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歩きながら、スーツ女性はこの学校について説明を始める。
「ここは県内でも有数の進学校。それでいて、文武両道をモットーに、運動系や文化系の部活動でも輝かしい成績を残す所でもあります」
「ふぅん。そんな場所に、僕らみたいな部外者がホイホイ入っていいんすか?」
「御心配なさらず。許可は『取って』ありますので」
「ふぅん」
なんだろう、今の会話の『違和感』は。
「それで、ですね。そんな学園で今『起きている事件』、についてなのですが……」
「え? ああ、はい。どんなのっすか?」
「……実は、【盗難】が多発していまして」
「警察に頼れや」
ベシッ! 薄縁に頭をはたかれて隣にいたホコウちゃんがビクってなる。
「バカ、頼って済む話ならウチらに相談しないでしょ」
「ええ……そうなのです。警察の捜査も取り入れたのですが、その盗難事件が不可解な事ばかりで……」
「不可解?」
「犯人の痕跡が、全くと言って良いほど現場から見つからないのです」
ふむ……痕跡ねぇ。
髪の毛やら指紋の事だろうけど、優秀な警察ですら手に負えない犯人、か。
とんだ大泥棒だ。
「当然防犯カメラとかにも映ってないんすよね?」
「……現場の中には、場所が場所なのもあって、カメラを設置出来ないデリケートな所も……」
「ああ、そういう」
隣の薄縁もすぐに察したようで、嫌悪感に満ちた顔に。
「で、デリケートな場所? どこの事です?」
「無垢だなぁホコウちゃんは。そうだな……例えば、君が『着替えてる時』に僕が駆け付けて堂々と眺めてたらどう思う?」
「は、恥ずかしいですっ! で、でも……知朱様が観賞したいのであるば……!」
「そういう事だよ。あ。この後一緒に学園のシャワー室行かない?」
「何の話よ、何の誘いよ。普通に『更衣室』とか『トイレ』って教えたげなさい」
薄縁め、オブラートに包まず言いやがって。
少しはホコウちゃんの無垢さを分けて貰え。
「にしても、盗難ねぇ。騒ぎ好きな生徒による自作自演の可能性は無いんすか?」
「その可能性も完全に否定は出来ませんので……生徒の安全な生活の為、何卒、解決の方よろしくお願いします」
「ほいほい」
スーツ女性は頭を下げ、「二年A組の方に向かって下さい」と告げ、一人、校舎の方に消えて行った。
そういえば、結局何者だったんだ?
名前とか役職、聞きそびれたな。
「……ん?」
ジロジロ ヒソヒソ コソコソ
今更気付いたけど、周りの生徒達からの視線凄いな。
「こんな美少女三人組が歩いてたら注目を浴びるのは必然か」
「誰が美少女よ誰が」
「自虐するなよ」
「殴るわよ」
「うう……ホコウみたいブサイクが一緒にいてすみません……」
「ベリーっ、ホコウちゃんを泣かすなっ」
「面倒くさい連中ね。これ以上晒し者になりたく無いからさっさと行くわよ、ほらっ」
僕らも校舎の中に入り、告げられた場所に向かう。
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