第22話⁂大蔵の異常性⁈⁂


大蔵は{自分が清廉潔白、律していないと、また母が淫乱女と言われる!}


そう思い友達が、女遊びに誘っても見向きもしないで童貞を貫き通し、二十六歳で好きでも無い不動産関係の良家のお嬢様と結婚したのだ。


{自分の夢、恋愛、行動全てを我慢してでも、愛する母八重につべこべ言わせない為には、自分さえ我慢すれば良いんだ!}全て自分の感情を押し殺し成長した大蔵なのである。


そんな全てを我慢して育った欲望が、あのリンダ強姦に繋がったのか?


いや?それは………実は………蔓延化していたと言っても過言ではない。

雅彦はふっと幼い頃に思いを馳せるのだった。


俺は、家の蔵で幼い日に妙なものを見た事がある。

確か………?あれは………小学二年生の頃だったと思う?


あの日は、例のごとく、又悪ガキたちに虐められて泣きながら家に帰ったんだ。

取り分け小さかった俺は、虐めに打って付けって訳さ。


ましてやいつも周りに女の子が、ウロウロ付き纏っていたから、子供心にも奴らは面白くなかったんだろう。


一九六〇年代から一九七〇年代にかけて、イギリスまたはヨーロッパの映画で活躍した『オリバー!』『小さな恋のメロディ』で、よく知られている『マーク・レスターによく似ている美少年とよく言われたものだ』きっとやっかみも有ったのだろう。


【マーク・レスター(Mark Lester、1958年7月11日 - )は、イギリスの元子役。1960年代から1970年代にかけて、イギリスまたはヨーロッパの映画で活躍した】



俺は、あの日も父の大蔵が社長を務める会社が、近くに有るのでランドセルを置いてこの悔しい気持ちを分かって貰おうと、急いで庭に出たんだ。

すると庭の隣りの蔵が、空いているではないか………?


ああああああ?これは父が蔵に居る証拠だ!父は骨董品集めが何よりもの趣味で、蔵に調度品や骨董品などの貴重品を多く取り揃えている為に、妻にさえ出入りを禁止しているのだ。


{どうせ今日も業者から買った骨董品を蔵に納めに来たのだろう。これは手間が省けた}と思い蔵に駆け込んだのだ。


だけど………?探せど……どこにもいない?

すると………?貴重品を納める木箱の蓋が空いているではないか………。


中を覗き込むと、真新しい若い女性の肖像写真、それもどの写真も「一糸まとわぬ恰好」で撮られているであろうと想像出来る写真ばかりだったのだ。


どういう事かというと、胸の辺りまで何も付けずに撮られている肖像写真なのだ。

要は胸元から下は写っていないのだ。


それも………何かしら………美しい顏を強張らせた………というか………嫌がっていると言った方が正解のような?


そんな意味深写真ばかりだったのだ。

まだ子供だった俺は、そんな事等何も分からず、ただ自分の今の、この悲しみを父に打ち明けたくて必死だったんだ。


だけど………?大人になって考えてみると、あれはまともな写真では無かったのではないだろうか?


ましてやリンダが嫌がるのも聞かずに、家族もよく知っている女性を強姦するなんて………?尋常な人間のする事ではない!(この時は未遂に終わっているが)



◇◇◇◇◇◇◇◇

専門医が接した性暴力者の事例を見るにつけ、性暴力者が共通して抱える家庭的な問題は興味深いものがある。


性暴力を行使した男性は、特に自分の父親に対して強いコンプレックスを抱いている。

これは『刑事司法とジェンダー』で取り上げられている事例にも共通している。


経済的に強い父親と、それに敵わず、愛されもしない「できそこないの自分」という不安定な親子関係のなかで、女性や子供を暴力で支配するという行動は、自らの男性性を確認する手段となり、性暴力行為をはたらいている最中は、父親を男性性において乗り越えているというわけなのだ。


これは決して大蔵が出来損ないであると言う訳ではないが、なんといっても父清は東京大学卒業のエリ-ト。


片や大蔵は愛知県トップクラスの私立大学卒業ではあるものの、このエリ-ト家系では多少見劣りすると言われても致し方ないのだ。


けれども大蔵が父に強い不信感を抱いていた事だけは事実。

この父親清は、仕事に執着するあまりに、妻と息子をないがしろにしている感が否めないのだ。


人一倍繊細で優しい母思いの大蔵にして見れば、父に対する不満は計り知れないものが有るのだ。


母の八重を愛し抜いて、芸者として引く手あまただった八重を、強引に引っこ抜いて妻にしたくせに、結婚してしまえば、八重があんなに虐められていると言うのに放ったらかし。


『許せない!母が可哀想過ぎる!』

そんな鬱積した気持ちが積もり積もっている大蔵なのである。


只々………いつ終わるとも知れない、姑松の異様なまでの母八重虐め。

「芸者上がりの、男をたぶらかす事しか脳の無い淫乱女!」






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