第27話⁂彩の自殺⁈⁂


『ホテルパシフィックOCEAN・内海』に到着した雅彦と彩は、まだ夕食まで時間が有る事から、男風呂と女風呂に別れて温泉大浴場に向かったのだが………雅彦が大浴場に向かっていると、一階の宴会ホール琥珀にショ―のポスターを発見。


{エエエエエエ―――ッ!リンダ………リンダのポスター!アアアアアア!リンダのショ―が有るのだ!}


一気に懐かしさが押し寄せて来て、居ても立っても居られず、早速受付で「今日出演するリンダさんの知り合いですが、リンダさんはどこですか?」と訪ねた。

すると「リンダさんはお友達とお出掛け中で、もう直ぐ帰って来ます」との事。


裏口の駐車場付近で待っていると、高級車に乗ったお金持ちそうなブルジョア風の若い男とリンダが、さも楽しそうに帰って来た。


イブサンロ-ランのレザ―ジャケットをさりげなく着こなし、あちこちに高級な腕時計やアクセサリーを、ジャラジャラ付けて居るこの男性は一体何者なのか?


雅彦は、駐車場付近の物陰に隠れてリンダを目で追っていたのだが、このままではまた話も出来ず仕舞いで別れなければいけない。そう思い跡を付けたのだ。


すると…金満家風の男は、リンダと別れてエレベーターの中に消えた。

{常連客なのかな~?}


やっと一人になったリンダに、何故急に居場所も告げずにいなくなったのか?

その理由を聞き出そうと、久しぶりに会った喜びと不安を押し殺しながらも、勇気を振り絞って声を掛けたのだ。


「リッ!リンダ!」


すると……その時、後ろを振り返ったリンダは、雅彦を見るなり慌てて外に飛び出してしまった。

「ドッ!どこに行くんだよ~!マッ!マッ!待ってくれ~!」


リンダにして見れば、あまりにも突然に雅彦が目の前に現れて、ビックリしたのと同時に、あの時のショックな思いが一気に押し寄せて来て、居ても立っても居られず、只無心に逃げたのだ。


どれだけ走ったのか、丁度内海の海岸線沿いの砂浜に来ていた。

波が押し寄せ、きれいな青い海と白い砂浜は、三月末だというのにまだ少し肌寒さを感じるリンダ。


スリムなリンダが肩を小刻みに震わせていると、雅彦がソ~ッと自分のジャケットを肩に掛けようとした。

するとその時、リンダが怪訝そうな顔で「ヤメテ!」


「……寒いかと思って?……それより……リンダどうしたんだい?急に僕の前から姿を消すなんて~?随分探したんだよ!」


「もう終わった事ヨ!私忙しいからもう帰る!」


こうして、さも不機嫌そうなリンダが、そそくさと帰ろうとすると雅彦が「チヨッ!チョット!待ってよ!何故、俺の前から急にいなくなったんだよ?」


怒り心頭気味のリンダは尚もブス~として黙り込む。

「………」


「俺が何か悪い事をしたのなら謝るよ。言ってくれ!」


リンダは、尚も強張った顔で「じゃ~言うけど、雅彦あなたと最後に有ったあの日、私はあまりにも時間が空いたので、いつもの常連のお店が有る✰三光百貨店に、もう閉まっているかも知れないと思いながらも行ったのよ。するとあなたと彩ちゃんが、向かいの大通りを歩いていたので跡を付けたのよ。すると………二人は東京駅近くのホテルに入って行ったのよ。もう思い出したくもないわ!・・・だからもうこれ以上苦しめないで!サヨウナラ!」


そう言い残してリンダは砂浜を走り去って行こうとする。


「マッ!マッ!待って、待ってクレ――――ッ!俺の一時の気の迷いで……こんな事になり……?俺は後悔しているんだ。許してくれ………!彩が?彩が……?会ってくれなきゃ全てバラす………俺が彩と誤ってペッティングまでやってしまった事を、リンダにバラスと脅かすから、あの日も彩に会いに行ったんだ………俺も男だし誘われれば……ついつい欲望が勝ってしまい………ホテルに……行ってしまったんだ………こんな虫のいい話……許してくれないと思うけど………?俺は今でも、リンダお前しか考えられない!許してくれ!お願いだ!」


「そんなこと……?今更信じられない!また二股掛けてダラダラ両方に都合のいい事言って、両方と付き合うつもりでしょう?」


「そんな事言ったらお前だってさっき、お金持ち風の若い男と二人きりで車で帰って来たじゃないか?」


「ウッフフフ!只のお客さんよ!」


「な~んだ?そうか~?・・・イヤ!俺はもうこれで彩と別れる決意が出来た。リンダに全て知られていたのならもう脅迫して来ても、もうこれでリンダにバラされても関係ない!もう彩との連絡を一切断ち切るよ、だから……だから………許してくれ!リンダと離れて見て、改めてリンダの大切さが分かったんだ!お願いだ!あの時言った真剣な気持ちは今も変わらない!戻って来てくれ!」


こうして、この日彩に「緊急の用が出来たから今日は、このホテルに泊まれない。お金は払っておくから一泊して内海観光して帰りなさい!」と言い残して雅彦は帰った。


そしてその数日後、雅彦はリンダとやり直すべく、彩といつもの喫茶店で折り合い別れ話を告げた。


「これからは実務補修所終了の試験が待っている。公認会計士の仕事に打ち込みたいからもう会うことは出来ない。別れてくれ!」


「何を急にそんな話するの?仕事の邪魔は絶対にしないから………それから……?今更、別れられる訳無いでしょう?」


「悪かった許してくれ!もう終わりにしよう」


そう言って彩の言葉も聞き入れずに、百万円の入った封筒の束をテーブルに置き、彩を振り切り喫茶店を後にした雅彦。

そして彩との連絡の一切を断ち切ったのである。


彩は死に物狂いで何とか、雅彦との連絡手段は無い物か、必死に模索し続けるが………?


それから……またあんなにデパート狂いのリンダも、最近はトンと✰三光百貨店に顏を出さないし、雅彦との連絡を完全に断たれた彩は、ショックのあまり食事も喉を通らず、更には夜も一睡も出来ずに、異様な精神状態に追い込まれてしまったのだ。


身体は日増しに衰弱してやせ細り、尋常な精神状態ではなくなった彩は、等々この苦しみから逃れるために睡眠薬を大量に服用して、自殺を図ってしまった。


これは大変な事、一体彩はどうなってしまうのか?
















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