第30話 [師弟関係?]
俺も桜路の前に座った。
「最上さん、最上さんが持ってるその何かってなんなんですか?」
「……誰にも言わないと約束できるか」
「もちろんですっ!」
翡翠色の目をキラキラと輝かせてずいっと顔を寄せてくる桜路。
記憶を消す魔法をかけてもいいが、こいつなら信用できそうだから話すか。誰かに話したとしても、全部消せばいいだけだ(ゴリ押し)。
「実はな、使っていたのは魔法なんだ」
「ま、魔法……! すごいですね!! でもなんで使えるんですか? 修行とかですか?」
「いんや。俺はファンタジー世界から転生した賢者なんだ。つい最近記憶が戻ったんだよ」
……話してて思ったが、こんなの信じるのか?
「ほへぇー!」
あ、これ信じてるわ。
「……自分出言うのもアレだけど、疑わないのか?」
「もちろん疑いません!」
「そ、そうか……」
いい子すぎて悪い奴らに騙されそうだな。
まあでも、正義感が強いっぽいから大丈夫……かな?
「あ、そうだ桜路。戦った理由ってなんなんだ? 俺が勝ったら話してくれるって言ってたが」
「あ、そうでした! 僕を弟子にしてください! 師匠!!」
「…………え?」
で、弟子だと……?
「でも、桜路がここまで強くなったのは師匠がいたからなんだろ? だったらその人にもっと教えてもらったらいいんじゃ?」
「僕に剣を教えてくれたのはおじいちゃんなんですけど……。僕、おじいちゃんに勝っちゃいましてね……」
「ああ……そういうことか」
更なる強みを求めて師を求めているのか。俺と似ているな……。
だが――
「諦めてくれ」
「そんなぁっ!!」
……俺は前世で最強と謳われていた。けれどまだ弱い。遥か昔のトラウマがまだ、心の中に巣食って住み着いてるんだ。
師匠役はもう……懲り懲りだ。
「そうですか……。じゃあ仕方ないですね」
「お、諦めがいいやつは好印象――」
「じゃあ師匠が僕のことを弟子にしたくなるように色々とお世話をします!!」
「んんんん!!」
諦めたのかと思ったが、全然違ったようだ。
「僕は絶対に諦めません!」
「俺はお前を弟子にしないぞ」
スクッと立ち上がり、歩みを進める。桜路も俺の背中を追い始める。
「お伴します! 師匠!!」
「誰が師匠だッ!!」
###
空き教室で制服に着替えた後、自分の教室に戻るや否や、視線の集中砲火を浴びることになった。
「へいへい強谷〜、やっぱり俺の未来予知は的中したみたいだなぁ〜〜?」
「……ぐぅ」
「ぐぅの音は出たんだなぁ♪」
朔のくせに生意気だ。
そんなことを思いながら、自分の席に座り、横で控えている桜路を横目に弁当を食べ進める。
「ちょいちょい、モガミ〜〜ん? 桜っちと何があったの〜〜?」
「ん、ソフィか」
ソフィが俺に近づきがてらそう話しかけてくる。
桜路をチラチラ見ていて、俺の秘密を知られていないか警戒しているのかもしれない。
『あー、あー、ソフィ聞こえるか?』
「ふぇ? 聞こえ――」
『これは【念話】みたいなものだ。心の中で会話してくれ』
魔法に【念話】というものがあるが、それではない。ソフィをテイムしたことによって〝繋がり〟が築かれ、スキルなしでも会話ができるのだ。
『こ、こお?』
『そうだ。ソフィは俺の秘密を桜路に知られていないか気にしてるのか?』
『う、うん』
『安心しろ。バレた』
「はぁああ!?!?」
ソフィが叫び出した。
『ソフィ、シィーー!!!』
『はっ! ご、ごめん……』
『バレたというかバラした。コイツは信頼できると思ったからだから話したんだ。そういうことでよろしく頼む』
『あ、うん、かしこまっ!!』
とりあえずひと段落ついたな……。
「? おーい、強谷たち急に喋らなくなったけど、どしたん?」
「なんでもない」
「大丈夫ですか? 師匠」
「「「「「師匠!?!?」」」」」
桜路が俺のことを師匠呼びすると、クラス中が一丸となって驚愕していた。
「まさかアイドルまで堕ちたのか……?」
「俺たちの癒しがァーッ!!」
「いや、だがこれはアリなのでは……?」
「私は一向に構わんッ!!」
本当に、このクラスは賑やかだなァー(現実逃避)。
「……また、増えた……」
俺が頭を悩ませていると、横から冷たい声が聞こえてきた。
「静音……」
アホ毛をギザギザにした静音が立っていた。
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