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「えー、突然だが編入生、のようだ」
困惑気味の教師。
彼にとっても突然の話だったろう。
「短期だけ、と言う話らしい。詳しくは本人らに聞いてくれ」
「ちわっ! 謎の美少女三人組のリーダー知朱ちゃんと! (キラッ☆)」
「つ、付き添いのホコウと……」
「……こいつらとは関わりの無い薄縁です。話し掛けないで下さい」
各々のキャラが分かる完璧な自己紹介。
ざわつくクラスメイト達。
「席は近く同士にしろと『上から』言われてある。あの奥の隅に座ってくれ」
ここは特進クラスの一つで人数も多くないから三人分の席なら余裕で確保出来るらしい。
まぁそんな事情はどうでもいいので、言われた通り席に着く僕達。
「えー、編入生の為に改めて説明するが、知っての通り、最近盗難が多発してる。お前らには安心して貰うよう学校側も全力で対応するつもりだが、不安なら大事なもんは俺や職員室に行って預かって貰うように」
「(挙手)それって先生達が犯人でオチは無いですかー?」
「初日からズケズケ来るな編入生!? ……まぁ、そこは『信じてくれ』としか言えん」
「はーい」
クスクス……周りに笑われた。
掴みはバッチリだな。
「じゃあ、以上。号令」
朝のホームルームが終わり──
「ねぇねぇ! どうしてこんな時期に編入を!?」「三人はどういう関係!?」「てか知朱ちゃんは外人さん!?」
予想通り、集まって来るクラスメイト達。
廊下の方でも他クラスの子達がこちらを覗いている。
まぁ、注目を浴びるのは予想の範囲内だ。
まずは、皆が一番知りたいであろう事を伝えて【犯人】を牽制する。
「僕らは『例の事件』を解決する為に遣わされた、その道のプロフェッショナルだよっ」
おおお…… 感嘆の声を上げる民衆。
「そ、そうだったんですかっ?」「どの道よ」
ホコウちゃんと薄縁が突っ込んだがスルーし、
「それで、君達の中にも被害者は居るかな? 友達の話でもいいよ。情報が欲しいんだ」
クラスメイト達は探り合うように顔を見合わせて、
「「「実は………………」」」
と。
出るわ出るわ、窃盗被害や嫌がらせ等の報告。
それは男女に限った話ではなく、
やれ『体操着が無くなった』だの、
やれ『弁当が入れ替わってた』だの、
やれ『彼氏を取られた』だの、と。
最後のは関係ない気がするが、一応それぞれの話を頭の中で整理して。
「ふむ……つまり、『犯人は複数』、という可能性があるね」
僕の見解に、周囲もざわつく。
「(クィッ)ふっ。それはボクも考えていた」
「なんだこの眼鏡!?」
突然現れた眼鏡にビックリする僕。
「失礼。僕は佐藤。生徒会に所属する者さ(クイッ)」
「いかにもなガリ勉君か」
「好きに呼んで貰って構わないよ」
「佐藤君! 知朱ちゃん! さっきのどういうこと!?」「犯人は一人じゃない? なら一人を捕まえても解決しないじゃん!」「犯人の目星は!?」
「(クィッ)まぁ落ち着いてくれ。可能性の話だ。犯人が一人なら流石に短期間での被害が多すぎる。協力、またはそれぞれが単独で動いてる可能性もあるという話。だろ? 知朱さん」
「ブー。全部言われてやる気なくなったー、帰るー」
「いじけるの早過ぎでしょ、も少し頑張んなさい」
ポンポンと頭を撫でる薄縁に免じて少しやる気を取り戻してやった僕は頬杖をつきながら、
「証拠も残さず、霞のように消える大泥棒達。案外、犯人は『超能力』でも使ってるのかもねー」
一瞬の間があって、
「アハハッ、なにそれー」「そしたらどうしよーもないじゃーん」「知朱ちゃんカワイー」
みんなが笑ってるー、お日様も笑ってるー、今日もいい天気ー
だからとクラスが和気藹々な空気になると思ったのだが。
一部──笑っていない子達を僕は見逃さなかった。
呆れたか、興味が無いか、それとも図星か。
「ちょ、超能力なんて凄いっ……!」
ホコウちゃんは確実に犯人では無いだろう。
「ま、僕らみたいな存在が来たからにはある程度牽制出来るし、抑止力にもなる。それでも犯人らが悪行を続けようってんなら……挑戦状として受け取るよ」
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