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↑↓


「ふむ? ……はぁ、全く。卯月と来たら、明日では無くすぐに知朱の元に向かった様子ですわよ」


やれやれと首を振りつつ、口元を緩ませるカアラ様。


「……奴の性格を考えれば、予想出来た展開ですね」

「まぁまぁ薄縁、そう怒らないで。一応、様子を見に行って下さらない? 卯月、大暴れしそうなので」

「……御意」


命じられずとも、向かうつもりではあった。



↑↓



ガンッッッ!!!

俺の拳に触れた車が、一瞬で半分にひしゃげ、スクラップに。


「ボーナスステージかな?」


ゴリッッッ!!!

俺の拳に触れた地面のアスファルトが抉れ、ちょっとしたクレーターに。


「夜とか穴が見えない車がガコッてなるやつやん。まぁもう殆どの車ペチャンコやけど(笑)」


カンッッッ!!!

俺の手刀に触れた売り物の鉄パイプ数本が切断され、周囲の車や地面に突き刺さる。


「日本の鉄パイプは植えても育たないぞ☆」


コイツ……!


「初めての家に来た犬くらいハシャイでるねぇ」


これだけ俺が暴れてるってのに、涼しい顔して全て避けやがる!


「因みに、今回の被害ってどうするつもり? 絡新が補償?」

「俺が弁償すっから余計な心配してんじゃ! ねぇ!」


抉ったアスファルトの破片をぶん投げる。

その威力や弾速はさながら散弾銃。


ダダダダダッ!!!


……後の地面や車に残るのは、蜂の巣のような無数の穴。


「はえー、君ってお金持ちなんだねー。おばぁ、ちゃんと給料払ってるんだー」


……チッ、これも当たり前のように避けてやがる。

いくらお坊ちゃんでも、喧嘩の仕方を知らないわけじゃないらしい。

動きに無駄が無い。

最小の動作のみで避けている。

この程度で終わられても困るがな。


「テメェはハエか。ウロチョロ飛び回りやがって」

「どっちかってーとハチかなー。ブンブン飛び回ってー(キーン)」


奴は両手を飛行機の両翼のように広げてガキのようにパタパタ走って、



「チクッと、仕留める(ぷにっ)」



……!?

コイツいつの間に!

懐に入られるまで気付けなかっただと!


「ひ、ヒトの腹突っつくな!」


手で払い退けても「キーン(笑)」と避けて走り去る。

てかオメェはハチじゃなく蜘蛛だろ。

……クソッ、あっちからは簡単に触られてんのにコッチからはまだ触れられてねぇ。

どうしても、奴のペースに巻き込まれちまう。

戦いにおいては、いかに主導権を取るかで左右される戦局。

強者ほど、自分のフィールドに誘い込む事に長けている。

ここは俺の作った結界で、俺の領域の筈なのに……。

上手く誘い込み、アイツは袋の鼠になる、筈だった。

だが、現実は逆だ。

猫が鼠を敵だと認識してないのと同じ様に、遊び相手としか見てられてない。


ゴンッ「ぐへっ」


調子に乗って走り回った結果、結界の壁にぶつかり、額を抑える知朱。


「ううむ、面白い現象だなぁ(コンコン)相手を決められた範囲に閉じ込める……これ、君の『能力』なんでしょ?」

「能力だぁ? 何の話だよ」

「なんだぁ? 坊ちゃんが今やってる『お仕事』も把握してねぇのか、若ぇのは」

「だからなんの話だよ」

「ふむ……桃源楼にも超能力は居たんだね……何故おばぁは黙っていたのか(ブツブツ)」


さっきから能力だのなんだのと……『こっち』方面とは無縁じゃなかったのか?

異様に現状の飲み込みが早いと思ってたが。


「うーん……動き回った感じ、結界の範囲は『五百平米』くらい? 例えるなら体育館な広さ」

「……だったら、どうすんだ? 逃げられる出口でも探してんのか?」

「いや、出口は別に良いんだよ。で、ここって今、営業中のホームセンターの駐車場じゃん? 周りの人にはどう見えてんの?」

「心配しねぇでも、一般の人間にゃ認識は出来ねぇよ(俺と同レベルの妖ならバレるが)。助けでも来ると期待してんのか?」

「ふんふん、面白い能力だ。車で来た人とかは『徒歩で来た』みたいな認識で帰るのかな。これだけの範囲を占めてる関係で、一般人は『狭い駐車場だな』と不満に思ってそう」

「……さっきから、何の分析だよ」


「僕が『君を使う時』のシミュレーションに決まってんだろ」

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