第25話 使命/最終話

キュピピィピピキュピピピィィ!


(う~ん うるさいなぁ・・ 誰かあの音を止めてくれよ!)


俺は真っ暗い世界の中を漂いながら放っておいてくれと思った。


ズビィビビビビビビビビビビビビビィィッ!


だけど、逆に不快な音はますます煩くなってきたんだ。


「はっ!!  あれは目覚ましの音じゃないか」


俺は目を覚ますとガァバァと飛び起きて慌てて

目覚ましのアラームのスイッチを切った。


「えっ! 嘘だろ・・・・!?」


見慣れた部屋 寝なれたベッド そこにはいつもの空間があった。



「え~ アレ夢だったのかぁ? ずいぶん長い夢を見たなァ

自分の部屋で寝ざめてビックリするつうのも妙な話だねw



サバゲ行って変な銃拾って異世界で戦って

マッドサイエンティストと争ってかゲラゲラ  


だけど、これだけ引っ張って夢オチとは芸がないよなぁw


まぁ、いいや ただでSF映画を一本見たと思えば

そこそこおもしろいVR作品だったといえるよなぁww


さてと起きなくちゃ! 遅刻しちまうぞ 遅刻遅刻」


俺はベットから立ち上がって、ふっとテーブルの上を見て

唖然としてしまった。


魔銃が! アルマ・ルージュがそこにあるじゃないか~!!


その時、突然リビングのモニターが勝手に光りだし

画面には燃えさかる炎をバックに仁王立ちしたベロが写っていた

増悪に満ちたその顔面は焼けただれ、左目は潰れて血が

だらだらと垂れていた。


「シナノ~ッ! お前はやりすぎた! やりすぎたんじゃ~ぃ!!」


そう喚くと 肉が焦げどろどろと血が流れる博士の顔が

モニター画面から少しづつ飛び出してきた。


(嘘だろ 夢だ! 俺はまだ夢の中にいるんだ・・)


だが見ていると床の上にダラダラと垂れたドス黒い血痕が

いくつもできて、あまりにリアルなシーンだった。


体まで画面から部屋の中に出てきた時には、プ~ンと

焼け焦げた肉の臭いまでしてきた

Dr.ベロは残った右目をギョリョつかせて鬼の形相で


「許さん 許さんぞ! シナノ~!!」


こう喚くとこっちに向かってズリズリと近づいてきたんだ。


「やっヤヴァいぞ!  殺される!」


俺は飛び起きるとテーブルに乗ってる魔銃に手を伸ばした

ほとんど同時にモニターから飛び出して実体化した博士も

銃をひったくろうと手をかけてきた。


それで、銃の奪い合いになったんけどなんて力だ 

死にかけた老人のはずなのにゴリラみたいなパワーだ

すぐに魔銃を引ったくられてしまった。


「死ぬがいい!シナノ~ッ! ガっハハッ グハハハハハっ~w」 


Dr.ベロはそう云い放つと勝ち誇って笑い出した


(やっ やられる! もうダメだ~!)


おれは目をつぶって覚悟した。


「カカカッ! キキキッ! 」 


(あれ!? 変だな・・ 

ベロの奴は笑っているばかりでちっとも撃ってこないぞ)


薄目を開けて見るとDr.ベロは俯いたまま、まだ笑い続けている

だけど、だんだんクスクス笑いになり、もうどうにも

耐えられない様子で腹筋を押さえはじめたんだ。


「ばぁ~~っ! ククククッ!」


突然、顔を上げた博士を見て俺は呆気に取とられたんだ

その顔には火傷も傷もなんにもなかったんだよ!


そこにはサバゲフィールドで飄々として煙草を吹かしてる

いつもの源さんが(・∀・)ニヤニヤ笑って立っていたんだ。


「ブふふふっ! いや~スマンスマン! シナノくん 

驚かしてしまったねぇ 正直スマンかった!


だけどね、君は合格したんじゃよ! 合格おめでとう」


「はぁ?? 合格!?? 」


俺は目が点になり、頭がクラクラしてその場にへたり込んでしまった。

姿容(すがたかたち)は変わらないがドクターベロはまるで

別人となってニコニコしながら、親し気に話しかけてきた。


「混乱しているのはよく解るよ 

 君にはもっと詳しく話しておかねばならんよね


私が悪のマッドサイエンティストというのはもちろん嘘なんじゃ

じゃがドクターベロの演技、なかなかのものだったと自負しとるよw


おっと失敬! そういえば自己紹介が遅れたねぇ、私の本当の名前は 


おシマゑξбДб नहीं ∮^ ᛣ ^u ᛋ ηζമ ന മρ`Ω´रास्त (∇∇=Δ)


といっても、君たち地球人には正しく発音できないだろうから

まぁそうだなぁ うん! イイモ~ン星人のベロとでも呼んでくれたまえ 


なんならドクターベロでも、源さんでもちっともかまわんよ

もっとも、いまではほとんど精神体となっておるがねぇ(笑)」


(イイモ~ン星人ってどんなネーミングセンスなんだ・・)

そう思ったけど、上機嫌で話すベロに今の俺は言い返す

元気もなくて、適当に相槌を打つしかなかった 


ここから、イイモ~ン星人のベロは真顔になると話を続けた


「いいかね シナノ君! 

