第11話 本箱と本

【無機物BL劇場】


 私はここにいて、たくさんの君を抱いて眠る。

 なかなか出て行けないことを寂しく思う君もいれば、読み癖が付いてちょっと撓んだ表紙を気にする君もいる。

 ある日、傷ついて控えめに補修されて帰ってくる君もいる。

 たくさんの言葉を抱えてずっしりはち切れそうな君もいれば、どんどん弟分が増えてくる君もいる。

 私はどんな君もやすらえる場所。みな、私の大切な君だ。


 新しい君がやってくる。

 出て行って、戻ってこない君もいる。

 長い年月のうちには、ある日突然、すべての君が旅立ってしまうことも。


 私は君の帰りを待っている。

 私を君の柩だという者もいるけれど、そうじゃない。

 君の束の間の眠りの時、共にありたいだけなのだ。

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