第42話⁂事件の真相!最終話!⁂


章は妻から離婚宣告を受けた。


妻に男の影を感じた時から、俺は妻の気持ちを自分に引き戻そうと、ワザと浮気の真似事みたいな事をして、鈴子に女の存在をチラ付かせていた。


昔から鈴子は嫉妬深くて、通り過ぎる女性に目が行っただけでも嫉妬する、そんな可愛い女だった。


俺は男の影を鈴子に感じ、一度は強く怒鳴ったが………。

その後も鈴子の何気ないしぐさや、虚ろな眼差しから、得体の知れない男を感じる事は容易だった。


だが………余りにも、自分の計り知れない……遠い眼差しに………自分は完全に置いてけぼりにされ・・・

そのまなざしの先には俺ではない…別の……男の影を強く感じた。


それは、鈴子が余りにも魂が正直すぎるからだよ…………。


嗚呼どうしよう?・・・どうしたら戻って来てくれるんだ!


鈴子は一度こうと決めたら、絶対に翻らない性格だという事を、俺は……痛いほど分かっていた。

もし鈴子が「別れて頂戴!」とでも言ったら、俺は……俺は……それこそ、死んだも同然。


そんな言葉を聞きたくないばかりに、最後の悪あがきで・・・女の影をチラ付かせ、また昔のように嫉妬に狂って、泣き付いて来る事を願っていた。


ああああああ!だけど……だけど……遅すぎた!


あの時素直に、プライドも何もかも、かなぐり捨てて、カッコ悪くても、見苦しくても。自分の恥も外聞もかなぐり捨てて、鈴子に泣き付けばこんな事にはならなかった。


俺は鈴子を失う事が何より怖かった。


それなのに、やっぱり続いていたのだ。

あの男とあれだけ関係ないと言っておきながら、今更『あなたとは違う。優しい人』だと~?ウゥッ!許せない!許せない!許せない!


そして……今鈴子は、脱皮した白蛇のように、もう何十年も営んで来た夫婦関係を何のためらいもなく、いとも容易く切り捨てようとしている。


俺だけが置いてきぼりかよ~?クウウ( ノД`)ウゥウッ……

行かないでくれ————————ッ!😭


◇◇◇◇◇◇

二〇十九年三月某日の大火に見舞われる二ヶ月前に、佐々木家に愛人留美の姿が有る。


「鈴子さんは、章との離婚をお望みなのですね?それでしたら自分から言い出した事、分相応な養育費と慰謝料を貰ったらサッサとこの家を出て行って下さい」


「嗚呼~分かったわ!でもね?大和には長男として、この家の跡取りとなって欲しいの!だから息子の大和はこの家に残していくから!将来は〔佐々木不動産〕に関わって欲しいの。当然でしょう」


「それでも…私にも章との間に出来た息子翔がいますし?」


「その条件をのんで貰わなければ、離婚に応じられません!」


「分かりました。大和君はこの家に残るという事で結構です。お嬢さんの花ちゃんはお母様が引き取られるのですね?」


こうして鈴子は娘の花を連れて、結婚を懇願する理事長の田中との結婚も視野に入れて、田中との同居生活に入った。


だが、登校拒否で家庭内暴力の大和は益々荒れ狂って、手の付けられない状態。

親にもっと律して欲しくて、そのはがゆさから苛立っているのに、益々意図する方向と反対方向に向かう両親の余の身勝手さに、益々憤りを抑えられない大和。


留美はやっと愛する章と結婚出来る。

そう思ったのも束の間、こんなとんでもない息子の面倒を見なければならない羽目になり、毎日が悪夢の連続。


可愛い息子翔に、いつトバッチリが飛んで来て、大怪我に合うかヒヤヒヤもので、生きた思いがしない毎日。



二〇十九年三月某日の大火に見舞われたあの日、実は余りにも大和の家庭内暴力が酷すぎるので、完全に爆発した留美が鈴子に怒り狂って連絡したのだ。


「手に負えません。サッサと引き取りに来てください。さもなければ家庭内暴力自立支援施設に入所させます」


可愛い息子を、そんな訳の分からない所に入れては可愛そうと思い、早速、娘の花と一緒に佐々木家にやって来た鈴子。

心配で取るものも取り敢えず、大和の部屋に直行して声を掛けた。


「ごめんね!あなたの将来の為にこの家に置いて行ったけど?辛かったのね?一緒にママと生活しようよ?」


「理事長となんか生活できるか?バカヤロ————ッ!」


留美は、食事の準備も有るので、買い物に行かなければならないのだが、このような状態の為、すっかり遅くなってしまった。

もう夕方の五時をとっくに過ぎている。


「アアア――!急がないと!」

そこで三人を残して急遽、四歳の翔を連れて買い物に出掛けた。


すると……そこで……何か……心に……悪魔の囁きが………?

{アアアアア!こんな事が延々続くなんて……耐えられない!・・・今あの三人を消したら全て丸く納まる……アアアアア————ッ!煩わしい!鈴子と大和と花三人が死ねば財産も全部私のもの、夫も翔も財産も私の望むものが全て手に入るワ~!}


もう辺りはすっかり暗くなっている。

「そうだ!今日はあの家族泊まって行くと言っていた。章は出張だし三人が寝静まってから火を付けよう」


精神的にも追い詰められ、自分の尺度を遥かに超えた章との生活に、完全に疲弊して、心が折れて、壊れてしまっていた。


それはそうだろう?

大和が散々暴れまくり、聞くに堪えない暴言の数々。


「お前らなんか出ていけ————ッ!」


「ガキが鬱陶しい!人の家庭を壊しやがって!殺されたくなかったらサッサと出て行け!」


それでも…大和もいつも、こうでは無い。

自分の興味のある話には飛び付いて来て、態度が一変して会話に参加する事もあるのだ。


それが分かっているので、鈴子が大和を説得しているのだが、


その隙に「買い物が有るから」と言って抜け出し、買い物に行こうと思った留美。



だが………?

咄嗟に思い付いたのだ。


{このチャンスを逃がす必要は無いだろう。

あの三人さえ居なくなれば、遺産の分配の必要もなくなる。

全て私と翔のものになる。

このチャンスを絶対に逃がして堪るものか?}


こうして咄嗟の思い付きで、恐ろしい強行に出た留美。

庭の草むしりや、芝刈りをした芝が枯れていたのを、可燃物ゴミ袋に入れてある事を思い付き、それを床下に持って行き、灯油をぶっかけてチャッカマンで火を付けて逃げたのだ。

「ウッフッフ~」


アッと言う間に偽りの愛の巣を、真っ赤な火の手が覆い尽くし、炎の渦にのまれた。

すると……火柱が舞い一枚の家族の肖像写真が舞うように、深夜の佐々木家の庭先に舞い降りた。


家族の肖像写真は……ひらり宙を舞い✶*。✰・ 

火事の勢いで色あせ

セピア色に✶🌠*✰



おわり



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家族の肖像☠ あのね! @tsukc55384

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