3-2
***
ガルアド
(アレは、一体何なんだ!?)
あんなに可愛い存在がいてもいいのか……!?
真顔をつくるのに全神経を使い、かなり
ぎこちない動きも、きらきらの
ふわふわの抱き
何か、何か別のことを考えよう―― 。
戦争に勝利し、敗戦国であるルビクス王国の王女を和平のために
戦後の後処理やルビクス王国との交易の整備など、考えることは山ほどある。
敗戦国の王女を娶ったことに対する貴族たちの反発だって、少なくない。
勝った者がすべてを支配する権利があると考えている者たちにとって、『和平』という方針は理解しがたいからだ。
その思想には
ガルアド帝国は、先帝の時代に戦争によって多くの属国を得て、領土を拡大した。
しかし、そのすべてを
今は
戦争が続き、
(それに、
魔法が
それに、ヴァルトと側近のグランしか知らない事情もある。
だからこそ、反発する者が多い中、ヴァルトは和平の道を選んだ。
その姿勢を示すために王女を娶ることにしたが、敗戦国であるという見せしめのために
(でも、あのぬいぐるみの可愛さは罪……もしや、ぬいぐるみ姿で私を油断させるつもりか!?)
元敵国から
無害そうに見えるぬいぐるみだが、油断は禁物だ。
もしあのぎこちない動きや
(となると、あまり近づかない方がいいな……)
今でさえ、あの可愛さに
想像するのも
皇帝の心は、こんなことで揺らいでいてはいけないのだ。
「……大人しくしているだろうか」
誰にも知られず、警備も厳重だからと自分の部屋へ連れていったが、よくよく考えれば私的空間である。
機密情報はすぐ分かる場所には置いていないが、万が一ということもある。
と、そんなことは建前で、ただあの
「……くそっ」
悪態をつき、ヴァルトは立ち上がる。
ここで考えていても
そう思い、ヴァルトは足早に自室へと向かう。
(大人しくしているか、
決して、彼女が心配だとか、気になっているわけではない。
監視のためで、それ以上でも以下でもない。
などと自分に言い訳しながら、扉を開いた。
しかし、さっと室内を確認する限り、ぬいぐるみの姿がない。
「おい、どこにいる?」
一人で中に入り、小声で呼びかけるが、返答はない。
奥の寝室にも、皇妃の部屋にも、ぬいぐるみの姿はなかった。
(まさか、
それとも、ぬいぐるみ姿でガルアド帝国の弱みでも
「私の部屋にあったある物が消えている。何か見たり、聞いたりしなかったか?」
「陛下の私物が
「いや、そうではない。ただ、何か変わったことはなかったか確認したい」
「変わったこと、ですか……ランドリーメイドが入ったこと以外は、特に変わったことはありませんでした。何を
ヴァルトの不在中にランドリーメイドが入るのはいつものことだ。
部屋の見張りもぬいぐるみが一人で外に出たら見落とすことはないだろう。
(もしや……)
嫌な予感がした。
「しっかりと護衛としての役割を果たしてくれればよい。だが、今後はメイドであっても私以外をこの部屋に入れるな」
ヴァルトはそう
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