いま宇宙 特にこの銀河系はとても荒れてきている

地球だって狙われているんだよ 君もみたじゃろ


チャンシー星人の暴虐ぶり! それだけじゃないんだ

あのチャンシーの他にもじゃね、ロスキン星系軍なんか

IPEOM/InterPlanet Elliptical Orbit Missile 

惑星間楕円軌道ミサイルを平気で打ち込んで

そりゃ好き勝手に、やりたい放題の無法者なんじゃ 


じゃがなぁ~ワシらは銀河間協定などいろいろと煩くなってねぇ

直接的な介入はできなくなってしもうたんじゃよ

こんな時に侵略を押さえるはずのUniverse Nations/UN

宇宙国連もすっかり役立たずになってしもうた


だから魔銃の様に、こうして武器援助とかしかできん


しかしだね、チャンシー星人らと戦える武器はとても強力だ

なんしろ少数でやつらを圧倒できなくてはならんからね


そのために銃とアダプト適合する能力を持つものが

宇宙中の種族から選抜されとるんだよ

そして、君はTerrarian Adapter(地球人のアダプター)

適合者として選ばれたわけだ


こうした銃も初期に開発されたモデルでは、アダプターは

数百万人に一人程度だったんじゃがね

そのアルマルージュ21型くらいになると10億人に

一人くらいと言ったのは本当のことなんじゃよ


だがなにより能力より、その者の精神が問題なんだ

いいかね、兵器や武器はそれ自体は決して悪ではない


問題はそれを使う者の心なんだよ


君の国の伝統的な刀にも活人剣というのがあるが

武器は弱き者を守る為にこそあるんじゃよ


だから強力な武器になる程、人もまた選ばれる


君は全ての課題をクリアし最後の試練に打ち勝った


この名誉を讃えて "COsMic BAttle Trooper/COMBAT

コンバット"の称号を贈りこのアルマ・ルージュの

正式なオーナーと認める!」


俺は仰天して立ち上がると叫んだ。


「えぇ~! コスミックバトルトルーパー 

略してコンバットぉ! かっ かっけぇ~! いいんですか!?」


「うむうむ もちろんじゃよ 今日から君は"COMBAT信濃"として

チャンシー星人たちなんかと戦い、あちこちの世界を救うんじゃ」


そういうとベロは服のポケットからなにかキラキラ光る

ブレスレットみたいな物を取り出した。


「このモンクルージュをCOMBATの証としてシナノ君に贈ろう 


これはね、他の人には見えない特殊なクリスタルを

はめ込んだリングでいつでも我々との交信も可能だし、

アルマ・ルージュとも会話ができる便利グッズじゃよ

まぁ、いままでは仮免みたいなもんじゃったな


いまはまだレベルが低いが、もっと経験値を積めば

惑星間誘導弾/IPGMを迎撃できる拡張キットとかも

用意してるからね

そうなったら、いつもの宇宙宅配で送らせよう」


(すごいな なんか最終兵器 俺!! みたいになっちゃうのかな・・)


俺は待ち受ける新たな運命にワクワクしてきた


PS

というわけで "COMBAT信濃"誕生秘話

おつきあいくださって、ありがとうございました!


えっ!? ああ 魔銃の奴も元気でやっていますよ

ちゃんと会話できるようになったんで、こんな感じです


アルマ・ルージュ

「しっかし、あの戦争がここまで拡大長期化する

なんて最初はマジで思わなかったスよねぇ


ちょっとビビりましたよww ところでシナノさんは

今後の展開 っうかぁ~その辺の読みはどう思ってんスか?」


う~ん ここまで言葉が上達するとは思わなかったな・・


COMBATとしての戦いはとても暗く冷たい、やってみると

これがなかなか大変だったけど、決して強制された事じゃない

自分で選んだ生き方なんだからね


こうして、俺は果てしなく続く異世界ヒーローの坂道を上り始めたんだ。


END

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arme- rouge アルマ・ルージュ 魔銃を手に入れたら、別世界で最強兵士になりましたが何か? 大国誠 @hamayaxfv01

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