第39話⁂悪魔の化身⁈⁂
戦争末期で徴兵年齢が引き下げられた、一九四四年十九歳の大蔵は徴兵検査に不合格。
戦況が益々悪化する中、徴兵検査を受けた大蔵は、視力が極力悪かったため徴兵を逃れる事が出来たのだ。
満は当然の事、居ないものとなって居る為、蔵の一室に閉じ込められて、今も住んでいる。
また極一部の従業員を除いて、殆どの従業員は満の存在は知らない。
大地主佐々木家の従業員の男達は、この時期、つぎつぎに徴兵されていく。
その為、男性に代わって農業や工業をはじめさまざまな仕事を、女性が担っていった。
未婚女性や女子学生までが、動員されて労働にたずさわるようになった。
その為家に取り残されたのは大蔵と満ぐらいだ。
満は、母が犯された現場を見てからと言う者、若い娘にはすっかり興味がなくなっている。
殆どの女達が、出征した男達に代わって働きに出ているので、満より十歳年上のお手伝いトキだけが、佐々木家の家事全般を一人で、いそいそとこなしている。
この日も家族が全員出払っているので、これ幸いに蔵の一室に閉じ込められている満を可愛そうに思い大蔵が、鍵を開けてやったのだ。
そして双子だと気付かれないように、鍵を開けてやった日は大蔵は、バレない様に家を出払っている。
こうして久しぶりに外の空気に触れた満は、何か獲物を物色するかのように、早速ふくよかな胸元と肉付きの良いお尻の女中トキに声を掛けた。
「オイ!トキ、蔵に有るお客様のリストをチェックしているから、お茶とお茶菓子持って来てくれ!」
「はい!大蔵お坊ちゃま!」
このトキは、満の存在を全く聞かされていないので、満を大蔵だと思っている。
「お坊ちゃまお茶とお茶菓子お持ちしました」
蔵の倉庫にお茶を運んで帰ろうとするトキに、いきなり後ろから襲い掛かった満は思い切り首を締め付ける。
「オッお坊ちゃまナッ何をなさるのですか?気は…気は…確かですか?」
苦しそうに懇願する姿を見ながら、じわりじわりと首を絞めた満は、一気に欲望が噴き出しトキを裸にして犯した。
「アアアアアア~!オオオオオオ――――――――ッ!」
一方の大蔵は、父の代わりに二軒先の事務所で、朝からこの日も家の帳簿のチェックに余念がない。
だが、唯一の楽しみ、こんな真昼間から従業員が居ない事を良い事に、酒でも飲もうと家に帰ったのだ。
だが…………。
だ~れもいない?
「オイ!トキ――――ッ?トキはどこだ?トキ―――――――ッ?」
蔵の方から「ギャアァァ―――――――ッ!ギャ―――――!」
と悲鳴が聞こえて来た。
声の方向に進んで行くと、今まさに満がトキを真っ裸にして強姦している最中。
それもトキは、どれだけ酷い暴力を受けたのか、もう抵抗も出来ず、最後の悪あがきで弱々しい声を絞り出して、命乞いをしていたのだった。
「タッ!タスケテー!助けてください――――――――ッ!」
「オイ!満ヤメロ!何をやっているんだ。バカが―――――ッ!」
大蔵は、何とかやめさせようと満を押し倒したが、興奮状態の満はトキと行為に及んでいる所を、大蔵に強引に阻止されて、興奮を抑えることが出来ない満は、力任せに大蔵を思い切り蹴とばした。
尚も果敢に満の行為を引き留めようとする大蔵。
「ヤッヤメロ―――――ッ!」
それでも…自分の意に反して大蔵が襲い掛かって来るので、この欲望を到底抑えきれない満は、{大蔵が例え死のうが生きようがどうにでもなれ!アアアアアア!この血が騒ぐ欲望をどうして抑えることが出来よう!ウウウウウッ!ウウウウウッ!}
余りの興奮状態の満は、ともかく大蔵を黙らせて、堪え切れない欲望を発散したいばかり。
こうして興奮状態の狂った満は、力任せに大蔵を土間に思いっきり投げつけたのだ
「エェ————イッ!」
大蔵は、蔵の階段の角に思いっきり頭を打ち付け即死。
興奮状態の満は、あんなに優しい最大の味方大蔵が死にゆくと言うのに、ともかく身体から湧き上がる、抑えようのないこの欲望の処理が一番。
獣となった満は、首をじわりじわり絞めながら究極のセックスを楽しみ、更に一旦逃げさせ、恐怖におののく姿を目の当たりにして何度も射精するのだ。
「タッタッタスケテ――――――――ッ!」
最後の力を振り絞り逃げ惑うトキに興奮して、更に首を絞めてじわりじわりと殺したのだ。
尚且つその死体を舐めまわして、いたぶり死姦を行ったのだ。
まさに狂気の沙汰。
「ウッフッフ~!アアアアアア―――――――――ッ!」
おおよそ人間ではない、狂った、別世界を生きる人間の皮を被ったケダモノ!
