第10話 万年筆とインク壺

【無機物BL劇場】

(万年筆はコンバーター式のものをご想像ください)


 渇いて、漆黒の衣を脱ぐ。

 金のペン先が君の血潮を求めている。

 どんな血でも良いわけじゃない。君の血、その色。

 蒼の眠り。深い夜の静寂に染まったその色でなければ、充たされない。

 固く閉ざされた君の蓋が開かれる。

 私が君の泉にそっとペン先を沈め、さざ波すら立てまいと、静かに吸い上げる。

 ああ、君の蒼い静寂、しずもれる命だけが、私の渇きを癒やすのだ。

とろりとした輝きを宿す硝子製の君の姿。なかばまで減った君の血潮。

 私は漆黒の衣を再び纏って君に寄り添い、そばの紙に君への愛を、君の血の色で綴る。

 その血を吸い尽くす日まで、愛してあげる。

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