第4話 昼休みのティータイム2
「私と裕司、小学校一年から今まで十年間ずっと同じクラスになったからねー。」
穂香の発言を聞いた涼は口を開け固まっていた。まあ無理もないか、十年間同じクラスなんて普通じゃありえないことがあってしまったから。そして周りはと言うと穂香の声が聞こえた人たちも涼と同じように驚愕していた。
そして涼はその状態のまま俺に視線を移した。いや、そんな目で見て俺にどうしろと言うの?まあとりあえず、昼ごはんを食べた俺がすることは……
「裕司、どこ行くの?」
「いつものミルクティーじゃない?」
穂香の質問に涼が答えた。
俺は昼ごはんの後にミルクティーを飲むことを日課にしている。まあイギリスのアフタヌーンティーの真似事のようなものだ。
「じゃあ別に行かなくていいよ。」
「え、何で?」
美萌が言ったことに思わず反応してしまった。その質問に答えたのは穂香だった。
「裕司、これなーんだ?」
そう言って俺に見せてきたのは俺がいつも学校の自販機で買っているミルクティーだった。
「こうなると思って予め買っておきましたー!」
「え、ありがとう。ちょっと待って、ミルクティー代返すから。」
「いやいやいや、別にいいよ!今回は奢りだから!」
穂香の勢い強いなあ。じゃあ今回はありがたくいただきます。
「そして涼くんはコーヒーね。」
そう言って美萌は涼に缶コーヒーをした渡した。
「ん、ありがと。」
「どういたしまして。」
涼と美萌が微笑みあっている。うん、幸せな光景だな。
「っていうか、涼は高校生になってからコーヒー飲むようになったんだな。」
「「え?」」
涼と美萌の声が重なった。二人だけの世界から現実に戻ってきたらしい。
「あ、まあ二人のおかげでね。」
「何で他人のコーヒー事情に俺と穂香が入ってくるんだよ。」
「まあこれ飲んで倒れないようにしよう的な?」
それと俺たち二人とどういう関係が?あれこれ考えていたら……
「そういえば、何の話してたんだっけ?」
穂香の言葉で今度は俺が現実に引き戻された。
「確か、ユージと穂香ちゃんが十年間同じクラスだったって話だね。」
涼が答えた。
「でも十年ってスゴいね。私と涼くんでも二年の時は違うクラスだったのに!」
美萌が若干抗議しながら俺達に言った。
「どれだけの確率なんだろうね?」
「もはや二人セットにされてるんじゃない?」
などなど色々話していると、ふと思ったことが口に出た。
「でも、あれからもうすぐ一年経つのか…」
今はもう三月。もうすぐ新しい学年になる。今のクラスも解体され、新しいクラスになる。
「まあ新しいクラスはそうなった時に色々話せばいいじゃん。私達にどうとかできるわけじゃないんだし。」
様子を察した穂香が俺に身を預けながら柔らかい声で話しかけてくる。彼女なりに俺を安心させようとしているのだろう。っていうか俺そんな深刻そうな表情になってたのか。
まあ確かにクラスなんて時の運で決まるものだし、穂香の言うように俺達にどうとかできるわけじゃない。だったら今の幸せな時を噛み締めよう。
「ありがとう。」
「ん、何が?」
「色々とだ。」
俺は穂香がそうしたように穂香に身を預けて頭を撫でる。
そしてその様子を見ていた涼と美萌が呟いていた。
「あーあ、また始まっちゃったねー二人だけの世界。」
「これのおかげでコーヒーが飲めるようになったなんて言えないね。」
「でも、これがこの二人って感じがするよね。」
「そうだね。まあもう少しこのままでいさせてあげよう。」
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