第16話 一悶着あることが日常
「やっほーユージ、遊びに来たぞー!」
「お邪魔しまーす!」
元気なあいさつとともに涼と美萌が家にやって来た。
……朝7時に。
「おい。今日来るとは聞いていたが、朝7時に来るとは聞いてないぞ。」
この二人、朝からテンション高くないか?
「それより、ほのちゃんどこー?」
何気に話題をそらされた。
「穂香は今寝てる。」
「待って、なんでユージがそのこと知ってるの?」
涼が聞いてきた。まあ普通そうなるか。幼馴染とはいえ他人は他人。知ってるほうがおかしかったか。
「お前らが来るって言ってたから、泊りがけで家の掃除手伝ってもらったんだよ。」
俺は丁寧に説明し、二人に納得してもらった。若干の疑問を持っていそうだったが。
すると、ちょうど噂の人が二階からやって来た。
「んぅ~、裕司~。」
そう言って穂香は俺に抱きつくように体を寄せてきた。
「裕司~おはよう~。」
「ああ、おはよう。」
トロンとした目にこの口調、まだ寝ぼけてるのか。まあ完全に起きるまで待つか。
そして前へ向き直すと、涼と美萌が呆然と俺達を見ていた。どうしたんだ?
「とりあえずいつまでも玄関で突っ立ってないで上がれよ。」
「んぅ~裕司~、誰に向けて言ってるの~?」
俺は涼と美萌に向けて言ったつもりだったが穂香が反応した。俺は突っ立ったままの二人を指差した。するとそれを見た穂香は、
「キャーーーーーーッ!!」
と叫んで顔を真っ赤にして俺から離れた。今完全に起きたな。そして今の声でボーっとしていた二人をも現実に引き戻した。
俺はとりあえず混乱している穂香に声をかける。
「とりあえ、朝ごはん作ってやるから、歯磨いて着替えてこい。」
「は、はい…、分かりました…。」
多分落ち着きを取り戻したであろう穂香はなぜか敬語になりながら急いで二階へ戻っていった。慌ただしい奴め。そう思いながらも穂香の動きにホッコリしていた。そして再び玄関へ向き直し、
「まあ上がれよ。」
そう二人に告げた。そしてようやく二人が玄関の先へ足を踏み入れた。
「二人ともー、飲み物は何がいい?」
「「コーヒー!」」
二人が声を揃えてそう言ったため、俺は二人分のコーヒーと穂香のための朝ごはんを作り始める。
「裕司、私もコーヒーちょーだい!」
そう言って、着替えてきた穂香がリビングに顔を出した。
「はいよ、もう朝ごはんできてるから早めに食べろよ。」
「うん、ありがとう!」
穂香が席について食べ始める。
「ほんとおいしそうに食べるね。」
「実際おいしいよ。」
「こりゃお昼が楽しみだね。」
おいコラ勝手にハードル上げんな。
「はいはい、穂香、早くこの二人に宿題させたいからさっさと片づけてくれ。」
「ちょっと裕司、私だってお客なんですけど?」
「人の家に私物持ち込んで定期的に泊まるヤツのどこがお客様だ。」
「うっ…」
あっさり言い負かされてんじゃねえか。
「でもさ、ほのちゃんもワガママばっかりだとユージくんに捨てられちゃうよ。」
突然美萌がこう言い出した。すると、
「えっ、ウソ…、私捨てられちゃうの?」
「あ、いや、もしもの話だよ。ね?」
そして…、
「裕司~、お願いだよ~、私を捨てないで~!」
突如、涙目になって俺にしがみついてきた。
えー、どうしよ。トリガーを引いた美萌は苦笑いを浮かべながら首を横に振っている。
諦めてんじゃねえよ。はぁ仕方ない。
「大丈夫、俺は穂香を見捨てたりしない。」
「ホントに?」
「ああ、だから安心しろ。」
「うぅ~ん、裕司~」
安心したのか、穂香が擦り寄って俺を抱きしめる。俺はどうしたら良いか分からずただひたすら頭を撫でた。
穂香って案外メンヘラの才能あるのかもな。そしてこの状況を見ていた涼と美萌が同時に呟いた。
「「何を見せられてるんだろう…。」」
〈あとがき〉
次回、宿題&お料理コーナー!
この作品が少しでも面白い、続きが気になるという方は
・小説のフォロー
・応援
・☆☆☆の評価
・コメント
よろしくおねがいします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます