第2話 先輩と夏と絵画

或る日、夢を見た。


私は、少年兵だった。知識が深くないので階級や所属された地域は分からない。

だが、夢の中の私は毎日訓練に勤しんでいた。


海軍の様だった。戦闘機に乗る訓練が多かった。実際、飛ぶことより走り込みや体作りが中心だったが。海の潮風を思い出す。


兵達の寝る場所は、狭い部屋に二段ベッドが所狭しと並べられている。私は上階で、同期が下に寝ていた。


戦争があった時期ではなく、戦闘機の並ぶ広場の近くに住んでいた白い犬を可愛がっていたのが癒やしだった。




そんな時、私は一人の先輩に出逢う事になる。

茶色に近い色素の薄い彼は、異国の血が混じっていると揶揄われるのが厭で髪が伸びるとすぐに刈っていた。


「内緒だが、自分は絵を描くのが好きなんだ。モネという海外の画家が好きなんだよ。隠れて、稚拙だがノートに絵を描いている」

煙草の煙を燻らせ、先輩は恥ずかしそうに笑っていた。


やはり、見世物小屋の時のように顔に光があたりその先輩の顔は見えない。



私は、モネが好きだ。何時から好きなのか、思い出せない。学校で美術の教科書を見たときかもしれない。だが、それは先輩の影響なのかもしれない。




貴方は、今生まれ変わっていますか?私の様に、あの時の事を思い出しますか?


私は、自分の名前はおろか貴方の名前を思い出せません。

ですが、私は貴方を覚えています。




貴方の事が、ずっと好きでした。



貴方が今幸せだと知れば、私はこの夢を終えることができるかもしれません。


今も貴方を探しています。

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