第41話 [武器(?)]
「もうこんな時間か……」
静音に秘密を教えてもらった後も色々と機械の説明を長々と受けていたら、時刻は7時30分となっていたので今日は帰ることにした。
「強谷、明日も来る?」
「いや、明日はやめておこうかな」
唯花に稽古をつける約束もしていることだしな。
「また来てもいいか?」
「もちのろん。じゃ、また月曜日」
「ああ、じゃあな」
帰り道では、冷蔵庫になんの食材があったかを思い出し、なんの料理を作ろうと考えながら帰った。
###
――後日。
唯花から『昼過ぎの1時ぐらいに家いきますね』と連絡が来たので、ゆっくりと掃除をすることにした。
たまには魔法に頼らずに掃除機とかでするのもまた一興と思ったからだ。
やり出したら止まらなくなって、唯花が来る頃には家中がピカピカになってしまう始末だった。
――ピーンポーン。
「ん、来たか」
インターホンの音が聞こえたので、俺は玄関に向かった。ドアを開けると、竹刀袋を肩にかけ、片手に紙袋を持っている唯花の姿があった。
「こんにちは、師匠! これおじいちゃんから持ってけって言われたのでどうぞ」
その手に持っている紙袋を俺に渡される。
「ん? って、こ、これは! あの有名な和菓子店〝
「そうみたいですね。中はどら焼きらしいです」
導月庵と言ったら、開店直後で商品が品切れになるぐらい有名な和菓子店だぞ……?
唯花のおじいさん、『ありがとう』……それしか言う言葉が見つからない……。
「あとで一緒に食べよう。感謝感激」
よしよしと唯花の頭を撫で回した。
「師匠はほんとに甘いものに目がないですねぇ」
「SNSで情報を馬鹿みたいに取り入れてるからな。まさかこんなところでお目にかかれるとは思わなかった」
お菓子の件はとりあえず一区切りつけ、家に入らせる。
「でも師匠、ここでどうやって稽古をするんですか?」
「まあ見てろ。【
俺が虚空に手をかざすと、そこに縦に伸びた穴のようなものが出現する。
これも文字通りの魔法で、何かを収納したりできる魔法だ。本来は物だけをしまう魔法だが、改良して自分も入れるようにした。
「こん中で稽古をする。ついて来い」
「あ、はい!」
俺たちはその穴に入る。その中の空間は真っ白である。
「稽古をつける前に、唯花に渡しておくものがある」
「なんですか?」
「弟子になった暁みたいな感じで、お前に俺の武器をあげようと思う」
「ええぇぇ!? いいんですか!? やった〜〜!!」
花が咲いたような笑みを浮かべ、万歳三唱して喜んでいた。
唯花の武器をあげるついでに、自分がこれから使ってゆく武器も決めておくか。
そう思いながらこの空間を歩き、武器が大量に置かれている場所にたどり着いた。
普通の剣や曲がったもの、弓にハンマーなどの様々なものがある。唯花に会う武器を探すために俺はそこを漁り始めた。
「お、いいのがあった」
手に取ったのは一本の刀だ。
確かこれは、前世で宝刀だとか言われてた刀だったかな。
「ほれっ」
「わわっ!!」
その刀を唯花にぽいっと投げて渡した。
「刀を抜いてみていいぞ」
「は、はい」
スラリと鞘から刀を抜く。刀身は金色のボディに、桃色で桜柄の模様が入っている刀だった。
「こ、こんなに良さそうなものを僕がもらっていいんですか……?」
「どうせ使わない予定だったし、お前に使ってもらった方がその刀も嬉しいだろ。多少雑に使っても再生するから安心しろよ」
「それ普通の刀じゃないですよね!? ……というか、これ持ち歩くわけにはいかないですよね?」
ごく当たり前の質問をしてくる唯花。
「当たり前だろ」
「じゃあこらもらっても意味がないんじゃ……」
「その刀の契約者は俺だったが、それをお前に移した。それによって、刀を自由にしまったりすることができるぞ? 引っ込めーって感じで念じてみろ」
「は、はい。ひ、引っ込め〜!」
すると、手に持っていた刀はその場から姿を消した。
「な、なくなりました!」
「なくなったんじゃなくて、お前の中にしまわれたんだ。出そうと思えばまた出せるぞ」
「むむむぅ〜っ! は、ほんとだ!」
「これで安心だな!」
バチーンとウィンクをしながら親指を立てる。
……さてと、唯花の武器は決まったな。あとは俺の武器だが……そうだな、アレを使わせてもらうか。
「師匠、あれはなんですか?」
唯花が一つの箱を指差す。あの箱こそが、俺が使う武器が入っているのだ。
「こん中には、俺の親友が使っていた伝説の武器が入っている。俺の武器はそれだ」
その箱を手に取り、パカっと開ける。
その武器とは――
「……これはなんですか、師匠」
「だから武器だって」
「いやいや! どこが伝説の武器ですか! これ鉄パイプじゃないですかっ!!」
俺が箱から取り出したのは、片方が90度曲がっている棒で、中が空洞になっているものだ。
「……まあ見た目はそうだ。けど一応これ魔剣だから」
「魔剣!? この鉄パイプがですか……。というか、その前世の親友さんは地球人だったんですか?」
「ああ、あいつは異世界転生したやつで、名前は――
前世ではソラ・オーガストって名乗っていて、あっちでの俺の苗字はこいつからもらったものだ。
「さて、この武器も試してたいところだし、早速稽古と行くか」
くるくると鉄パイプを回し、曲がっていない方を掴んで唯花の方に向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます