第6話 カップルランキング1

 「ユージ、ちょっと来て!早く!」


 修了式の日が終わり、明日から春休み。早く帰ってゲームをしようとリュックを背負った瞬間、物凄いスピードで教室にやって来た涼に呼び出された。


「何?不審者でも出た?」


「だったら呼び出さないでしょ。」


「まぁ、そうか。」


 じゃあ一体何の用事で?涼に尋ねると、


「とにかく来て。」


と言われたため、ついて行く。

 俺が目的の場所についた途端、みんなが俺を見つめてきた。呆れ、怒り、嫉妬、そしてわずかな尊敬、様々な感情をこめた視線があちこちから飛んできた。

 そして、その視線の理由を壁を見て理解した。

 そこには一枚の大きな紙、壁新聞が貼ってあった。タイトルは、


  『白鷺学園新聞 年度末番外編

    最強カップルランキング!!』


 ふざけていると思うかもしれないがれっきとした学園の名物である。

 このランキング誕生の理由もふざけていて、当時の新聞部部長がリア充を晒すために書いた新聞が予想に反して好評だったとか…

 その理由が、どれだけ自分たちの愛が強いかを確かめられるからだとか。また、ここに名前が無いから隠し通せてるとか、名前が無いからまだ告白するチャンスがあるとか、そういう場面でも需要ができて今や十年以上続いてるランキングらしい。


 また、このランキングに関しては風紀委員や生徒会も関わっていて、いかに新聞部がこのランキングにかけているかが見て取れる。

 それにしても、嫌がらせのつもりで書いたものが逆にリア充に喜ばれるなんて、当時の新聞部部長は憐れすぎる。


 問題なのはその内容である。2位に二年の先生カップルが、3位になんと涼と美萌がランクインしていた。


「お、涼と美萌3位じゃん、おめでとう」


「いやいやそこじゃないでしょ!」


そう、問題はそこではない。問題は1位だ。

 

なぜか俺と穂香が1位になっていた。そして書かれた見出しが問題すぎる!


  『冷徹の貴公子と学園のアイドル

   この二人の前に勝る愛なし!』


ふざけているとしか思えない。誰だよ冷徹の貴公子って。見出しから中二病を感じる。

 トップ3は見出しとともに写真もあったのだが、明らかに撮られた位置が近いし角度が不自然すぎる。まさかと思って振り返ると、微妙な笑みを浮かべながら逃げ出そうとしている涼がいたのでとりあえず捕まえる。


「おい待てコラ、何逃げようとしてんだ?」


「あ、い、いや、ごめんなさい!」


すげえ怯えてる。


「謝るってことは何か悪いことした自覚はあるんだね?」


「あっ…」


やっちまったって顔してる。


「さあ、洗いざらい全て話してもらおうかな~」


「は、はい…」


 聞いたところによると、新聞部が俺と穂香のツーショット写真が欲しかったが中々撮れなかったため、いつも近くにいる涼に隠し撮りを依頼したのだとか。


「これでも結構命張ったよ。」


「そんなに?」


「だってユージ、写真撮ろうとするとスマホ壊す勢いで止めにくるでしょ?」


「まあ確かに。」


「撮られるの嫌いなの?」


「そうなんかもな。撮られるのを体が拒否してる感じ。」


「今更だけどユージやっぱ変だね。」


「自分でもそう思うわ。」


 などと話していると誰かがやって来た。


「どうもどうもカップルランキング1位と3位のお二人さん?」




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る