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その後、僕らは用意された『正装』に着替え、出掛ける準備をする。
「うっふーん、似合ってる?」
「スカートひらひらさせない。てかなんでパンツも女物なのよ」
「す、凄く可愛いですっ」
「えへへー」
「それ言われて喜ぶとか男としてどうなのよ」
「二人も可愛いよっ。弾けるフレッシュな香り!」
「あ、ありがとうございます……」
「……まぁ世間的な年齢的にもアンタと私は『この服』違和感ないからね。変なコスプレにはならないでしょ」
「あっ、いい事考えた。女物僕に着せた復讐として後でカアラのババアにコレ着せて写真撮ってやろ! キッツイぞぉ?」
「絶対やめなさい」
あ、そういえば、
「ちゃっかり君も着てるけど、一緒に来るの?」
「は、はいっ。『外の勉強をして来い』と、毘沙様から……決して邪魔をせぬよう後ろで傍観してますのでっ」
「かまわんよ。さ、僕はもう一眠りするからベリー、『現場』で食べるお弁当お願いね(ゴロン)」
「コイツは……せめて服は脱ぎなさい。シワになってみっともないから」
──それから、一時間後に起こされた僕は一気にやる気を無くしていたものの、ホコウちゃんの涙目に免じて渋々家を出て。
「ホッホッホ、お待ちしておりましたよ」
アパートの階段をおりると、下で黒塗り高級車が僕らを待っていて。
「んー? シゲさん? おばぁは?」
「おりませんよ。カアラ様からは『坊ちゃんの足になれ』と命じられてやって参りました。そちらのタンポポお嬢さんも、と」
「お、お世話になります……」
──三人で車に乗り込み、目的地に向け走り出す。
「しっかし、車通勤たぁ罪悪感が湧いてくるねぇ。他の子達は『バス』とか『電車』に揺られて苦労してんのに。ほら、外にもチラホラ『自転車』使ってる子見えるし」
「ならアンタはここで降りて走れば?」
「シゲさーん、見てよー、シゲさんと違ってこの子お付きの癖にご主人様に敬いがないんだよー」
「そりゃ尊敬出来ないからね」
「ホッホッホ……私とカアラ様も、昔から関係が良好だったわけではありませんぞ。こうしてお付きとなったのも、長年の付き合いで良好な関係を築いた結果ですじゃ」
「まぁなんやかんやで僕らの場合初めから関係は良好だからね」
「……(無言の肩パンチ)」
「ホッホッホ、それもそうですじゃ。絡新ではお付きになるのにカアラ様からの命は一切ございませんからな。全て本人の希望、意思のみ」
「おばぁも昨日そんな事言ってたねぇ。なんだいベリー? そんなに僕の側に居たかったのかい?」
「……別に。アンタのお付きなら適当にやってても高収入は約束されるからね」
「素直じゃないなぁ」
「き、気兼ね無く言い合える関係……羨ましいです……」
そんな雑談をしていたら、いつの間にやら辿り着いていた目的地。
その場所とは──
「ねぇ。ここでは現在、分かってる範囲でどんな『事件』が起きてるの?」
「す、すいませんっ。『その先は自分の目で確かめてくれっ』と毘沙様が……」
「昔の攻略本みたいな煽りしやがって」
見据えた先にある建物。
──【学校】。
「(夏)セーラー服姿とはいえ、こんな色々厳しそうな場所に、ホントにフラリと入れるのかい?」
「か、カアラ様が色々取り計らってくれたと聞いていますが……」
と言っても、話が決まったのは昨日の今日だ。
手続きも何も無く、そんなすんなり行くものかしら──なんて考えていたら。
車の方に、一人のスーツ女性が歩み寄って来て、それに気付いたシゲさんがウィーンと窓を開ける。
「お待ちしておりましたー」
「ホッホッホ、これはこれは態々お出迎えを。話は通っていたようですな」
んー? 見た感じ、シゲさんこの学校関係者っぽい人と知り合いだな?
ガチャリ と、薄縁は自ら車の扉を開け、車外に出ようとする。
「ほらっ、アンタもよっ」
引き摺り出された。
「わわっ」と慌てたようについてくるホコウちゃん。
スーツ女性の前に立たされて、
「お世話になります」「ぐえっ」
無理矢理頭を下げさせられる。
こんな事しなくても自分から下げるのにっ。
「いえいえ、お世話になるのはこちらの方です。よろしくお願いしますね」
ニコリ、微笑むスーツ女性。
新任かな? 若い空気がある。
ここの教師か事務だろうけど、しかし、おばぁやシゲさんとも面識があるとか、堅気じゃねぇな。
……んー? にしても、どっかで『会った事ある』気が……まぁいいや。
「ホホッ、では坊ちゃん、私はこれで。御武運を」
シゲさんの車が走り去った後、
「では、皆さんこちらへ」
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