【EP2】6
【EP2】
初めて降りる町の中。
行き先はあの方の居る所。
受け入れて貰えるでしょうか。
1
朝。
「お、おはようございます知朱様っ」
呼び鈴の音で起こされ、またババアかと文句を言いに玄関ドアを開けると、知らない女の子が立っていた。
おどおどした感じでアニメキャラみたいな緑髪の、小柄なワンピース美少女。
おっぱいは小柄じゃないけど。
「どちら様?」
「あ、あの! 昨日助けていただいた【タンポポ】です!」
「予想外過ぎる鶴の恩返し来ちゃったな」
「んー? どしたのー?」
珍しく僕より遅く起きた薄縁が眠気まなこを擦りながら、タンクトップとショートパンツの薄部屋着スタイルで現れて、
「タンポポが恩返しに来た」
「--へぇ」
一気に目が覚めたような顔で、来訪者を睨んだ。
ビクッと小動物のように震えるタンポポガール。
「貴方、毘沙様の遣い、って事で良いのよね?」
「は、はいっ」
「ちょっとちょっと。自分をタンポポと言い張る女の子をなにスムーズに受け荒れてんのさ」
「……そう言って、追い返す気は無いんでしょ?」
「うん」
面白そうな空気しか感じないし。
「で、毘沙ちゃんの遣いだっけ? つまりは、今日から僕がする依頼の詳細を伝えに来たって事でオケ?」
「は、はいっ。【ホコウ】と申します!」
「じゃ、あがってあがって」
「し、失礼しますっ」
「別にあげなくても……」
とブツクサ失礼な事を呟いてる薄縁はスルーして、ホコウちゃんを居間へ案内。
丸テーブルの側に座って貰うと、彼女はそわそわしたように部屋の中をキョロキョロ。
「どしたの?」
「い、いえっ。布団、一つしか無いんだなぁって……」
「ん? そりゃあ狭いからね。さっきまでこの子とここで寝てたよ(肩にポンッ)」
「……(無言で払い除ける)」
「はわわ……こ、これが最近の若者……乱れてます……」
「そんなん良いから。早く用件だけ言いなさい」
「は、はいっ」
この町の神だと言い張る毘沙ちゃんからの依頼内容。
町に入り込んだ『形の無い悪意』が集まる場所に行き、それを排除するというもの。
悪意とはなにか、なにをすれば解決扱いなのか、最後までこのノリに付き合わなきゃいけないのか──と疑問は多い。
「……と、いう内容で、『そこ』に行って欲しいと、毘沙様から言付かって参りましたっ」
「ふぅん」
意外な場所への派遣だけれど、悪意は『人の欲』が固まる場所に集まるらしいから……まぁ解らないでもない。
「ベリー、君は『そこ』、行った事ある?」
「無いわね。訊くまでも無いでしょ」
「そうだねー。どうするよ? 考えたら僕ら、行った事ないから『まともな場所に就職』出来ないぜ?」
「そうね。ま、なんとかなるでしょ」
「あ、あの……?」
「ああ、ごめんねホコウちゃん。にしても、『そこ』に行くには『ドレスコード』ってもんがあるでしょ? 売ってる場所なんて知らないぜ?」
「そ、そちらも大丈夫ですっ。先に絡新のカアラ様に報告した所、すぐに手配して下さって……こちらですっ」
「用意周到だなぁ。……ん? これ、間違ってるよ? 三着とも『女物』なんだが?」
「そ、それはホコウも確認したんですが……カアラ様が『問題ない』と……逆らえるはずもなく……」
「あのババア! (ガタンッ)」
「諦めなさい(グイッ)」
服を引っ張られて座らされた。
「むぅ! この怒り! どうやって晴らせば!」
「後で私に何しても良いから」
「しゃあねぇなぁ(ケロッ)」
「あわわ……なにをしても……ドキドキ」
ホコウちゃんは何を想像してるのか。
『エッチなお願い程度』で僕が満足すると思ってるのかもしれない。
今更『全裸で一日過ごせ』とか言っても、薄縁は平然とこなす。
この子は寧ろ『着せた方が』羞恥で顔を歪ませてくれる。
何着せようかなぁ……【スク水】? 【バニー】?
「園児の服とか言ったら殺すわよ」
くっ! そんなチョイスが!
この女、出来る!
伊達に長年僕に連れ添ってねぇ……!
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