第41話⁂火事の真相!⁂


二〇十九年三月某日

絵に描いたような幸せ家族、佐々木家が大火で全焼。

焼け跡から、家族三人の焼死体が発見された。


この家の妻鈴子、長男大和、長女花

この季節は春一番が吹き荒れる、空気が乾燥した時期であった為に、火の回りが早く

あっという間に燃え尽きてしまったのだ。


だが、この火事には思いも寄らない裏が有った。

それは、三〇年前に非業の死を遂げた美しい鈴子の母彩の死が、尾を引いている。


実はバブル崩壊後、経営の悪化で立ち行かなくなった〔SKリゾート〕は、多額の負債を抱えて敢え無く倒産した。


以前から親しくしていた、取引先の〔佐々木不動産〕だけは、今までのよしみで、たとえ経営悪化で悲惨な状態になっても、最後まで見放さないだろうと高を括っていたのだが、意に反して真っ先に取引解除されたのだ。


あれだけ親しくしていた〔佐々木不動産〕に有ろう事か、真っ先に取引解除されて路頭に迷う〔SKリゾート〕社長の史郎。


以前から〔佐々木不動産〕に不信感を募らせていた〔SKリゾート〕社長史郎なのだが、その不信感が恨みに変わるには、時間が掛かろう筈が無かった。


どういう事かと言うと、会社倒産の憂き目にあう数年前に愛する妻の彩が、〔佐々木不動産〕所有の別荘で無残な姿で発見されていたのだ。


大蔵会長と彩両者共に非業の死を遂げていると言っても、恨みは相当なもの。


また、それを加速させる彩の言葉の数々。

度々〔佐々木不動産〕に赴いていた妻の彩がよく口にしていた言葉、会長の異常性。

それは、一つや二つではないのだが、特に感じる異常性、それは昼食時間。


大概は会長と部下『B』と三人での昼食なのだが、会長と二人だけの時に起こる異常性、その時には決まって個室を取るのだ。


{そして会長はどういう訳か、個室で横になるのだが、その時の目付きが異常だと彩は、時折漏らしていた。}


『二人の時は必ず横になり、異様な眼差しで太もも部分を見ているのよ。

きっと私のスカートの中を覗き込んでいるのよ!私何か……?不吉な予感がするわ?』と彩は言っていた。


{あんなに愛して結婚した大切な彩が〔佐々木不動産〕に赴いて、何故あんな山林で変わり果てた姿で、発見されなければいけなかったんだ?}


『俺は、悔しくて!悔しくて!絶対に会長が彩を山奥に連れて行き、強姦しようとしたに違いない?可笑しいでしょう?何故?あんな山奥に行かなければならなかったんだ?』

そう言って雅彦社長に食い下がったが……?


『こっちも大切な父を殺害されて被害者だ!父を返して下さい!』

てんで話しにならない。


『絶対に会長が悪いに決まっている。大切な彩を返せ!その挙句に章と鈴子の結婚にも難色を示しやがって………お互い恋愛だから仕方ないだろう。それをあんな借金だらけの家の娘なんか貰えないだと~?バブル時代には、散々良い思いをさせてやったのに、恩を仇で返すきか?許せない!許せない!許せない!』


近藤家と佐々木家両者はこの事件以来、敬遠の中。


それでも、二〇十九年三月某日に起きた火災事故と、三十年も前の事件とを関連付けるのは如何なものか、とは思うのだが?



只の火の不始末による火事なのかもしれないが?

もし…佐々木家に恨みを持つ近藤家が犯人だとしたら、絶対に変でしょう?

何故?実の娘鈴子と血の繋がった孫たちを、殺さなければならなかったのか?



