第29話 全て片付いた~ノア視点~

涙を流す僕を、ステファニーが優しく包み込んでくれる。その温もりが、僕の凍り付いた心を溶かしてくれる。まだだ、まだやらなければいけない事が残っている。涙を拭い、父上の方に向き直った。


「父上、今すぐ工場を停止させ、海の浄化を行ってください。エディソン伯爵並びに他の方達も、手伝ってくれ。ポセイドンとの約束の日までに、出来る事を行いましょう」


そう、海の浄化作業が残っている。これをやらない事には、完全に終わったとは言えないのだ。


「ノア、大丈夫だ。もう既に工場は停止させたし、海に流れていたヘドロたちも、出来る限り回収させているよ。それにしてもしばらく見ない間に、随分と大人になったな。まさかノアに助けられる日が来るなんて思わなかったよ。これもきっと、ステファニー嬢のお陰だな。ステファニー嬢、ありがとう。君のお陰で、息子はこんなにも逞しくなった。本当にありがとう」


そう言うと、ステファニーに頭を下げる父上。


「陛下、どうか頭をお上げください。私はただ、ノア様の側にいただけです。今回の事も、全てノア様の力で解決したのですよ」


そう言ってにっこり笑ったステファニー。いいや、間違いなくステファニーがいたから、ここまで出来たのだ。ステファニー、本当にありがとう。君のお陰でこんなにも強くなれた。


相変わらず僕の手をしっかり握っているステファニー。そんなステファニーに向き合う。


「ステファニー、僕は君のお陰で、現実から目を背けず立ち向かう強さを手に入れた。正直君がいなかったら、僕は昔の様に嫌な事から逃げ、楽な方向へと向かっていただろう。ステファニー、本当にありがとう。それから、改めて僕のお嫁さんになってくれますか?もちろん、この国の次期王妃として」


改めてステファニーにプロポーズした。王妃やモリージョ公爵がいなくなった今、僕が次期国王になる事はもう決定事項だ。僕と結婚する予定のステファニーは、当然次期王妃。きっとステファニーなら、立派な王妃になってくれると僕は確信している。


「私が次期王妃ですか!でも…ノア様と一緒にいられるなら、王妃様でも国王でも何でもなりますわ」


そう言って嬉しそうに僕に飛びついて来たステファニー。やっぱり、僕のステファニーは最高だ。


「エディソン伯爵、どうやらお前の娘はうちが貰う事になりそうだ。まさかお前と義理とは言え、家族になるとはな」


「それはこっちのセリフです。陛下。これからもあなた様の面倒を見ないといけないと思うと、頭が痛いです。でも、ステファニーが決めた事なので、仕方ないですね」


父上と伯爵がそんな話をしていた。文句を言いながらも、2人の嬉しそうな顔を見たら、僕も嬉しくなった。


王妃とモリージョ公爵が失脚した事で、これから王宮内もしばらく混乱するだろう。それでももう僕は逃げるつもりはない。これからは父上やステファニーと一緒に、この国を支えていきたい。そして、今以上に民が暮らしやすい国を作っていきたい。そう強く思っている。



数日後

王妃並びモリージョ公爵の処分をどうするかの会議が開かれた。さすがに僕だけでなく父上の暗殺を目論んでいたという事で、2人は極刑が妥当だろうと言う結論に至った。


さらに僕の弟2人(王妃が産んだ子供たち)は、父上の実の子供でない事も発表された。もちろん僕は、真実の鏡でその事を知っていたが、さすがに父上には内緒にしておこうと思っていたのだが、当の父上が密かに調査をしていたらしい。


そして、調査の結果やはり自分の子供ではないという事が判明したらしい。ちなみに2人の実の父親は、モリージョ公爵だった事も、その場で公にされた。


その事を、僕がエディソン伯爵領に旅立ったタイミングで王妃に伝え


「次期国王は私の正当な血を引くノアだ。近々王位も譲る予定だ!」


そう宣言した事で、焦った王妃とモリージョ公爵は、急遽父上を毒殺する計画を立てたらしい。まさか兄妹で愛し合っていたなんて…


さすがに他の貴族たちもかなり引いていた。


弟たちが国王でもある父上の子供ではないという事がはっきりした以上、王宮に置いておく訳にはいかないという事で、弟たちは北の地の領地を与えられ、そこでひっそりと暮らす事で話は纏まった。もちろん、逆恨みから変な気を起こさない様、しっかり見張りを付けるらしい。



そして王妃やモリージョ公爵の指示のもと、動いていた使用人や貴族たちだが、人数が多い為、行った罪に応じて処罰していく事が決まった。ただばあやは、元王妃でもある母上の命を奪っているうえ、第一王子でもある僕の殺害未遂もある。


特に父上の怒りは凄まじく、今すぐ極刑に処すと言っている。ばあやもずっと仕えていた主人(母上)を裏切った事をかなり後悔している様で「今すぐお嬢様の元に私をおくって下さい」と、涙ながらに訴えている様だ。


正直そんなばあやを見るのが辛くて、未だに会いに行けていない。そんな僕を支えてくれているには、やはりステファニーだ。ここ数日、元気のない僕を海に誘ってくれる。


さらに僕達を心配したキキやリンリン、オクトが奇麗になりつつある王都の海に遊びに来てくれているのだ。皆と過ごす時間が、僕の心を少しずつ癒してくれている。


ステファニーと彼らがいれば、きっと僕は前を向いて進んでいける。そんな気がする。



~あとがき~

長くなりましたが、ノア視点はこれにて終了です。今後はステファニー視点に戻ります。

どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

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