第24話 対立

俺はギョっとして、声のした方に振り向いた。


なんと、そこにいたのは源さんじゃないか!


「ええっ!? 源さん!?

なんでぇ? なんであんたがこんなところにいるんですか!?」


俺はビックリして大声で叫んだ!


「カァカカッ! ワシの名はドクターベロ!


君が魔銃と呼んどる、そのアルマルージュの製造者

まぁ~ いわゆる天才科学者ってやつだな」



(いつもサバゲフィールドをウロウロしている源さんが

天才科学者だったなんて!

本当に嘘みたいだな・・ でもそれならこんなところに

魔銃が置いてあったことも説明できるもんなぁ・・)


そう言われれば、ドクターベロは源さんがいつもしている

得たいの知れないゲリラみたいな身なりではなくて、

何か銀色に光るしっとりした繊維でできたスーツを着て

秀でた額に鋭い眼光をしたまるで別人だった。


「ところで、どうだったね? その銃の威力は?」



「そりゃ、ものスゴイ性能ですよ!

これがあれば世界のどこの軍隊と戦っても負けないでしょうね

下手をしたら世界を滅ぼすことだってできるんじゃないですか?」


ドクターベロは俺の感想を聞くとボサボサに伸ばした白髪頭を

大きく動かして頷きながら、満足そうに微笑んだ。


「うむうむ、 そうだろう! そうだろうとも


だがね その銃にも実は欠点があるんだよ

その・・誰にでも使いこなせるわけじゃないんだなぁ


一種の生命体といってもいいレベルに達しているんでねぇ

移植と似たような構図なんだが、ほとんどの者がAdapt/

適合することができず、銃に拒絶されてしまってね


銃本来の持っている100%の性能を引き出すことができないんだ

そこでだ・・ シナノ君を約10億人に一人の

Adapter/アダプターとして選んだわけなんだね


当初の私の想定より思った以上に適合してくれたよ」


そう言われて、俺はすっかりうれしくなってしまった。


「ほんとにすごい銃です 俺アッチの世界で

ヒーローになれました!」


「ハハハハハッ ヒーローかねw それはよかったな

もちろん、こちらとしても君の活動は逐一、

モニターさせてもらったよ」


ピッポッパァ!


ドクターベロが幾つかのスイッチに触れると

キィミョーンナ村の長老たちの姿がアップで写された。


「なになにぃ! シナノ様はどこを探してもおらんじゃとぉ!

正義を貫いて祝勝会の前に消えていかれるとはのぉ~


むむぅ~・・ あの方こそ、無償の愛を持った真の英雄! 

いや まさに救世主じゃ!!」



「あの~それは誤解です! 長老さん! 何かの手違いです

祝勝会の予約は取り消さないでぇ! らめ~っ ><!」


俺はモニターに向かって大声で叫んだ! でも無駄だった・・


「クククッ まぁヒーローごっこもいいだろう

しかしだ いいかね? シナノくん 


いま君は総統にも、大王にでもなれる力を手にしているんだよ


全人類の中で1/10億の存在であるアダプターの君がいつまでも

あんな会社で、冴えないモテない勤め人でもなかろうに


さぁ! 君も大王に転職して人類を支配してみないかね?」


そう言いながら、ドクターベロが手の平を広げると

その上にホログラフィの地球儀が浮かび上がった。


そして、くるくると回る地球を指さしながら


「そうだな~? うん! とりあえずユーラシア

君にはこのユーラシア大陸をやろう


どうだね? 広々として申し分なかろう

金でも、女でも好き放題だよ さぁ、受け取りたまえ」


俺はあっけに取られてしまった

それに申し出の内容の凄さより、

せっかくのヒーロー気分を壊されたことに

腹が立ってきた。



「博士、あんたは間違っている!

それじゃ、チャンシーのやつらとどこが違うって言うんだ」


そう聞くとドクターベロは頭を振り、

肩を竦めるジェスチャーをしてみせた。



「あんな暴力的な連中と一緒にされるのは心外だよ

やつらは、ただ殺して何もかも奪っていくだけだ 

ワシは今よりずっと上手くコントロール

してやろうといってるんだが・・


ふ~ん 君は思ったより頭が悪いんだなぁ、

ちょっとがっかりだ

まさか本気でヒーローごっこに夢中になってしまうとはねぇ

仕方ないな・・ではプランBでいくとするかな」


「プランB?」


「ああ 君のクローンを作り脳内に刷り込みをしたうえで

この量産型の魔銃を持たせる」


そういうとドクターベロは魔銃とよく

似た別の銃を取り出した。



「性能はそのプロトタイプより幾分劣るが生産性は高い

なに それでも性能は十分だよ 

この星程度ならねぇ クククッ」


(俺のクローンを勝手に作り世界征服させるだって!?)


「ふっ ふざけるなぁっ!!」


俺が咄嗟に魔銃の銃口を向けたので、

博士も量産型の銃を向けてきた


ズババッ!!


だが俺の方が速かった だけどいつもなら

外れるはずの無い弾が

なにかの理由でドクターベロの周りで捻じ曲げられ

博士の肩越しに後ろにあった壁の機械類に命中したんだ。


グュバァーン! グォォオオ!



凄まじい爆発と共に装置類から紅蓮の炎が噴き出して、

ドクターベロの体はアッという間に炎に包まれた。


ジュウジュ~



肉の焦げる悪臭と真っ黒い煙に俺はむせた

ドクターベロは恨めし気に俺を睨むとなにか呟いていたが

力尽きて、どさりと床に倒れ込んだ。



(あっ!! あの目はっ!? あの焼け爛れた顔は

異世界で見た悪夢の姿だ

あの夢はこのことを告げていたのか・・)


ズザザァー! ガバババァーン!


爆発が酷くなった、おれは慌てて洞窟から逃げ出した

だけど落盤が起きて、そのまま土砂にうずまってしまった。





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