第32話⁂母八重の淫らな……⁂


大蔵がもし?非人道的行為を行っていたとすれば・・・それは………?

大蔵の幼い頃の体験が影響しているのかも知れない。

それはどういう事かと言うと・・・・・


昭和初期の事、大地主の佐々木家は、膨大な土地を所有していた。

その為、賃貸経営に大わらわ。

膨大な土地や農地の賃貸管理や帳簿、集金など、仕事は多義に渡るので従業員達も大勢い居たのだ。


この頃の日本は戦争戦争に明け暮れていた。


1894年7月~1895年4月 日清戦争

1904年2月~1905年9月 日露戦争

1914年7月~1918年11月 第一次世界大戦

1937年7月~1945年9月 日中戦争

1941年12月~1945年8月 太平洋戦争


元々佐々木家に、丁稚奉公として小さい頃から奉公してくれていた、佐々木家の従業員の一人安田太郎が、軍人に志願して満州事変で満州に渡ったのだ。


満州事変勃発

一九三一年九月十八日~一九三二年二月十八日


元々この安田と言う男、農家の小作人の息子だったのだが、幼い頃からめっぽう頭の良い息子で、村界隈では神童と持て囃されていた。


親としては何としても、学業を積ませてやりたいと思っているのだが、貧乏な自分達では到底無理。

今日明日食べる物にも事欠く日々。

無い袖は振れぬで・・・親共々諦めていたのだが、

朗報が飛び込んだのだった。


佐々木家にして見れば、戦争戦争で男手不足に手を焼いていた所に、そんな優秀な男子に来て貰えるのならと条件を出したのだ。


「学校に通わせてやる代わりに卒業したら、この大地主の仕事を一気に引き受けて右腕として働いて貰う事!」


こうして十二歳で佐々木家に引き取られて、丁稚奉公の傍ら学校にも通わせて貰っていたのだ。


戦闘モード一色の時代、男子たるもの、如何なる形を取るにせよ、兵役試験に合格すれば出征しなければならない時代。


軍人になり御国の為に一旗揚げたい安田は、佐々木家の当主清に海軍兵学校の志願を申し出たのだ。

最初は難色を示した清ではあったが、根負けして許可を出したのだ。


こうして元々優秀だった安田は、海軍兵学校を優秀な成績で卒業した。



【軍事ブームで競争率は東大より、兵学校の方が高かった。それと、兵学校は軍人の学校。頭脳明晰だけではなくて身体強健が要求されたのでその分だけ難しかった。

ただ、学問的には東大(当時の東京帝國大学)の方が確実に上だった。


なお、一高(第一高等学校)・陸士・海兵ともてはやされていたが、これは中学校を出てから進む学校の三大難関校という意味、東大は更にその上のレベル東大を含む大学校には高等学校を修了してから進むので。】



◇◇◇◇◇◇◇◇


だが………満州事変で安田は、足を負傷して命辛々逃げて帰って来たのだ。


一九三〇年代(昭和五)年に昭和恐慌が発生し、都市も農村もこれまで経験したことのないほどの困窮に陥った。特に農村への打撃は大凶作と重なって大きかった。


昭和恐慌からの脱出過程で、日本の産業構造は軽工業から重化学工業中心へと移行が図られた。都市は徐々に恐慌から立ち直ったが農村の困窮は長引いた。


一九三十七(昭和十二)年の日中戦争の勃発以降、一九三八(昭和十三)年の国家総動員法の成立を経て、国民の生活は戦時体制へ突入していった。


衣食から思想まで統制は生活全般にわたった。


この時期、つぎつぎに徴兵されていく男性に代わって農業や工業をはじめさまざまな仕事を女性が担っていった。


未婚女性や女子学生までが動員されて労働にたずさわるようになった。


その一方、総動員体制の下で人口政策として早婚と多産が奨励された。


戦争末期、戦局が厳しさを増し、食料・物資の不足が深刻になった。


空き地に畑を作るなどの有効利用や代用品などの工夫が求められ、生活は厳しかった。 また、出征や徴用、学童疎開など家族が離れ離れの生活を強いられた。戦争はすべてにわたり多大な犠牲をもたらした。


一九三八年の事である。

この様な状況下、女性は男性の代わりに一家を背負って働きに出ている為。

幾ら大店の奥様であっても、そんな悠長な事は行っていられない時代。

この家の奥様八重が、この家を仕切らなければならない状況下に置かれた。


いずれは、この大地主佐々木家の右腕として働いて貰わなくてはならない、負傷した大切な佐々木家の頭脳安田を、一刻も早く元の状態に戻さねばならないのだ。


負傷した足は、お医者様から「もう治らない!切断するか?びっこで一生通すしかない!」

そう言われていたが、それでも…徐々に治り始めていたのだが、左耳の鼓膜が破れて軍人としての責務が果たせなくなってしまった。


こんな状況下、家に残される事の多かった八重と安田なのだが………?

甲斐甲斐しく我が家の頭脳として働いてくれるであろう、安田の世話をする八重。


時には身体を拭いてくれたり、トイレに抱えて連れて行ってくれたりと、誠にありがたい話ではあるのだが、もう三十六歳の八重ではあるが、若い娘には無い妖艶さと、大店の奥様としての気品と風格の備わった、美しい八重に始終接して貰い、嬉しい反面欲望を抑えることが出来なくなってきているのだ。


それも蒸し暑い夏の盛り、抑えていた欲望の歯止めが利かなくなったのだ。

八重がしゃがんだ拍子に、半袖のワンピースから、何ともふくよかな胸元がゆらゆら揺れて、迫力満点の谷間が””ド~~ン””と目に飛び込んで来たのだ。


蒸し暑いのと…八重の甘い香り……首筋に汗💦と…ほんの少しの後れ毛が…乱れて……一層色っぽい…艶っぽい、同年代には無い・・色気に


興奮して飛び付いてしまった安田。


家中出払っているのを良い事に、とうとう我慢が出来なくなった安田は。

「アアアアアア!ボッ僕は…奥様の事が………奥様の事が……スッ好きだ――――――――ッ!」

海軍兵学校を、合格出来ただけの立派な体格と腕力に、華奢でグラマラスな八重が太刀打ち出来る訳が無い。


あっと言う間に抵抗虚しく身包み剝がされたのだった。

「ヤッ!ヤメテ!止めなさい!」

必死に抵抗する八重。

そして興奮状態の若い男二十七歳の安田は事に及んだのだ。


何という事を!

今日は友達のお父さんに連れられて、友達と河原に魚釣り行ったはずの大蔵が、早々に帰って来ていたのだ。

そして獣になり下がった安田の悍ましい姿と、母八重の痛ましい姿を、目の当たりにしてしまった。


愛する母の狂気に震える淫らな姿と、男の欲望の凄さと、只の動物?イヤイヤ獣となった、男の恐ろしさと迫力に、只々成す術もなく、うろたえる不甲斐なさに、母が可哀想だと思うのと同時に……十二歳の大蔵は下腹部の股座が熱くなってくるのを覚えたのだ。


ズボンの中はジュクジュクだったが、その行為を母を守らなければと思う以上に、快楽が押し寄せて来るのであった。


実はこの光景は二年以上前にも目撃していたのだ。

その時は、まだこんな今のような戦況状態では無かったので、女中が帰って来て事なきを得たのだが………。


きっとその時も、母を助けたいと必死だった気がするが………?

幼過ぎて………

それ以上に・・・言いようのない興奮?

異常性愛体質は、もうこの時に始まっていたに違いない・・・・・








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