実は、母の死に不信感を募らせていた近藤家の家族は今尚、母彩の死を受け入れられずに苦しんでいる。


会社絡みの繋がりで、家族共々親しい間柄の〔佐々木不動産〕佐々木家と〔SKリゾート〕近藤家。

その為、章と鈴子は、幼い頃から仲が良かった。

そして、いつしか恋に落ち結婚した。


だが、母彩の死で近藤家は火が消えたような毎日。

母彩を僅か三十代で失うなど到底考えられない事、その恨みは相当なもの。


鈴子は、大蔵会長の異常性を父から嫌と言うほど聞かされていたが、それでも章の事が好きで佐々木家に嫁いだのだが、章にもどこか、冷めた視線を向けていたのかも知れない。



◇◇◇◇◇◇

子育てや子供の受験に追われて、すっかり母が亡くなった日々の辛かった事、苦しかった事を忘れて、只々慌ただしい日々に追われていたのだが、姑のリンダも大蔵会長にかなりの不満があり、大蔵会長の事を常日頃から愚痴っていた。


そんな折、大蔵の二七回忌法顔要が執り行われ、姑リンダと腰を据えて話す機会を得た。

二人の子供が共に有名私立徳豊中学入試に合格して、一息つける状態になったので姑リンダとゆっくり腰を据えて話し合ったのだ。


すると……リンダから開口一番思いも寄らない言葉を耳にした。

リンダも今尚、心のつかえが下りずに、誰かに打ち明け発散したかったのだ。


それから……家族の一員の嫁鈴子には、もし何か不審に感じても、病気の太蔵だから致し方無い、許して欲しいという思いもあり、自分の一番言いたくない、恥ずかしい深い話まで打ち明けてしまったのだ。

また鈴子が、章は大蔵の子供であることはとっくに知っていると思っていたのだ。


「……そうなのよ……私も酷い目に合ったのよ……異常人格とでもいうのか?それで……暫く雅彦と別居していたの。だから?不審に思っても病気と思って許してね……それから…?章が大蔵爺ちゃんの子だって事、聞いているでしょう?姑登紀子には散々いびられるし本当に辛かったわ!」


こうして母の死の真実が、ボヤ~ッとではあるが確信出来た鈴子は、この憤りを誰にぶつけられましょう。


{アアアアアア――――――ッ!汚らわしい!そんな異常人格の章が息子だったなんて?当然祖父であったとしても血は繋がっているが、二親等、親子は一親等、あぁ~!何という事だ!それから……三十年前の大蔵お爺ちゃんと母彩の死は、きっとリンダお義母さんにした事と同じ事、強姦目的であの山林のログハウスに母を連れ込んだに違いない。それが証拠に……母は以前から大蔵お爺ちゃんを異常だと父史郎に愚痴っていた……だが、〔SKリゾート〕もやっと軌道に乗って来たところ、無下にも出来なかった……こうしてあのログハウスで……何らかの方法で強姦しようとして二階に上がって、そして……二人が揉み合って誤って一階の駐車場のコンクリートに頭を打ち付けて死んでしまったに違いない……アアアアアア――――ッ!この悲しみを章にぶつけても、きっと自分の父を死に追いやった、母の見方をしてくれる訳が無い。反対によくも大切な父を死に追いやった!と暴れるに決まっている……アアアアアア―――ッ!この腹立たしい気持ちを誰にぶつければいいの……?許せない!許せない!許せない!}


それでも…鈴子が一番ショックを受けたのは、結婚してこの家に入った日から、この家の家族全員が、母を死に追いやった憎き奴らだと思っていたが、只一人章だけは絶対に違う。


そう思えたから耐えてこれたのに、一番の味方だと思っていた章が、母を死に追いやった大蔵会長の息子だったなんて、汚らわしい!そんな悍ましい血が章にも受け継が

れている。


章に対して一気に冷めてしまった鈴子。

ある日の夜、章が鈴子を抱こうとした。


すると「……触らないで」


「どうしたんだい?」


「…………」


「分からないじゃないか?いい加減にしろ!」


「母を死に追いやった、あの異常な大蔵会長の息子だとは知らなかった!汚らわしい!触らないで!アアアアアア――ッ!気持ち悪い!」


「お前、よくもそんな酷い事を!」


””ピシャリ””


「ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭私あなたと別れます」


「お前まさか、あの理事長と一緒になるんじゃないだろうな?嗚呼でも?奥さんが居るか?」


「奥さんはとっくに亡くなったの。だから……そうよ!あなたのように私の家族を侮辱して高卒だ!バカ!なんて言わない優しい人よ!サヨウナラ!」


こうして大火に突き進んで行ったのだ。

犯人は一体誰なのか?


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