第3話 昼休みのティータイム1

 午前の授業が終わり昼休みになった。俺は自分の席の前の人、松原涼と一緒にご飯を食べる。涼とは中学時代からの同級生で、この学園の中で俺が友達と呼べる数少ない人間の一人だ。いつもはこうして二人で食べたり、穂香やこれまた中学時代からの同級生で涼の彼女の栗原美萌と一緒に食べたりしている。 

 他の女子からも


「ねぇ伊藤君、一緒に食べない?」


と誘われたりもしているが、すごくニヤニヤしていて多少気持ち悪いため、丁重にお断りしている。


「いやー今日も人気者だね、ユージ。」


と涼が言う。


「うるせぇ、俺もなりたくてなってるわけじゃないんだよ。」


「今、結構な人を敵にまわしたような…」


涼のツッコミはスルーしておこう。それはともかく、俺は静かで平穏な学園生活を送りたいと思っている。しかし、そのことを涼に伝えると、


「うーん、その願いは入学式の時点で消しちゃったと捉えていいだろうね。」


とあっさりした回答が返ってきた。


「ちょっと待て。入学式の時点っていくらなんでも早すぎないか?あと、消しちゃったってなんだよ。まるで俺が自分からそうじゃなくしたみたいに言ってるけど。」


静かに過ごしたい俺が自分から消すなんてことはありえないぞ。


「いやいや、思い出してごらんよ入学式のクラス発表の時を」


クラス発表の時?あの時は確か……




「やった!やったよ裕司!また同じクラスだよー!」



なんて言って俺に抱きついてきたんだよな。


「でもそれがどうしたんだ?」


「いやいや、ユージ気付いてなかったのかい?あの時の二人の幸せそうな表情とじゃれ合いっぷりは二人にとってはすごく良かったんだろうけど、周りはその甘さで倒れてたんだからね!」


そうだったんだ。まったく知らなかった。


「その様子じゃあまったく知らなかったんたね。はぁ、あの時喜ぶのは別にいいんだよ。でもなんでクラス発表の掲示板の前っていう目立つような場所だったんだよ。」


「いや、それは穂香に聞いてよ。抱きついてきたのは穂香なんだし。」


あの時の穂香の喜び方は尋常じゃなかった。あの時の跳ね方も笑顔も結構可愛かったなあ。そう考えていたら涼が聞いてきた。


「それにしても、なんで穂香ちゃんはあんなによろこんでたの?」


まぁもっともな質問だな。余程のことが起こらない限り、あんな喜び方をするわけがないのだから。まぁその余程のことが起こったんだけどな。


「それは、実は…」


「私と裕司、小学校一年から今まで十年間ずっと同じクラスになったからねー。」


そう言ってやってきたのは、声の主である穂香と穂香についてきていた美萌だった。



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