第44話 [勉強会]

 その後特に何もなく授業が全て終わった。

 ちょくちょくちょっかいをかけてきていた田辺は、なぜか大人しかった。目の下にもクマができていた。


「強谷、行こうぜ!」

「ああ」


 朔と唯花はもうすでにバッグを持っており、いつでも帰れる状態だった。

 俺もすぐに今日勉強する予定の教科書などをバッグに詰め込んで一緒に教室を出た。


「強也、行こ」

「んじゃあレッツゴ〜!」


 教室の外では、静音とソフィが待っており、早速自分の家へ帰ることにした。



###



 俺がいつも乗る電車に乗り、いつもの駅で降りる。そして歩くこと数分、俺の家までたどり着いた。


「おー、これが強谷の家か〜!」

「なるほど」


 朔と静音が俺の家だからまじまじと見つめてそう言っている。普通の家だからそんな見ることないだろうに。


「とりあえず、いらっしゃい」


 みんなにはリビングのソファの場所でくつろいでもらうことにした。


「強也! ちょっと家の中探索していいか!?」

「なんでだよ……別にいいけど荒らすなよ」

「オッケェイ!!」


 朔はなぜか俺の家の探索を始めた。

 気にしたら負けなような気がしたので、俺は人数分のコップを用意して冷蔵庫に入っていた緑茶を注いだ。

 そのコップを机の上に置いた。


 各々が勉強の用意を机の上に置いた頃に朔が帰ってくる。

 全員揃ったので早速勉強会を始めることにした。机は少し大きい正四角形。俺の正面には朔、左側には唯花、右には静音とソフィがいる。


「む、むむむ……」


 数学の問題集を開いて問題を解こうとしたが、早速壁が立ちはだかってくる。


「強也、早速?」

「ああ……」


 やっぱり数学は天敵だな……。


「ここをそれぞれ二乗して……それを引いて……」

「そういうことか……助かった!」


 静音にわからないところを教えてもらい、理解するこができた。だが隣から視線が送られてきていた。


「師匠、僕だってこれぐらい解けます! 次わからないところがあったら僕に言ってください!!」


 唯花よりも静音のほうが頼り甲斐がありそうなのだが……。まあ次は唯花に聞くことにするか。


「あれ?」


 静音の隣にいたはずのソフィがいなくなっていた。


「ぼへぇ〜……」


 ……と思ったら床に寝転がっていた。


「どうしたソフィ」

「勉強飽きた……」


 何をしにここへきたんだ……? 始まってまだ二十分ぐらいしか経っていないぞ?


「モガミんに一発しばか……いや、間違えた。やっぱ脳みそ働かせるには甘いもの食べなきゃ……」

「お、それは一理あるな。よし、じゃああともう三十分ぐらい経ったらおやつ休憩としようではないか」

「マジ!? やった〜!」


 ソフィはガバッと起き上がり、早速問題を解こうとしていた。

 だが持っているシャーペンは全く動いていなかった。


「シズ……助けてぇ……」

「はぁ……ほんとに、バカ」

「バカっていうなし!!」

「だって馬鹿だもん」


 朔は黙々と勉強をしている……と思っていたら絵を描いていた。それは呪いの絵みたいなものだった。


「朔……お前何書いてるんだ……? 誰かを呪うつもりか?」

「は? 何言ってんだよ。どう見ても猫だろ!」

「猫、ねぇ……」


 猫というにはあまりにもおぞましく、禍々しい表情をしている生き物だつた。


「勉強しにきたんじゃないのか……」

「あ、そうだった」


 これは勉強会とよんでいいのか?



###



「もがみん! もう二十分ぐらい経ったと思うんだけど!?」

「ん、本当か?」


 スマホで時間を見てみるとまだ十分ぐらいしか経っていなかった。

 まあそろそろソフィが限界そうだったので、おやつ休憩にするのとにした。


 台所の一つの引き出しもとい、お菓子保管所に手を突っ込んで大量のお菓子を皿の上に乗っける。


「おやつを持ってきたぞ」

「おおお!!!」


 皿の上にビスケットやチョコなどの多種多様のおやつを乗っけ、机の上まで持ってきた。

 机に置くや否や、ソフィがバッとおやつを素早く奪い、口の中に放り込んでいた。


「美味し〜♡ やっぱ甘いものイズ正義だね!」

「お、わかってるじゃないか」

「ムシャムシャ……同士よ……」


 俺たちは握手し合った。ここに主従関係以外に、甘党同盟が生まれたようだ。


「………」

「ん? シズどしたの?難しい顔して」

「……? わからない……なんだかモヤモヤ……」


 俺もソフィに続いておやつをどんどんと口へ放り込んだ。

 頭を使った後に食べる甘味は最高だなぁと思いながら、お菓子を食べ進めた後、勉強を再開した。

 ソフィは苦渋を舐めささられたかのような顔をしていた。

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