いている。
『でも気にすることはないわよ~、胃袋掴まれたらおしまいなんだからね~』
「は、はい…。」
瑠依子のフォローがあっても穂香は俯いていたままだ。さっきの言葉がフォローになっているかは別としてだが。
『でもユージ、家を買った私達が言うのもなんだけどちゃんと掃除とかできてる?』
「まあだいたい週イチでやってるぞ。時々、穂香にも手伝ってもらったりしてるけどな。」
「でも、そのかわりに料理食べさせてもらってるのであくまでもウィンウィンな状態です。」
穂香、余計な情報は言わんでいい。そして両親、ニヤつくな。意味がわからん。
『じゃあユージ、私、穂香ちゃんと二人で話したいから一旦離れてくれる~?』
なんてこった。家族電話から実の息子追い出しやがった。ただ、零斗が画面からいなくなったのを確認したため、俺も穂香を残しキッチンへ行って夕飯の支度を始める。まあ女性同士でつもる話でもあるのだろう。そして野菜を洗ったりしながら何気なく穂香を見ていると時々顔を赤くしたりコロコロ表情を変えながらも終始笑顔で会話していた。さすが陽キャ、コミュ力のかたまり。陰キャの俺には無理なことだ。
「裕司、もう戻ってきていいよ。」
そう穂香の声が聞こえたので俺は手を止めテーブルに戻る。
「おばさん達そろそろお仕事だから切るって。」
「ああそうか。」
『え~零斗さん、ユージが冷た~い!』
『まあまあ、でもそれだけユージが独り立ちしたってことだよ。』
『それもそうね~』
あっさり納得するな。
「四年も一人暮らししてたらこうもなる。」
『その間に何回かこうやって通話してたら少しくらい丸くなったのかしらね~?』
そういえば四年間離れて暮らしてるのにビデオ通話するの何気に初じゃね?
「まあ、お二人とも仕事がありますし、時差があるせいで共通した空き時間も少ないですし。」
穂香がフォローを入れた。
『そうだね、仕方ないか。』
『そうね~』
納得したらしい。
『それじゃユージ、そろそろ切るけど何か頼んでおきたいものとかある~?』
「強いて言うなら料理に使うワインをもうちょっと送ってくれないか?」
『およそ高校生が親にするお願いじゃないわね~』
いいだろ別に。
『穂香ちゃんも元気でね~』
「は、はい!」
『我慢してないで思いっきり甘えなさ~い』
「は、はい…」
『それじゃあバイバ~イ』
『また電話できるのを楽しみにしてるよ』
そう言って電話は切れた。
そして終わった途端、一気に疲れがきた。それを察したのか穂香が
「寄りかかってもいいよ?」
言ってくれたので俺は大人しく穂香の肩に頭をのせてくつろぐ。穂香も俺の方へ体重をかけてお互いが支え合っている状態になる。こうやってゆっくりするのが心地良い。
ただ、今はこんなにもゆっくりしているのに新年度が始まるとともに波乱が起きることはこのときの俺は知る由もなかった。
〈あとがき〉
春休み編は今回で切って次回から二年生編になります。
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