第13話 ギルド3

 その後、ユリアさんに挨拶しに行った。

「ユリアさん、何から何までお世話になってありがとうございます。その御礼おれいというか…これ、渡します」

 ユリアさんが紙を見たら、

「こ、これって水の符術!?」

「昨日2人でいろいろ話し合って、このくらいしかお返しが出来ないんですけど…」

「そんなの気にしなくていいのに…」

「そう言われても…これを貰って何も渡さないのは…」

 と、俺はネックレスを出して

「じゃあ、これはみんなで使うね。これ、1つもない所もあるから…」

「みんな?」

 俺の疑問にアリーが

「符術は紙のままだと使いにくく、何かにつけて使うの。例えばこれだと、外で何かの棒に着ければ手を洗ったり、水を汲むのがラクになるの」

「そうなんだ…まぁ、みんなの役に立つなら良かった」

「これがあるだけで、この町も少しは生活が楽になると思うから…ありがとう」

 ちょっと変な別れ方になったけど、ユリアさんは嬉しそうな表情をしてくれた。


 それから、アリーによってギルドへ案内された。

「すいません、ギルド登録をしたいんですけど…」

「はい、登録ですね。この紙に記入してください」

 2枚の紙を出して来たので、

「あの…登録は俺だけです。アリーは登録終わってます」

「すいません…それじゃあギルドカード出して下さい」

「どうぞ」

 アリーがカードを出して渡し、水晶玉にあてた。

「はい、ありがとうございます。大丈夫です」

「すいません、書き終わりました」

 受付嬢に紙を渡しながら、アリーにさっき何をしたのか聞いてみた。

「アリー…さっき受付嬢にカード渡してたけど、何してたの?」

「あぁ、私が何か犯罪行為してないか、新規に登録者を連れてきた場合はみんな必ず調べるの」

 それって…。

「はい、ありがとうございます。次にこの水晶玉に手を置いて下さい」

「これは何をするものですか?」

 俺は不思議に思いながらも素直に手を置いた。

「これは登録者が犯罪行為してないか調べてるの」

「あぁ、両方調べないと意味ないですからね」

 俺がそう納得しながら答えたら、

「これが何か分かるの?」

「あぁ、ユリアさんにいろいろ話を聞いたので…」

 そう、アリーに答えたら

「えっ!?今、なんて?」

 逆に受付嬢が驚いたようだった。

「いろいろ話を聞いた?」

「いえ、人の名前の方です」

「?ユリアさんがどうかしたんですか?」

 不思議に思いながらも、受付嬢はおそるおそる

「ユリアさんってもしかして…A級冒険者の『野薔薇』?」

「あ、はい。そうです」

 そう答えたら、真っ青になった受付嬢が

「ギルド長ー!!」

 と、言って走りどっか行ってしまった。

 あー、ビックリした。

「アリー、ギルド長って…」

「ギルド長はこの町のギルドのトップの事だよ」

 小声で話してるつもりだったけど…、周りがシーンとして俺たちの声が響いてしまった。

「えーと、もしかして何も知らないの?」

「ユリアさんから聞いたのは冒険者登録、パーティー登録、ランクの事だけで……さ。それ以外は…朝少しアリーに聞いただけしか…」

「そうなんだ」

 俺がアリーと話してたら、1人の背が高い青年がやって来て


「ちょっとこっち来てくれ」

 問答無用で連れていかれた。

「あの俺、何かしました?」

「いやそうではなく、あそこで話す内容じゃないから」

 そんな話をしていたら

「ここだ、入ってくれ」

「驚かせてすいません、『野薔薇』がこんな所にいるとは思わなかったので…」

「あぁ、確かにあそこで話す内容ではないですね」

「『野薔薇』のユリアを知ってるって本当か?何か証明できるものはあるか?」

「えっ、はい。この町の町長さんですから」

「町、町長さん!?」

「えぇぇ、こっちに来てから町長さんの所に挨拶行かなかったんですか?」

 普通、始めて会う人には挨拶をするものだと思うんだけど…。


 ギルド長と受付嬢はユリアさんが此処ここにいることを知らなかったみたいだ。

「まさか、こんな場所にいるなんて…灯台もと暗しとはこのことだな」

「あの…アポとって会いに行けばいいんじゃ…」

「そうしようかしら…」

 ギルド長と受付嬢が感傷に浸ってるけど、

「あの、俺の登録をして欲しいんですけど…」

「あっ!ごめん、すっかり忘れてた。ギルド長、もう此処ここでやってもいい?」

「まぁ、登録する前に連れてきたのはこっちだし…」

「すいません…後パーティー登録もお願いします」

 と、俺は恥ずかしく俯いてると

「パーティー登録はこの子と二人でということ?」

「はい、そうです」

「分かった。パーティー名はどうする?」

「パーティー名?」

「どうしようか…」

 うーんと、悩んでいると…。

「おい、お前の名前はなんだ?」

「え、ランティスです。ランと呼んでください」

「俺の名前はレオだ」

「あたしはテスラよ」

「ランはなんか隠してるだろ?」

「え、まぁ。でもみんな知ってるし…ってギルド長は此処に来たばっかりですか?」

「あぁ、半月前に…」


 考えてみたら普通は昨日の段階で噂になっておかしくない。

 でもみんな俺の事情を知っているのでいつも口を継ぐんでくれてる。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る