第5話 地獄の試験 結果発表

 一年間の総まとめとなる学年末テストが終わった。

 

 このテストは他校とは多少違っていて、一年間で習った範囲が全て出題される。そのため問題の量がとてつもなく多く、試験時間も一教科あたり二時間程度、それを一週間続けるという鬼のような試験なのだ。

 しかし、大変なのは生徒だけではない。もちろんこの試験を作っているのは先生であり、答え合わせをするのも先生である。そのため、テスト期間になると、生徒も先生も絶望の表情を浮かべる。ただ、このテストを越えないと次の学年へのステップができないのだ。そのため、生徒の間でも先生の間でもこのテストを「地獄門」と呼んでいる。

 

 そして今日はそんな地獄門の成績上位者(上位ニ十人)の発表の紙が貼り出される日で、発表の五分前にも関わらずたくさんの人たちが貼り出される場所にいて、周囲は混沌としていた。みんなそんなに成績上位者が気になるのだろうか。

 俺や涼、穂香や美萌は一緒に見ようということになって早めに来てみたが、それでも遅かった。

 少し待っていると、大きな紙を持った男の先生がやって来た。


「お前らー、初めての地獄門試験お疲れ様ー!」


「うおおおーーー!」


先生の声に生徒が沸いた。ライブみたい。


「んじゃお前ら、今から貼り出すから全員目閉じろー。」


先生に言われて目を閉じようとすると、穂香がギュッと手を握ってきた。


「どうした、穂香?」


「あ、うん、ちょっとね。」


そういうと穂香は手を握ったまま今度は腕を絡めてきた。まあ仕方ない、穂香も不安なんだな。不安なのは分かるが、すごく胸が当たっている方が気になるんですけど…。


「よーし、お前ら目開けろー!」


先生の一言で現実に引き戻された。

 みんな壁に貼り出された紙を見つめた。歓声をあげながら喜ぶ者や悲嘆に暮れ膝を地面につく者、やっぱり無かったかと諦めてあっさり帰る者がいて、まるで合格発表の時のようだった。

 そういえば、涼たちはどうだったんだろう。


「やったよユージ!俺、初めて名前が載ったよ!」


そう言われて見てみると、11位に涼の名前があった。そして、穂香や美萌もそれぞれ19位と13位に名前があった。


「美萌、ランクインおめでとう!」

「そっちもランクインおめでとう!」


穂香と美萌がハイタッチしているところを見届けて、俺の順位を探す。えっと俺の順位は…。


「ユージは安定の1位おめでとう。」


横から涼が呟いた。


「今回も1位の感想はどう?」


「下がってなくて良かった、かな?」


「それ、前のテストの時も言ってたよ。」


「同じ順位なんだし、コメントも同じでいいだろ?」


 二人で話し合っていると、


「裕司、またまた1位おめでとう。これで一年の全部のテスト1位独占だね。」


穂香がやって来た。


「穂香もランクインできて良かったな。」


「裕司が手伝ってくれたおかげだよ、ありがとう!」


そう言って穂香は俺のほうへ身体を擦り寄せてきた。まるで猫だな、そう思いながら俺は自然と穂香の頭を撫でていた。



「あれ涼くん、ユージくんと話してたんじゃなかったの?」


「そのはずだったんだけど、穂香ちゃんが来た途端俺のこと見向きもせずイチャつきだしてさ。」


「あらら可哀想に。」


「いきなりとられたものだから結構キツイね。」


「そりゃそうね。じゃあ私が涼くんを癒してあげるよ。」


「え、マジで?」


「うん、おいで。」


美萌に誘われるがまま涼は美萌を抱き締めた。



 もちろん、この場には他に人がいたがこの二組のペアは周りを気にしていなかった。そのため周りでは様々な思いが交錯していた。


(今絶対声かけるべきじゃないな。)


(私も彼氏欲しいなあ。)


(ここはお前らのイチャつく場じゃねえぞ!)


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