第12話 ありがとうの毎日


 意識がはっきりしたときには、いつもの自分の部屋で寝ていた。

しっかりとパジャマを着て、ベッドに横たわっていた。時計を見ると8時をさしていた。さくらはゆっくり起き上がり、会社へ行く支度をする。いつもの毎日だった。

 何となく、帰ってくるまでの意識はあったものの、夢の中をふわふわと漂うようだった。けれど、しっかりと鹿児島土産のさつま焼酎スイーツの黒伊佐リモーネを買ってもいた。あれは、自分でも良いチョイスをしたと思う。会社でも人気だった。

 あれから、いつもと変わらない毎日だけど、自分自身の気持ちが少し明るくなった気がする。夕日を見て感傷的になることもなくなった。今は、夕日を見るときは、幸せな気持ちで見たいと思う。


 帰りにコンビニに寄って、おにぎりを二つ買った。

レジではお釣りを受け取って、笑顔で「ありがとう。」と言えた。

いつもと変わらないけれど、自分の中の何かは確かに変わっている。

 コンビニを出ると風が吹いた。気持ちの良い風だった。

もしかしたら、春も近いのかもしれない。

 さくらは風に揺れるストラップを見ると、微笑んだ。


「こんなとこにいたんだね。」


それは伊佐の”イサキング”というキャラクターのストラップだ。

そして、それはヒノキの樹を掘って造られていた。


「ありがとね。」


さくらがそう言うと、光の加減か、イサキングはそっと笑ったように見えた。



さくらはそして、歩き出した。




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伊佐ノスタルジア nandemo arisa @arisakm

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