第7話 カップルランキング2

 「どうもどうもカップルランキング1位と3位のお二人さん?」


 そう言いながら、先輩と思われる女の人が二人やって来た。


「ん、どうしたのかな伊藤くん、まさかこの結果に文句を言いたいんじゃないやろな?」


よくわかったな。そんなに顔に出ていたか。


「はい、文句はありますがその前に二つほどよろしいでしょうか?」


「うん、構へんよ。何?」


「まず、誰ですか?」


「え?」


その場にいた全員が硬直した。俺なにかまずいこと言ったかな?


「ユージ、君、マジでそれ言ってる?」


「え、うん。」


「嘘だろ…。彼女たちは学園内でかなり有名な…」


「ええよ松原くん、自己紹介はウチらでやるわ。」


涼の言葉を遮って女の人が前に出てきた。


「ウチは現新聞部部長で、次で三年になるの増田凛香(ますだ りんか)や。よろしくな。」


「副部長の村上結月(むらかみ ゆづき)です。よろしくおねがいします。」


 ギャルっぽい見た目で気の強そうな増田先輩と静かな感じの村上先輩。対照的だが、良いバランスの二人だな。


「でも、ウチらを知らんって珍しい人もおったもんやなぁ。」


「まあ、別に面識があったわけじゃないですからね。」


「ウチらのこと噂でも聞かんの?」


「俺、噂に疎くて…。」


「まぁ、これから覚えていてください。」


「は、はぁ…。」


よし、名前覚えたしそろそろ帰ろう。


「じゃあ、俺はこれで。」


「ちょっ、待ちぃや、何で帰んねん!」


「いや、名前わかったしもういいかなと。」


「なんでやねん!まだ二つ目の質問聞いてへんよ!」


そうだ忘れてた。


「じゃあ二つ目、あの新聞に書いてある冷徹の貴公子って誰が考えたんですか?」


「知ってどうすんの?」


「ムカつくからぶっ飛ばします。」


「やめてやめて!それはやめて!」


 増田先輩がすごい叫びながら後ずさりしてる。絶対あの呼び名考えたのこの人だ。


「しかし伊藤くんと松原くん、アンタら二人には感謝してんねんで。」


「感謝?」


 涼が聞き返す。


「元々あなた方が来る前は今回2位の先生と今は卒業された三年の方々でトップを独占していたんです。」


それに何か問題でもあったのか?聞いてみると…


「変わり映えせんくて面白くなかったんや。

それにあの先生に至っては四年連続1位っちゅうとんでもない記録出しとったんや。」


「ああ、だから波乱を起こしてくれてありがとうってことですか?」


「まぁ要するにそういうことやな。」


 何だろう。感謝されてるはずなのに新聞のためだけに感謝されてると思うと全然嬉しくない。


「まあ、生徒会や風紀委員会も巻き込んで公平に審査しているとは言え結果に納得していない人もややいますけどね。」


「例えばどんな人が?」


「フリーやと思ってた子が実は付き合ってたりとかこの新聞見て落ち込む人とかもおんねんよ。」


「まあでも今回一番落ち込んでいるのは今回4位だった同級生の青木くんと深井さんのカップルでしょう。」


「どうしてわかるんですか?」


「この二人、前回も4位だったんですよ。」


「ああ、そういうことか。」


 察した俺は深く言わないようにした。


「ん、どういうこと?」


 涼は分かっていなかったようだ。


「三年の人が抜けたら自分たちがトップに入れると思ったら俺たちが入ってまた4位になったから落ち込んでるってわけ。」


「そう、そゆことそゆこと。」


 俺の説明に増田先輩が同調する。


「そういえばお二人、彼女さんは?」


 唐突に増田先輩が聞いてきた。するとそこへ…


「あ、裕司いたいた!」


 穂香が来た。


「教室に荷物だけあったから校内にいるとは思ってたけどさがしたよー。」


「帰ろうとしたんだけど涼に呼び出されてさ、壁新聞のことで。」


「壁新聞?あーあれのこと?まあ別にいいんじゃない?それだけ仲良いって捉えとこう。」


 ポジティブだなあコイツ。


「あ、彼女さん?」


「あの、いいですか?」


 さっきからの疑問をぶつけてみる。


「ん、どしたん?」


「いや、さっきから彼女彼女って言ってますけど俺と穂香別に付き合ってるわけじゃないから、彼女って呼び方変だなって思って。」


「「へ?」」


「だからランキングで1位取るのもおかしな話だなって思って…」


「裕司、裕司。」


「ん、どした?」


「私達と涼くん以外みんな固まっちゃったよ。」


 そう言われて見てみると、本当に固まっていた。

 よし、この隙に帰ろうと足を踏み出すと、


「ちょっと待って!」


 増田先輩が呼び止めた。


「二人、本当に付き合ってないの?」


「何度も言わせないでください。俺達付き合ってませんから。」


 そう言うと新聞部の二人が慌てはじめた。


「馬鹿な…、じゃあ今までのは何だったの?」

「完全にあれは恋人としてのそれ…」


 なんかブツブツ言っているがよく聞こえない。


「小池ちゃん、ちょっといいかな?」


 増田先輩が穂香を手招きする。穂香がそれについて行くと二人でコソコソ話している。

不思議なことに話しているうちに穂香の顔が赤くなっている。

 そして最後に増田先輩がニヤニヤしながら穂香に言葉を発すると…


「そんなこと絶対させませんからー!」


穂香が怒った。そして頬を膨らませながら


「裕司、帰ろう!」


 そう言って手を引っ張った。


「じゃあな、涼。」


「お、おう。」


 引っ張られながら涼に別れの挨拶だけ済ませ、荷物を取りに行ってから二人で帰った。

 帰り道、穂香に何があった聞いても


「なんでもない!」


の一点張りだった。

 顔赤くしてなんでもないはないと思うけどなあ…。







〈あとがき〉

次回、穂香視点の小話書くつもりです。


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