第5話 愛媛のトラック

 愛媛までの荷物がありました。


 懇意の運送会社へお願いしてトラックを探してもらいチャーターします。

 今回は松山の10tトラックがきました。


 現場へは、「倉庫の裏、西側に出しておいて」とそのトラックの荷物の荷だしの場所を指示しておきました。


 トラックが来てドライバーさんがまずこちらの事務所に来ます。

 荷物の明細を渡して、個数を教えます。

 他の物流のみんなが忙しそうだったので、それにね、うちの倉庫に来るのは初めてのドライバーさんだったから僕は現場に行って案内しました。


「この8っこのパレットに載ってるのが全部だから…」

「フォークリフトはさ、僕が乗ってきたこれ使ってね、あと全部積んだら送状とか渡すからさっきの事務所まで来てよ」


「あいよ!」

 ドライバーさん、気持ちのいい人だね。

 いろんな人が来ますから、でもみなさんいい人です。


「トイレとかもあるし、煙草吸うところもあるからね。自動販売機もあるから訊いてね。あと、そうだ、パレットはその辺に積んで置いて。フォークもいいよ、ここに置いておいれくれればさ…」

 ドライバーさん、トラックの荷台を開けている。

 きれいに掃除されているな、プロってすごいね。


「にいさん、みかん食べるかい…?」

 よく見ると荷台の隅にみかん箱があった、もう開いているね。

「え…、食べるけれど…」


 ドライバーさん、一個二個どころか大きい手で数個持ち上げ僕に渡してきた。

「うまいよ、冷やすともっとうまいよ!」

「ありがとう! いいの、本当にいいの?」

「いいよ、いいよ! ちがうんだぜ、売っているのよりもずっとうまいよ!」

 僕はお礼を言って事務所に戻った。

 持ちきれないので、ポケットに数個いれてね。


 事務所に着くとすぐに大山さんや山口さん、吉村さんにあげた。

 僕もひとつ口にした。


「これおいしい! 甘い!」

 僕が言うと、

「ほんと、おいしいね」

 大山さんも山口さんも吉村さんも喜んでくれた。

「愛媛のトラックはみんなみかんを積んでいるって聞いたことある…」

 僕が言うと、

「実際に積んでるんだね…」

 吉村さんもつぶやいた。


 全部のトラックじゃないです。

 都市伝説なのかな…。

 うれしい都市伝説だね。


 ドライバーさんが荷物を積み終わって事務所にやってきた。

「おいしかったよ、すっごくおいしかった」

 僕は彼に送状を渡したあとに言った。

「おいしかった、ありがとう」

 大山さんもお礼を言った。

「そうだろう! 冷やすともっとうまいんだから!」

 こんなこともあります。


 ここは面白いところです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る