違う次元を彷徨う化け物。
悍ましい神さえもが見放した悪魔。
欲望を発散出来て平常心に戻った満は、ハッと我に返り横を見たのだ。
すると……大蔵がぐったりして頭から血を流しているではないか?
傍に寄って声を掛けるが、全くの無反応、手首と首筋に手を当ててみるが、心拍数が聞こえない、更に体は既に冷たくなり始めているではないか?
「コッコッ コレは大変だ!大切な大蔵をこんな目に合わせてしまって……ナナ何とかしなくては?………そうだ!父が畑に居るから呼んで来よう……アアアアアア――――ッ!それより先にトキの……死骸を何とかしなくては……?俺はなんて事をしてしまったんだ~!興奮して頭が真っ白になり欲望が抑えられず……アァ~なんて事をアァ~どうしよう?トキを殺してしまった……トキ許しておくれ!それから……こんな事が家族にバレたら半殺しの目に合う、片付けなくては……?そうだ!その前にこのトキの死骸を掘ってあった穴に埋めよう」
こうして掘ってあった蔵の穴にトキを埋めたのだ。
何故穴が掘って有るかって?
それは、大蔵が蔵の一室からこっそり出してくれた時に、既に何人かの遺体を……?
元々有った異常性が蔵に閉じ込められた事によって爆発して……。
そして大蔵を助けるために父を呼びに行こうと、大蔵をおぶって移動させようとした。
だが、もう既に4時間以上経過、身体の一部が死後硬直し出してカチンコチンになっているではないか?
思案している間にも身体の硬直は全身に広がり、どうしようもないと観念した満。
{どうあがいても助けようがない。もう完全に死んでいる}
「オッオ俺はなんて事を~!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭大蔵!大蔵!大蔵!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」
身を引き裂かれる死ぬより辛い思いの満は、只々泣き叫ぶばかり。
その時、庭先に車の音がした。
そして泣き叫ぶ音に、何が起こったのか?不審に思った父清が蔵に入って来た。
そこで余りの惨劇に我が目を疑う清だが……?一刻の猶予も無い。
こんな事が従業員一同に知れ渡ったら大変な事。
こうして戦争が一段と激しさを増す中、妻の八重は軍事工場で働いている真っ最中。
どうにも出来なくなった清は仕方なく苦肉の策として、急遽満を大蔵として生まれ変わらせる事にしたのだ。
八重にも全てを話して、戦争のどさくさに紛れて、殆どが家を出払っている真昼間に、遺体を所有する山林に埋めに行ったのだ。
あいにくこの時代戦争の悪化で戦闘モード一色、難を逃れることが出来た。
ヒメバチは、餌食となる虫(青虫など)を見つけ、卵をその体内に産み付け、殺すことなく、虫の体を麻痺させるために毒を体内に注入し、そしてアオムシを生きたまま食べていくのだ。長く生かしておけるように、脂肪分や消化器から食べていき、心臓や神経は最後まで残しておくのだ。
恐ろしいヒメバチの生態が自然神学と大いに矛盾することから、ダーウィンは嘆いて友達に嘆きの書を送ったとされる。
まさに満は、ヒメバチに負けるとも劣らない残虐な、神がもたらした悪魔の生まれ変わりなのだろうか?
それとも……神のいたずらなのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます