第46話 [堕ち始めた日]
「よっしゃ〜〜ッ! 全テスト終わったぜェーーッ!!」
チャイムが鳴ると同時に、隣の席で朔が叫んだ。
田辺から勝負を申し込まれてから数日、今日がテスト最終日だったのだ。
ちなみに順位はこの後すぐに張り出されるそうだ。最新の機械を使っててすぐに採点できるとかなんとか。
「やっと終わったな……。課題提出した後は総合の授業だったよな? 何するんだっけ?」
「ばっかおめっ、一大行事の〝遠足〟について色々決めるんだろうがッ!!」
「あ〜! そういえばそうだったな」
一年生の大きな行事の一つ、遠足。
確か場所は超有名な遊園地だったな。バスで移動して日帰り……って記憶があるな。
「バスの席決めと班決めだったっけ?」
「あとその班でどうやって回るかとか決めよーぜ!」
「……俺たちは同じ班前提なんだな。全然いいけど」
「ヨシッ!!」
「僕も同じ班がいいですーー!!」
「あたしもあたしもーー!!」
唯花とソフィがそう言いながら俺に近づいてきた。総合の授業が始まる前に、もう班は決まったようだ。
「は〜い、じゃあ今からみんなお楽しみの遠足について色々決めるよ〜ッ!!」
遠足のグループは四人で決定し、バスの座席は朔が隣になった。遠足のしおりは後日配られるらしく、今日の授業は終了した。
「モガミん、順位表みにいこ!」
「そうだな」
順位表は廊下に張り出されるようだ。
「あれか」
静音を除いたいつもの勉強会グループと、田辺で見に行っていた。
「おー、やっぱ静音はすごいな……」
順位表の一番上にいるのは静音で、オール100点だった。
「あ、俺もいた。2位か」
やはり、数学で凡ミスが出てしまったようだ……。
田辺のやつも探してやろうと思い探したら俺より下の4位にいた。
「バカな……バカなバカなバカな! ありえない!!」
頭を両手でガリガリと掻き、瞳孔は開いている。
「おい田辺、この勝負は俺の勝ちでいいよな?」
「いや、いいや違う! こんなのありえない! お前、カンニングしたんだろ!! 先生に言ったらすぐにわかるはずだァ!!」
「やれやれ、面倒だな……」
俺は胸ぐらを掴まれ、そのまま職員室に連れていかれそうになっていた。
「もがみん!」
「狂吾テメェ、そりゃねぇだろうが!」
「師匠に何を――」
ソフィ、唯花、朔が引き止めようとしていたが、俺は二人を『大丈夫だ』という意味を込めたジェスチャーをし、こっちに来させないようにした。
……ちなみにだが、【
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「先生! こいつがカンニングをしました!」
俺たちが職員室に着くと、田辺が早々にこんなことを口走っていた。
先生が集まったが、皆苦笑いをして信じていなさそうな顔をしていた。
「えーっと……狂吾くんはなぜ強谷くんがカンニングをしたと思ったんだい?」
「こいつが俺よりもいい点を取れるわけがない! それが証拠です!!」
先生たちは困ったような顔をしていた。
まあそうだろう。この高校は他の高校よりもレベルが格段に高い。だから、カンニングなんか見逃すわけがないんだ。
「言っちゃ悪いけど、隣の席の朔くんは強谷くんより点数低い、前の子も強谷くんより点数が低かった。つまり強谷くんの実力だよ」
「そ……そんな……そんなのありえません!!」
「まあまあ落ち着いて、負けて悔しいかもしれないけれど次があるから! 高め合って行こう、ね?」
先生たちはなんとか穏便に済ませようとしていた。そしてなんとか言い包め、この話は終わった。
「ん? 静音?」
「なっ!? し、静音ちゃん……」
後ろを振り向くと、腕を組み、アホ毛がギザギザとしている静音の姿があった。
「……ここまで阿呆だとは、思ってなかった……。これ以上、私たちに関わらないで……!」
どうやら、怒ってくれているらしい。
「う、嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!! ゔぁぁああああ!!!!」
すると、田辺は頭を抱えて発狂したと思ったら、そのまま走ってこの場を後にした。
「強也、大丈夫……?」
「ああ、大丈夫だ」
ネクタイをギュッと締め直した後、静音と一緒に教室に戻った。
「あ! 師匠大丈夫でしたか!?」
教室に戻ると、みんなが心配した様子で俺に駆け寄ってきた。
「ああ、大丈夫だ。それより、せっかくテストが終わったんだし、みんなでなんか食べに行かないか?」
「おっ、いいねぇ〜。ちなみに強谷のおごりか!?」
「バカなこと言うな朔」
「ケチ〜」
……だが、なんだか嫌な予感がするな……。
そんな不安を胸にしまい、俺たちは近くにあるファーストフード店に向かった。
###
――夜、田辺宅。
「おい! おい、いるんだろ!! 出てこい!!」
部屋は、さっきまで暴れていたからあらゆるものが散乱していた。その部屋で、俺はあの悪魔を呼んだ。
すると、部屋の中心に黒い渦が発生し、あの悪魔がそこから姿を現した。
「なんだよ……僕をそんな大声で呼び出さないでくれるかなぁ? 頭痛いんだけどぉ??」
「ふざけるなァ!! 静音ちゃんよりも頭をよくするって魔法じゃなかったのかよォォ!!」
胸ぐらを掴みながら、俺は悪魔を問い詰めた。すると、眉間にしわを寄せてこう言ってくる。
「馬鹿なのか? 君は」
「あぁ……?」
「人間誰しも、凡ミスがある。疲れている時ほど出やすいものだ。完璧な知能とか持っていない限り、ミスをする。寝不足状態の君だったし、ミスするに決まってるだろ?」
「〜〜ッ!! クソッ!! クソがァァ!!!」
喉が潰れる勢いで俺は悔しさを吐き出す。
そんなことを横目で見ている悪魔は、何かを閃いたような顔をした。
「……そんなに悔しいんだろぉ? だったらさぁ……殺しちゃう?」
「…………は?」
ニヤリと笑みを浮かべながら俺にそんな提案を投げかけてくる悪魔。
「大事な部屋の骨董品とかすら壊すぐらい、君はイラついている。そんなにイライラし続けたらいずれ何もなくなる。それぐらいだったら、さっさと元凶を殺した方が良くない?」
「いや……でも、人殺しなんか――」
「僕さぁ、前見たんだよね。ほらっ」
俺の目の前に差し出されたスマホには、静音ちゃんと最上が仲睦まじげに話している様子があった。
しかも、最上はあの静音ちゃんの家から出ていたのだ。
「は? おい……っざけんなァァッ!! 殺す!! あいつは絶対に殺してやる!!!」
「にひっ、いいねぇ……よかったよ。君はおもちゃから駒へと進級したようだ♪」
悪魔が何かをボソッとつぶやいていたが、そんなことはもうどうでもいい!
「絶対殺す! 何が何でもだ!!」
「うんうん、そうだね。じゃあ僕と契約をしてくれるかなぁ?」
「んなもんなんでもしてやるよ!!」
そして、俺は悪魔と契約をした。
――この時な正気を失っていて、現実を見ていなかった。
『人を殺す』なんて契約は、重すぎたのだ。
【追記】
ご無沙汰してます、カエデウマです!
この追記は、『朔の髪型』の変更点のために用意しました。
朔の髪型は特に設定していませんでしたが、『ヘアピンで前髪を上げている』という髪型に変更させていただきます。
今後とも何卒、よろしくお願いします!
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