第30話⁂リンダを付け狙う影⁈⁂
リンダが、雅彦と別居して勤め出した頃の事だ。
勤務先〔レストランFarm garden日間賀島店〕から自宅のあるマンションの行き帰りに感じる影と不気味に鳴り響く靴音。
リンダは、最近とみに誰かに付けられている感覚に怯えているのだ。
未だにその正体は不明なのだが………?
やっぱり犯人は社長の横井なのか?
それとも……
あの……思い出したくもない、今なお残る恐怖………あのおぞましい、忌まわしい…あの時の張本人、私を無理矢理強姦した………卑しい義父太蔵の仕業なのか?
いや~?それとも……?大蔵との関係を今尚疑い、追っ手を差し向けて来た姑登紀子の仕業なのか?
いやいや~?やっぱりあの大蔵との一件で嫉妬に狂った雅彦が、探偵でも使って私を探っているのか………?
ある時は仕事帰り、またある時は家にいると誰かに見張られている、そんな感覚に苛まれているのだ。
「一体誰なのか?」
歩いていると感じる不気味な影とかすかに響く靴音。
ある日余りにも頻繁に跡を付けてくる靴音に、気味が悪くなったリンダは、暫く歩いて、人通りの少ない路地に通りかかった途端に、ス~ッと物陰に隠れたのだ。
””コトコト コトコト””段々近づく靴音。
するとその時ふっと通り過ぎる人影が………?
そして薄暗がりの中、その人物をまじまじと見た。
身長は一六五㎝~一七〇㎝くらいのどう見ても、義父太蔵でもなく、かといって雅彦とも随分違う、又横井とも程遠い、男性なのか?それとも………?
大蔵は、身長一七〇㎝弱で六〇代で髪の毛も多少薄くなっており白髪頭。
また雅彦は言うまでもなく三〇代中盤で、身長一七六㎝の今尚綺麗な優男なのである。
一方のその男性らしき人物は、どう見ても三〇代後半~四〇代前半の身長は一六五㎝~一七〇㎝の顔の造りまでは分からないが、細見の紳士風の男性なのだ。
この人物は一体誰なのか?
まだこの時代、コロナウイルス等が発生している訳でも無い時代なのに、冬でも無いのに目深に帽子を被り、マスクで顏を覆っている人物など皆無に等しい時代。
風邪でも弾いていれば別なのだが?
けれどもいつも逃げ足が速いのでハッキリは分からないが、薄っすらとではあるが、見掛けると必ず帽子にマスク姿なのだ。
それなので、男女の性別すら困難なのである。
只女性にしては高身長で短髪な為に、男性と思わざるを得なかった。
犯人は一体誰なのか?
全く犯人の正体が分からない。
只々不気味な影に怯えるリンダ。
そんな時に、リンダはいつもやってくる迷惑な男、横井に目を付けたのだ。
横井は、従業員達の目の届かない場所に有る何とも好都合の、この隠れ家的存在のリンダのマンションに転がり込んで、『ホテルパシフィックOCEAN・内海』に居た頃から夢中になり憧れていたリンダと、なんとしても一夜のアバンチュールを楽しみたい。もっと言うなら愛人にしたい。
この男は、今まで金に物言わせて妻を取っ返え引っ返えして来た、とんでもない男なのだが、美しいリンダに夢中になる余りに横井は、リンダの気持ちも考えずに、妻を捨ててリンダと一緒になっても良いとさえ、考えている独りよがりな男。
要は熱しやすく冷めやすいそんな男なのだ。
こんな男に引っ掛かった女は堪った者ではない。
そんな甘い夢を見る横井なのだが、一方のリンダはなんだかんだと理由を付けて、迷惑も顧みずやって来る横井に、つくづく困り果てて居る。
「有名シェフが手掛けた、美味しい食事の出来るレストランがオープンしたから、一緒に行かないかい?」
「ワインの美味しいのが有ったから買って来た。飲んで!」
頻繫に食事の誘いとプレゼント攻撃で訪れる、煩わしい横井なのだが{そうだ!こんな時こそ力になって貰おう!}
そう思い、今のこの恐ろしい現状、歩いていると感じる不気味な影と靴音の事を、全て話したのだ。
横井にして見れば自分が大切に思っている女性の一大事。
{スト-カ-被害で殺されでもしたら大変!}
心配になりリンダの日常行動を見張ったのだ。
すると早速、後を付け狙う人物の正体を発見。
「エエエエエエ―――――――――――ッ!アアアアアアッ!アレは?‥アレは…!}
真っ青になる横井!
横井が真っ青になったという事は………それは横井がよく知る人物という事になるが………?
それは一体誰なのか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
雅彦は、父大蔵から頼まれていた息子章の現在の現状を、調べ回っていたのだ。
それでも…そんな事は私立探偵にでも頼めば済む事を、会社の公認会計士として忙しい雅彦が何故そんな真似をしなければならないのか………?
それは、大蔵との事であれだけ許せなくて、リンダを追い込み憎んでいた雅彦なのだが、やはりそれでも…別居はしているものの、今だリンダを心から愛している雅彦。
行き先も告げずに姿を消したリンダを愛する余りに、また新しい男でも作るのではと不安で不安で、父大蔵に頼まれたのをこれ幸いに、リンダと章の近況が知りたくて自ら探っていたのだ。
こうして、ゲイだった事が妻にバレて離婚された友達の山崎に、章の小学校を聞き出し、ある日の平日、門の陰に隠れて章を待ち伏せして、出て来たところ跡を付けたのだった。
そしてリンダのマンションを探し出した。
{ああ!こんな分かりにくいマンションだったのか?}
こうして祖父大蔵と父雅彦に、居場所を知られてしまった章と嫁のリンダなのである。
じゃ~?あれだけリンダ狂いの大蔵は、もうリンダの事は諦めが付いたのか………?
イヤイヤそうでは無いのだ。
今でも燃え盛る恋の炎は、決して衰えていないのだが、体調を崩しているのである。
もう六十代の大蔵は、体調を壊し、リンダを探し当てる体力もなくなり、おまけに完全型ED( 性交渉に十分必要な勃起をまったく得られず、持続する事もできない)の為に最近では仕事だけが唯一の生きがいになって居るのだが……。
実は………?
だが、あの雅彦が幼い日に見たポラロイド写真の、若い女性たちのあの恐怖に満ちたあの女性たちは、一体何処に消えたのか?
そこには・・・・恐ろしい・・・
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