第40話 [静音のとんでもない秘密]
「よーこそ、私の部屋に」
静音に連れられて入ったのは静音の部屋だ。中は大きなベッドに、壁一面にある本棚。大きなクローゼットと、全体的に色々とデカかった。
「ここで強谷に問題。秘密部屋に繋がるのは、どこからだと思う?」
「普通に考えて本棚だろ」
「……理由は?」
「静音は俺の魔法すら無効化する〝完全記憶能力〟を持ってるんだし、一度読んだ本なんか一言一句全て覚えてるから本棚は意味ないかなって」
「……つまんない……」
本棚にある一冊の本に指を押し当てる。するとタッチパネルが浮かび上がり、それにパスワードのようなものを入力していた。
入力し終えると、本棚はゴゴゴゴという音を立ててスライドし、地下に繋がる階段がそこに出現した。
「これって静音の両親には言ってるのか?」
階段を下りながら静音に尋ねる。
「一応言ってるけど、内容は言ってない。これは極秘だから、家族でもダメ」
「……それ、俺に教えていいのか?」
「強谷たちには、協力者になってもらう」
「成る程……」
階段を下りた先には、重厚そうな扉が門番のように佇んでいた。それの横についている指紋認証パネルに静音がタッチすると、その扉は軽々と開いた。
「よーこそ、私の秘密部屋に」
「えぇぇ……」
開いた口が戻らなくなるほど、俺は驚愕している。
眼前に広がるのは、宙に浮いたり煙を吹き出したりしている多種多様な機械やロボットがある巨大な地下室だった。
「こ、これって……」
「私の趣味になったもの。完全記憶能力を使って一からプログラミングしたり、新しい装置作ってる。あ、これ反重力装置使ったやつね」
「そういうのってSFものの映画でしか聞いたことないぞ……」
「それでこれは――」
それからというもの、この地下室にある様々な物の説明をこれでとかというほど受けた。
誰だ、『寡黙令嬢』って異名をつけたやつは。これじゃあ『饒舌令嬢』だぞ。
「なんか危なさそうな機械とかあるけど、これ犯罪とかにならないのか?」
「ん、これは日本……というか、国際的に許可を得てる。けど知ってる人は指で数える程度。犯罪者にはならないよ」
「なら安心だな」
にしてもすごいな。機械やロボットはもちろんだが、他にも生物を飼育している部屋とかもあった。
どんだけでかい地下室なんだ。
「……そういえば、最初の目的忘れてた。強谷は『危険なことに巻き込みたくない』って言ってたよね?」
「ああ、そうだな。怪我させちゃうかもとか思ってたから」
「私を見縊っちゃ、メ」
可愛らしくそう言うと、近くに座っている人型ロボットに、パソコンから伸びるケーブルを接続してキーボードをすごいスピードで叩いていた。
30秒もかからないうちにそれは終わった。
「強谷、構えといて」
「え?」
すると、そのロボットの目がギラリと輝き、両足でしっかりと立ち上がった。
『ターゲット、最上強谷ニ設定。戦闘モードオン』
「ッ!?」
ロボットの手のひらと足の裏から炎がジェット噴射で飛び出して、俺の方へ一直線に飛んでくる。
そして、足裏からの噴射を利用して回し蹴りをしてきた。俺は姿勢を低くして避ける。
反撃しようと足に力を込めるが、その足にワイヤーのようなものが引っ掛けられ、そのまま攻撃されそうになる。
(やばっ……! 【ウィンドカッター】、【
ワイヤーを魔法で断ち切り、その場から距離を取る。
「終了」
静音がそう言いながら手に持っているボタンを押すと、ロボットの行動は停止した。
「どお? 結構強いでしょ」
「ああ……なんか先のことを読まれたような気がした……」
「さっき、強谷の動きの癖とかを予めロボットに覚えさせて、そこを突けるようにプログラミングしたの」
「すごいな……」
それも完全記憶能力のおかげか。俺の動きを全て記憶して、癖を見つけ出したってわけだな。
末恐ろしい……。
「これなら、私も戦えるよ」
「……でも、こんなロボット持ち歩くつもりなのか?」
「このロボットは使わない。私に纏って使う。それにコンパクトになるし、透明になれるし、宙に浮けるからオケ」
【
ま、静音も無力じゃないってわかったし、別に止めなくても大丈夫か。何かあったら、俺が全力で守ればいい。
「わかった、もう記憶は消さないよ。……けどそういえば、最初に会った時はあの不良たちには反撃しようとしなかったのか?」
俺が深夜徘徊してた日、静音と接点を持った日だ。その日はあの三人衆に囲まれていたが、その時はどうしたのだろうかと思い、そう質問した。
「あの時は無音ドローンが上空で待機してた」
「ちゃんと反撃しようとしてたんだな……」
とんでもない俺の秘密バレてしまったと思ったが、静音も大概にとんでもない秘密を持っていたようだ。
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