第43話 [勉強グループ]

 ――月曜日。

 俺は頭を抑えながら教室に入った。


「よっ、強谷……って、なんか体調悪そうだが大丈夫か?」

「あ、ああ……朔。」


 自分の席に着く前に、朔が手をヒラヒラとさせて挨拶した後に心配をしてきた。


「英語とか国語、他の教科も問題ないん……だが! 数学……数学だけが俺は無理なんだッ!」

「あちゃ〜、強谷も苦手なものあるんだな」

「当たり前だろボケナス」

「急に口悪りぃ……」


 俺がぐぬぬと唸っているうちにクラスメイトたちが教室に集まり、朝のHRホームルームが始まる。

 唯花はコツコツ勉強していると言っていたし、静音は勉強なんかチョチョイのチョイだろうな。


(どうやって乗り越えようか……)


 先生の話など、全く話に入ってこずにHRは終わった。

 唯花とソフィがまず俺の席にやってきた後、すぐに静音が俺の教室にやってきた。


「モガミんなんか体調悪そう? どしたん?」

「抜き打ちテストがまずいんだ……」

「テストは食べれないよぉ?」

「違う、そうじゃない」


 ソフィ、そういえば静音に馬鹿呼ばわりされてたな……。あれは本当なのだろうか?


「ソフィはテスト大丈夫なのか?」

「んふふ〜♪」

「そ、その余裕は……ッ!」

「今回なら点数二桁いける気がする!!」


 ニッと八重歯を見せながら笑い、ピースサインでそう言ってきた。


「馬鹿だったー……」

「失礼な!」


 そんな会話をしている中、朔が何かを閃いたかのように指パッチンをする。


「じゃあさ! 今日から放課後に勉強会しねぇか!?」

「おー、いいじゃん。でもお前勉強できんのか?」

「ふっ……強谷、俺を誰だと思ってるんだ? スポーツ推薦で入学して勉強は並未満の者だぜェ?」

「だめじゃないですか」


 ドヤ顔をしながら微・馬鹿宣言をしてくる朔にツッコミを入れる唯花。


「私に任せて……。強谷の高得点、私が導く……!」


 アホ毛をピョコピョコとさせながらそう言う静音。

 静音は救世主だったのか……! どうやら俺が数学を諦めるのはまだ早いらしいな。


「お願いさせてもらっていいか?」

「まかせろり」

「あたしもあたしも〜〜ッ!!」

「ソフィアは……頭が爆発する可能性があるからやめたほうがいい……」

「なんでよ!?」


 頰に指をツンツンするソフィだったが、静音はそこまで嫌がっていない様子だった。腐れ縁なのかと思っていたが、友達だったようだ。


「そんなことはとりあえずおいといて、場所はどこにするんだ?」

「そんなことにしないで、モガミんっ!!」


 ソフィのことはとりあえずおいておき、話を進めることにした。


「強谷の家でいいんじゃね?」

「強谷の家でおけ」

「師匠の家で」

「モガミんズハウスで」


 ……なんで俺の家一択なんだよお前ら……。

 朔、静音、唯花、ソフィの順でそう言われ、内心呆れながら理由を聞くことにした。


「なんとなく強谷の家かな〜っとね」

「強谷の家……前から行ってみたかった」

「師匠の家が一番落ち着く気がします!」

「ゆいっちの意見と同じ〜〜」


 まあ困ることがないから別にいいか。


「わかった、じゃあ俺の家だな」


 俺が決定すると、みんな喜び始めた。

 別に俺の家には何もないぞ……?


「あ、なんか誰かに呼ばれたからちょっと行くな!」

「行ってら」


 朔がガタッと席を外して廊下に向かった。

 すると、ソフィが眉間にしわを寄せて『ん?』と疑問を抱いた声を漏らしていた。


「どうしたんだ、ソフィ」

「いや……今サッくん『誰かに呼ばれた』って言ってたけど、声してた?」

「……そういえばしてなかったな。手を振ってたとかじゃないか? 俺は見てなかったが」

「でもさ……さっくんって窓側の方向いてたじゃん? なんで呼ばれたってわかったんだろ……」


 確かにそうだな。俺は窓側の席で、こちらを向いて話していた。

 じゃあなんで……。


「窓に反射してたとか……?」

「「それだ」」


 俺とソフィが声を揃えて納得した。

 朔は目がいいんだろうなぁ。


 そう思いながら、俺たちは授業が始まる少し前まで雑談を続けた。

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