第23話⁂太蔵の異常性と彩への思い!⁂


雅彦はふっと幼い頃の事を思い出した。


俺は、家の蔵で幼い日に妙なものを見た事がある。

確か………?あれは………小学二年生の頃だったと思う?


あの日も例のごとく、悪ガキたちに虐められて泣きながら家に帰ったんだ。


俺は、あの日も父の大蔵が社長を務める会社が、近くに有るのでランドセルを置いてこの悔しい気持ちを分かって貰おうと、急いで庭に出たんだ。

すると庭の隣りの蔵が、空いているではないか………?


ああああああ?これは父が蔵に居る証拠だ!父は骨董品集めが何よりもの趣味で、蔵に調度品や骨董品などの貴重品を多く取り揃えている為に、妻にさえ出入りを禁止しているのだ。


今考えると、何故出入り禁止になっていたのかという事だ。

あの時は、まだ子供過ぎて{どうせ今日も業者から買った、骨董品を蔵に納めに来たのだろう。これは手間が省けた}と思い蔵に駆け込んだのだ。


だけど………?探せど……どこにもいない?

すると………?貴重品を納める木箱の蓋が空いているではないか………。


中を覗き込むと、真新しい若い女性の肖像写真、それもどの写真も「一糸まとわぬ格好」で撮られているであろうと想像出来る写真ばかりだったのだ。



まだ子供だった俺は、そんな事など何も分からず、ただ自分の今のこの悲しみを父に打ち明けたくて必死だったんだ。


その場を去ろうとした時、ヒラリと一枚の写真が落ちて来たのだ。

ポラロイドカメラで撮影されたであろう、チョット厚めの空白部分がある写真。

雅彦は、ふっと目をやりその写真を拾い上げ目にしたのだ。


するとその写真は全裸の若い女性で、紐でぐるぐる巻きにされて、床に寝そべり陰○も露わにカメラに収められているではないか………?


顏は強張り恐怖のあまり命乞いをしたであろう、目には涙らしきものが………?

こんなポラロイド写真からもハッキリと写っている。

余程怖かったのであろう?


俺は、まだ子供過ぎて興奮する感情は持ち合わせていなかったんだ。

多分………?

それより、虐められた悲しさで父を探すのに必死だったんだ。


だがその時………目の前に何か、重要な貴重品を納める金庫の蓋が、ポッカリ開いていたんだ。

俺は興味津々でその金庫に近づいたんだ。


するとその時「オイ!こんな所で何をしているんだい?」

今まで一度たりとも、上げた事の無い大声で怒鳴り散らしたのだ。


「お父さん写真が落ちていたよ!」

父に手渡すと………すると興奮状態で近付いて来た父の大蔵が、思いっきり頬っぺたを叩いたのだ。


一体何故?落ちていたのを拾って渡してあげたのに………

そして父は殴った挙句に、感謝の一言もなく「この事は絶対に誰にもしゃべるなよ!」

その目は子供ながらにも感じる、異常人格者の目に他ならなかった。


俺はあんなに優しく包んでくれる、唯一俺を虐めっ子から守り退治してくれる、正義の味方であり、ヒ-ロ-である父に、このような異常性と狂気じみた、一面が有る事に、只々啞然とするばかりなのだが………。


あの凶器じみた目付き!父に、こんなおぞましい一面が有ろうとは………?

俺は、父の只の虚構の部分しか見ていなかったのではないだろうか?


本当の父の姿は只の異常人格者?

本質を垣間見た気がして、只々涙がとめどなく溢れるのだった。

そして何かが音を立てて壊れていく………そんな錯覚にとらわれるのだった。


子供の頃は縛られているおばさん?お姉さん?位にしか思わなかったが?

あの女性たちは一体どうなったのだろう?


リンダ強姦未遂事件以来、あの女性たちの事が鮮明によみがえるのだった。

あの女性たちは一体誰なのだろうか………?今現在は生きているのだろうか………?

それとも……。


◇◇◇◇◇◇◇◇


リンダと父の強姦未遂事件以来、俺の心に隙間風が吹き始めた。

毎日見る俺のヒ-ロ-だった父と、心から愛するリンダが、よりによってそんな卑しい事をしようとは………?


そんな時に彩が現れたのだ。

俺はリンダに悪いと思いながら、彩の楚々とした儚くも美しい佇まいに、すっかり魅了されて行った。


偶然にも俺の心の穴を埋めるべく、彩の存在が日増しに大きくなるのである。

あの日俺がリンダに会いに来た帰りに、✰三光百貨店で又してもハンカチーフを落としてしまい昼食をする事になった彩と俺。


俺はリンダが居るので、もうこれ以上は絶対に進んではダメだと、強く心に誓っていたんだ。


食事が終わり「今日は食事、付き合ってくれてありがとう!」

雅彦が名古屋に帰ろうとすると。


「あの~私気分が悪くて~?」


「それは大変だ!家まで送るよ!」


「ありがとうございます!助かります」


こうしてタクシーで✰三光百貨店の女子寮に到着した。

小さい部屋だが、六畳程の二人部屋を与えられている彩。

本来ならば男子禁制なのだが、緊急事態の場合はOK。


「俺ここで帰るよ!男子禁制なんだろう?」


すると、すかさず彩が「私気分が悪くて……部屋まで行けないの~、お部屋まで連れて行ってください!」


「エエエエエエ―――ッそれはダメだろう?」


「お願い!」

甘い声でねだられた雅彦は、嬉しい気持ちと、リンダに申し訳ないと思う気持ちの狭間で、今の正直な思いのままに行動に移ってしまったのだ。


早速部屋に入った二人。

相部屋で、二段ベッドになっている殺風景な部屋だが、女の子らしく整理整頓された部屋には、彩が大好きなリカちゃん人形や、猫のぬいぐるみが所狭しと飾られてあった。

もう一人の相部屋の住人は、犬のぬいぐるみや、あの当時一世を風靡した、新御三家郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎の、どうも西城秀樹の大ファンらしく、テーブルの上には所狭しと西城秀樹のフレ-ムが飾られてある。


ベッドに彩を寝かせ付け、そそくさと帰ろうとする雅彦。

すると………いつ起きて来たのか、後ろからふくよかな胸をギュ~ッと雅彦の背中に押し当て抱き付いて来たのだった。


彩にして見れば{大好きな雅彦を、何としても自分のものにしたい!}その一心。


こんな楚々とした控え目な彩だが{このチャンスを逃したら、もうおしまいだ!どんな事をしても私の者に………だって………?だって………?リンダちゃんには悪いけど、私だって命がけなのよ!}


こうして相部屋の住人もいない真昼間に雅彦と彩は、重なり合って………?








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