第16話⁂出会い!⁂
一九八〇年代日本経済は留まる事を知らず、急成長の一途辿っていた。
あの時代は、まさか二〇二一年、コロナといい、経済といい、こんな低迷した時代が来ようなどとは誰が想像出来ただろうか………?
あの時代、有名漫画家や有名脚本家の台頭で、キン肉マンやドラゴンボール、ジブリ更には、NHKの朝の連続テレビ小説おしんなどが爆発的なヒットを飛ばし、世界各国で視聴された。
時代の寵児と持て囃され、まさに日本漫画ここにありを地で行く時代。
更には一九七〇年代から一九八〇年代にかけて、日本の家電産業、とくにテレビやVTR、ラジカセなどのAV機器は隆盛を極めた。単なるコスト競争力だけでなく、日本から次々と新しい商品が登場。輸出産業の花形でもあった。
それは当然の事ながら、鉄鋼産業や自動車産業もしかりだったのだ。
只々突っ走ったバブル全盛期。
そんな眩しく光り輝いた日本だったのだが*・✶
あれは只の一時の幻想、あだ花だったのだろうか?
あの眩しかったキラキラ輝いた時代は今はセピア色に――――
活気づいていた時代も時間の経過とともに錆びれ、鮮やかな景色は思い出の中でセピア色の<幻影>になっていく……。
*✿・*。☆⋆
そんなキラキラ輝いていた、一九八〇年代後半のバブル時代。
章も小学生高学年になり母のリンダは、ヨーロピアン風「カフェレストラン・ポエム」を知多半島の高台の海沿いにオープンさせたのだ。
テラス席から海風を感じる、ヨーロピアン風の「カフェレストラン・ポエム」
実は『ホテルパシフィックOCEAN・内海』の頃のお客さんでレストラン界の重鎮、横井氏の後ろ盾も有っての大繫盛なのだ。
一体どういう事なのか?
リンダは夫と別居して暫くは子育てに専念していたのだが、章も幼稚園児で半日時間が空くのだ。
最初の内は趣味の園芸教室や編み物教室に、通い有意義な時間を過ごしていたのだが、習い事教室のお友達は、何かしら仕事を持っているお友達ばかり。
仕事の話を生き生きと話すお友達の姿を見るにつけ、何か社会から取り残された感覚を覚えるリンダ。
{私だってまだ若いんだし、何も家にくすぶっている必要無いわ?}
章が幼稚園に入園してからというもの、何か手持ち無沙汰を感じていたリンダだったのだが、ある朝、新聞に目を通していると、何やら妙に仰々しい、〔レストランFarm garden日間賀島店〕オープンのチラシを発見。
「な~んか?お洒落じゃないの~!一度面接してみよう?」
こうして〔レストランFarm garden日間賀島店〕に連絡を取り、面接に出掛けたのだ。
〔レストランFarm garden日間賀島店〕は愛知県に二〇店舗経営する、今破竹の勢いで売り上げを伸ばしている有名レストラン。
社長の横井氏は、多忙を極め滅多と面接に顏を出す事などないのだが、リンダが面接に行った日は、たまたま出勤していたのだ。
オレンジ色の夕陽に包まれる!愛知県日間賀島の『サンセットビーチ』は潮の香り漂う、夕陽の“穴場”絶景スポット。
そんな絶景が望める場所にある〔レストランFarm garden日間賀島店〕
近くには花ひろば🌺が有り、そこでは、四季折々の花々が咲き誇り✿。
春はストックやポピーに始まり、六月末から花ひろば自慢のひまわりが咲き始める。
また色鮮やかなマツバボタンが咲き誇り、余りの華やかさと美しさで、花の世界に迷い込んだ妖精にでもなったような夢心地の花広場。
秋はコスモス、冬は菜の花摘み*・✶
日本一のひまわり畑では十四万本のひまわりが、幾重にも広がる丘陵一面黄色のじゅうたん。
それは圧巻で一面のヒマワリ畑🌻🌻🌻🌻🌻
夏ともなればサンセットビーチは若者達で溢れかえり、真っ黒に焼けたサ―ファ-達や水着の美女たち、更には多くの家族連れで賑わっている。
この様な現状化、多くのお客様を見込める事から、余程この店に思い入れが有ったのか、社長直々に面接が行われたのだ。
そこに面接に現れたリンダを見た横井氏はビックリ。
{俺が『ホテルパシフィックOCEAN・内海』を度々定宿にしていた理由は、リンダちゃんに会いたい一心で、あの時は「出張だ!」と妻に噓まで付いてワザワザ泊ったものだ………自宅が名古屋市中区だから、帰って帰れない距離でも無いのにワザワザ泊っていたのは、只々リンダちゃんの顏を拝みたかったに他ならなかったのだ。アアア~!会えて嬉しい!}
こうして社長は憧れのリンダに会えた喜びと、これから毎日一緒に仕事が出来る喜びでソワソワ浮足立っているのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
リンダは今日初めて〔Farm garden日間賀島店〕に出勤。
少し緊張気味のリンダは「おはようございます!」
四~五人のスタッフに挨拶し終わり、更衣室に向かおうと階段を駆け上がると、なんと目の前に社長の横井がいるではないか………?
「おはようございます!」
「ああ~おはよう」
{あれ~?社長が毎日各店舗を視察するのは聞いていたが?何故こんな早い時間に居るんだろう?}
お店のユニフォーム(マリンルック風)に着替えて出てくると、入り口付近に立って居る社長が「今日は初日だけど気張らずに頑張ってくれ!」
社長の優しさに安堵の表情を浮かべるリンダ。
それから数日後、オープンスタッフ一同が集まった歓送迎会が日間賀島の和食割烹の個室を貸し切り行われた。
そんなスタッフの集まりにも拘らず、愛車ベンツで店の前に車を乗り付けた社長の横井。
一部の社員から「何もこんな社員同士の親睦会に現れるなんて~、これじゃ~緊張して親睦会どころじゃ無いわ。働いているのと変わらないじゃない」
そんな陰口を叩く連中を他所にリンダの方はというと『ホテルパシフィック・内海』のお客さんとして顔見知りの間柄で、尚且つ優しく接してくれる社長に対して、良いイメージしかないのだ。
三ヶ月程経ったある日の事、お店の仕事にも慣れ、章と二人やっと安住の地を得たリンダは{今日は久しぶりの休日、名古屋のデパート巡りでもして来よう}
そう思い駅前に向かって歩いていた。
すると後ろから社長の車が……。
「リンダさんじゃないか?どこまで行くんだい?」
「ああ~今日はデパート巡りでもして来ようと思っていますが?」
「送るよ!乗りなさい」
「ああ~でも結構です。運動にもなりますし」
「まあ~良いから!良いから!乗りなさい!」
こうして車は走り去ったのだが………?
駅とは真逆の・・・
一体どうなってしまうのか?
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