【魔界遺産】竜騎士と勇者騎士(2)【レグ×プラ】

「ほい」


 横たわったままのジークの顔に、拾ってきたテンガロンハットをポイッと乗せた。


「ああ、サンキュ」

「爆風で飛んでったのかな、あっちに落ちてた。それにしてはどこも焦げてすらなくて……あの灼熱の爆心地で???」


 自分で言ってて不思議になってきたのでジークからテンガロンハットを奪い取って観察する。


「なんか特殊な加工でもしてあんのかな」

「ヤミがよこしたんだぞ? ちなみに輪ゴム銃の方は二丁とも消し炭になった」

「ますますおかしい」


 装備者のジークがこれだけ重症なのに、装備品自体の耐久力がなぜか高い。装備をしても防御力も攻撃力も上がらない。なんのための装備だ?


「なんか防御魔法がかけてあるな」

「俺じゃないぞ」

「わかってるよ」


 興味をなくしてテンガロンハットを返したついでに、ル・シリウスは自分の持っていた輪ゴム銃もジークに渡した。


「あげる」

「なんでだよ」


「オレットちゃんたちと会ってちょっと思い出したんだけどさ」

「おお。ソレイユは噂通りの美女だった」

「太陽魔界に伝わっていた魔導錬金術でさ、アタシはアタシの神銃エトワールを実はずっと持ってたらしくて。こんな最弱ランクの玩具はもういらないの」


「マドーレンキン……」

「いいよ意味はわからなくても」


 ル・シリウスはジークの驚異の回復力を観察した。


「これだもん、回復魔法なんかいらなかったわけだよね」

「なんで自動で治るのか実はよくわからん」

「ヴァインがさっきジークのこと竜騎士って呼んでた。多分竜の血を浴びて不死身になったジークフリートのことだと思う。背中に張りついていた葉っぱのせいでそこだけ竜の血を浴びてない」


「お前、じゃあ最初から俺の弱点知ってたのか」

「最初からじゃないよ。そーなのかなーと思って試してみただけ。ジークフリートは魔界の住人じゃあない。人間界の伝説だよ。いるとは思わないじゃん。なのになんでヴァインは識ってたのかな」


 ふしぎがまだまだいっぱいあって、ル・シリウスはぼんやりと星の海を見上げた。


「我が答えてやろうか」


 ゴルダが意外にも気さくに話しかけてきた。こんな庶民の小娘なんかに声かけてくれるんだこの人。


「霊子の情報だ」


 ぼんやりとしていたル・シリウスの脳に、ビリリと電撃が走った。霊子。聞いたことのない言葉。誰も今までこと口走らなかった。霊子。なんぞ。


 ル・シリウスが目の色を変えた。満足そうに笑ってゴルダは続けた。


「世界には物質を司る元素、それらに働く魔力、そして霊子が存在する。例えば肉体の一部を他者に移植した際、元の持ち主の記憶や能力、感情などがそこに宿っていることがある。それが霊子だ」


 ジークも片手でテンガロンハットを少しずらして目を覗かせた。


「魂は霊子でできておる」


「じゃあ皆に霊子ってのがあるの」

「そうだ。そしてそこに刻まれている情報を、我らは読めるのだ」


「我らっていうのは……誰と誰?」


 ル・シリウスの胸がドキドキと高鳴る。


魔界創造者級クエストクラスの魔王、ならびに同程度のセンスの持ち主だ。我とディープ、ヴァイン、あの小魔界の役人の男──アカシックレコードに入り込む魔天狼。ソチもいづれ到達する」


 驚きと喜びでル・シリウスが一気に顔を輝かす。これは大きな前進だ。また一歩、マスターへと近付く架け橋だ。


「何事もそうであるが、何かを不思議に思う時点で、気付き始めているということだ」


 ル・シリウスは小さな自身の肩を強く抱き締めた。



「かのシャインも資質がある。ヴァインの血を継いでいるからか。成長が楽しみだ」

「でも出会い頭にぶっぱなしてきただろ。本気で殺す気だった。霊子ってのがあって情報が読めてるならそうはならねえんじゃねえのか」

「耳が痛いな。昔よく送り込まれてきた刺客はそのほとんどが血縁者だ。太陽一族内での潰し合いであったから当然と言えば当然。シルヴァンスの血を受け継いでいるからといって、シルヴァンス本人でない以上我が味方とは思うまい。問題があればあとからまた我が召喚すればよい」


「あの。ゴルダ様は。アタシの。マスターとか」

「ふむ」


 かつてアンドリュースは裏技も駆使して尚マスターの情報をみつけだせないと言った。霊子を読めてもそんな簡単じゃあないのかもしれない。それでも聞かずにはいられなかった。


 じっとゴルダがル・シリウスの目を見て、やがて笑った。


「なかなか趣深いな」


 一度そう呟いてゆっくりと首を横に振った。


「これは一筋縄ではいかない問題ぞ。太陽魔界を復活させるなんて容易く思えてくるわ」

「むずかしいってことは承知の上で、おしえてほしいんだよ」

「可能だ」


 心臓がひっくり返りそうだった。


「ソチのマスター、レグルスを世界に喚び戻すことは可能である」




✂︎-----------------㋖㋷㋣㋷線-------------------✂︎


【レグ×プラ】


「言質とった!! 魔法使いプラウです」プラウ

「俺こそが噂の戦士レグルスだ」レグルス


「これはとんでもないことになってきましたよ! レグルス」プラウ

「ああ。これまで意訳で絶対無理しか言われなかったのについに出来ますけどねみたいなエリート様が登場したってことだろ」レグルス

「言葉に気をつけてください。ゴルダ様は太陽最上級の絶対王者です」プラウ


「プラウは霊子って知ってたか」レグルス

「知ってたらこんな苦労してないです。なぜアルファルドの教えにそこも含んではくれなかったですか」プラウ

「まあ到達する者には言う必要ないし、到達しない者には言っても無駄だし」レグルス

「ガッデム。正論の槍をへし折ってやりたいです」プラウ

「けどそんな霊子なんか知らない同士でもこうしてちゃんと出会って繋いだんだ。逆にすごいことなんだぞ」レグルス

「僕より賢そうにするのやめてください」プラウ


「とにかく。ちゃんと進めてる。偉いぞル・シリウス」レグルス


「本来ならレグプラで僕が『霊子とは』について熱く語って噛み砕いた解説を披露したいところですがいかんせん初耳すぎたので無理でした」プラウ

「本編が頼りだ」レグルス


「これからも「『再見』」」レグプラ




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魔界遺産 叶 遥斗 @kanaeharuto

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